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第10話 ワルツとドリルとチョココルネ?
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「ちゅいたわよ! はやくえちゅこーとちてくだちゃる?」
会場に到着するとヘレナちゃんが早く降りろと急かしてくる。
だが……窓越しに外を見渡せば、魔法か何かでライトアップされた石畳の大階段には、既に大勢の参加者がいる。
この中に悪役令嬢(6歳児)を連れて出て行けば……おもっくそ目立ってしまう。
躊躇う俺の気持ちは誰にも届かないのか、ヘレナちゃんが目で早く出ろと訴えかけてくる。
その眼……怖いからやめて欲しい。
「なにをちてるのよ! れでぃーをまたちぇるき?」
わ、わかってますよ!
し、仕方ないな。こうなれば焼けクソだ。
レベッカがドアを開けると同時に降り立った俺は膝を突き、おとぎ話の中に登場する王子様の如く、手を差し出した。
「おい、見ろよ。帝国の第三王子だ!」
「本当だわ! 一体パートナーの女性はどのような御方なのかしら?」
「きっと名のある帝国の公爵令嬢じゃないかしら」
「帝国の王子だからって美女を選り取り見取りかよ」
「やってらんねぇよな!」
「でも、帝国は好みませんが……すべてのパーツを完璧に配置したお顔は見惚れてしまいますわ」
「やはり、エルフとのクォーターと言うのは事実のようですわね」
「あぁ、帝国でなければ……一曲お相手をお願いしたいところですわ」
つ、つらい。
周囲の期待の眼差しがチクチクと背中に後頭部に突き刺さる。
シャーネー・アブナイゾ少佐、これがあなたの言うプレッシャーと言う奴なのでしょうか?
俺はいつからニュータイプになってしまったのでしょう。
「ちっかりえちゅこーとできるじゃないの!」
「そ、そうでしょ?」
俺の手を取り、颯爽と馬車から現れた6歳児のチョココルネ令嬢を目にした途端、この場が凍りついたように無音に包まれる。
はは……あはは、俺は入学すると同時に時を止める魔法を習得してしまったようだ。
まったく持って嬉しくない。
立ち上がり、ヘレナ嬢の手を取りながら階段を上る。
その間も、周囲は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をこちらに向けてくる。
わかってる、わかってますとも。
皆まで言うな! その顔が言いたいことなどわかっている!
俺だってなんでこんなことになっているのか聞きたいくらいなのだ。
だけど仕方ないだろ。
マーカスのバカが……まさか妹を、幼女を舞踏会のお相手にと紹介するなんて誰に予測ができようかっ!
俺は予知能力者でもエスパーでもねぇんだよ!
できることならルンルン気分で鼻唄を口ずさみ、浮かれていた俺をぶん殴ってやりたいくらいだ。
「まぁ、わたくちにふちゃわちいステキなかいじょうでしゅわ! おーほっほっほっ!」
や、やめてよっ!
そんなに高飛車に高笑いをしたら……ほらぁぁあああああっ!?
皆こちらに大注目じゃないかっ!
「はは……あはは……」
痛い……視線が槍のように体躯を突き抜ける。
ああぁ、め、目眩が……。
足元がフラついてしまうじゃないか。
会場入りした途端に注目の的に早変わりだ。
お願いだからそんな目で俺を見ないで!
せめて笑って下さい。その方がまだマシだよ。
「みなちゃんわたくちのうちゅくちちゃにみほれているようでしゅわ! あなたもしゃじょおはながたいかでしょ! おーほっほっほっ!」
だから、その変な笑い方やめてよヘレナちゃんッ!
びっくりするくらい響くんだよ! なんでヘレナちゃんが笑い声を響かせるとエコーが掛かるんだよ!
そういう仕様なの?
わざとやってんじゃないだろうな?
クソッ、マーカスのバカはどこにいるんだ!
見つけ出してヘレナちゃんを突っ返してやる。
会場内を見渡して見るがマーカスがどこにも見当たらない。
クソッ、隠れたなあの野郎!
「あら、随分とお可愛らしいパートナーですわね。あなたの御婚約者かしら? ふんっ」
れ、レイラ!?
レイラがスカしたように鼻で嘲笑いながら登場したかと思ったら、早速嫌味を言ってきやがった!
くっそぉぉおおおおおおおおおおおっ!!
悔しい悔しい、わざと皆に聞こえるように大きな声で言ったな!
レイラの小バカにしたような発言を受けて、注目していた連中が必死に笑いを堪えている。
「ぷっ……」
おいそこっ! 笑いが漏れてしまっているぞ!
どいつもこいつもにやにやしやがって、扇子で顔を隠して笑ってるのはバレバレだからな!
っておい、ヘレナちゃんがレイラの前に立って腰に手を当てている。
まさかのドリル対チョココルネという摩訶不思議な構図が誕生してしまった。
「あら、何か私に御用かしら?」
「あなたわたくちにちっとちてらっちゃるのね?」
「は? どど、どうして私があなたに嫉妬するのかしら?」
「みたところ、あなたはパーチョナーをつれてらっちゃらないわ! ちょれに、さきほどからわたくちのパーチョナーをめでおっていらちたのちってるのよ!」
「ななな、何をバカなことを言っておりますの! わわ、私がいつ、ジェノス王子を目で追っていたというのよ!」
ヘレナちゃんがとんでもない爆弾を投下しやがった……。
おいおい、レイラの顔がどんどん赤くなってるぞ! 物凄い怒らせてしまったんじゃないのか!? もうやめてぇ!
「あらあら、ちょんなにあしぇらなくてもよくてよ。おかわいいでしゅわ」
「なな、何なのよこのチビッ子はっ! それに、お相手を連れていないのは、私に相応しい殿方が居ないまでのこと。お子様のあなたにもわかりやすく言えば……私は高嶺の華ということですのよ。オーホッホッホッ!」
「なじゅほど、わたくちもまっちゃくどうようでちてよ。ちかち、このおかたがどうちてもというものでちゅから、おあいてちているだけのこと! わたくちはちゃちょわれただけよ。ちゃちょわれなかったあなたとはちがうの! おーほっほっほっ!」
す、すごい……。
さすが6歳児でも悪役令嬢! あのレイラと張り合っている。
この子が伯爵家とか公爵家の人間じゃなくて本当に良かった。
もしそうだったら……ヘレナちゃんと同級生になる子が不憫過ぎる!
って……ヘレナちゃんがレイラの機嫌を損ねてくれたお陰で、なぜか俺が凄まじい顔で睨まれているのだが……。勘弁してもらいたい。
「あら、このちょくはワルちゅだわ! わたくちワルちゅはちょくいでちてよ!」
「あっ、ちょっと!」
ヘレナちゃんに手を引っ張られたお陰で、般若像のようなレイラの元からエスケープに成功したが、途中で女性と肩がぶつかってしまった。
「あっ、ごめんなさい!」
ぶつかってしまった女性に声をかけようとしたのだが、ヘレナちゃんが強引に引っ張るものだから、ちゃんと謝罪することができなかった。
ふぅー……まぁ何とか助かった。
っておい! ここはダンスホールのド真ん中じゃないかっ!?
なんてところにエスコートしてくれてんだよヘレナちゃんっ!
注目度増し増しじゃないか……。
クソッ、戻るに戻れない。
「ちゃ、おどりまちてよ!」
ホールには揺ったりと楽団の奏でるワルツが流れる。
皆それぞれがパートナーと素敵に踊る中、俺はというと。
いち、に、さん、いち、に、さん。
背筋を伸ばすように手を高く上げてクルリンパ。もひとつおまけにクルリンパと……。
って、何やってんの俺っ! 失笑じゃねぇかよ!
ああ、穴があったら入りたい第二段だよ。
何で一日に二度もこんな目に遇わなくちゃいけないんだよ。
一曲で勘弁して下さいと頭を下げ、何とか隅っこの椅子で一息つけた。
疲れ果てて見上げた天井には、シャンデリアの眩い光が催眠術をかけるようにぐるぐる回っている。
もう精神的に限界だよ。
誰か代わってくれないかな。
人脈を築くどころではなかった。
パーティーなんてクソ食らえだ、まったく。
会場に到着するとヘレナちゃんが早く降りろと急かしてくる。
だが……窓越しに外を見渡せば、魔法か何かでライトアップされた石畳の大階段には、既に大勢の参加者がいる。
この中に悪役令嬢(6歳児)を連れて出て行けば……おもっくそ目立ってしまう。
躊躇う俺の気持ちは誰にも届かないのか、ヘレナちゃんが目で早く出ろと訴えかけてくる。
その眼……怖いからやめて欲しい。
「なにをちてるのよ! れでぃーをまたちぇるき?」
わ、わかってますよ!
し、仕方ないな。こうなれば焼けクソだ。
レベッカがドアを開けると同時に降り立った俺は膝を突き、おとぎ話の中に登場する王子様の如く、手を差し出した。
「おい、見ろよ。帝国の第三王子だ!」
「本当だわ! 一体パートナーの女性はどのような御方なのかしら?」
「きっと名のある帝国の公爵令嬢じゃないかしら」
「帝国の王子だからって美女を選り取り見取りかよ」
「やってらんねぇよな!」
「でも、帝国は好みませんが……すべてのパーツを完璧に配置したお顔は見惚れてしまいますわ」
「やはり、エルフとのクォーターと言うのは事実のようですわね」
「あぁ、帝国でなければ……一曲お相手をお願いしたいところですわ」
つ、つらい。
周囲の期待の眼差しがチクチクと背中に後頭部に突き刺さる。
シャーネー・アブナイゾ少佐、これがあなたの言うプレッシャーと言う奴なのでしょうか?
俺はいつからニュータイプになってしまったのでしょう。
「ちっかりえちゅこーとできるじゃないの!」
「そ、そうでしょ?」
俺の手を取り、颯爽と馬車から現れた6歳児のチョココルネ令嬢を目にした途端、この場が凍りついたように無音に包まれる。
はは……あはは、俺は入学すると同時に時を止める魔法を習得してしまったようだ。
まったく持って嬉しくない。
立ち上がり、ヘレナ嬢の手を取りながら階段を上る。
その間も、周囲は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をこちらに向けてくる。
わかってる、わかってますとも。
皆まで言うな! その顔が言いたいことなどわかっている!
俺だってなんでこんなことになっているのか聞きたいくらいなのだ。
だけど仕方ないだろ。
マーカスのバカが……まさか妹を、幼女を舞踏会のお相手にと紹介するなんて誰に予測ができようかっ!
俺は予知能力者でもエスパーでもねぇんだよ!
できることならルンルン気分で鼻唄を口ずさみ、浮かれていた俺をぶん殴ってやりたいくらいだ。
「まぁ、わたくちにふちゃわちいステキなかいじょうでしゅわ! おーほっほっほっ!」
や、やめてよっ!
そんなに高飛車に高笑いをしたら……ほらぁぁあああああっ!?
皆こちらに大注目じゃないかっ!
「はは……あはは……」
痛い……視線が槍のように体躯を突き抜ける。
ああぁ、め、目眩が……。
足元がフラついてしまうじゃないか。
会場入りした途端に注目の的に早変わりだ。
お願いだからそんな目で俺を見ないで!
せめて笑って下さい。その方がまだマシだよ。
「みなちゃんわたくちのうちゅくちちゃにみほれているようでしゅわ! あなたもしゃじょおはながたいかでしょ! おーほっほっほっ!」
だから、その変な笑い方やめてよヘレナちゃんッ!
びっくりするくらい響くんだよ! なんでヘレナちゃんが笑い声を響かせるとエコーが掛かるんだよ!
そういう仕様なの?
わざとやってんじゃないだろうな?
クソッ、マーカスのバカはどこにいるんだ!
見つけ出してヘレナちゃんを突っ返してやる。
会場内を見渡して見るがマーカスがどこにも見当たらない。
クソッ、隠れたなあの野郎!
「あら、随分とお可愛らしいパートナーですわね。あなたの御婚約者かしら? ふんっ」
れ、レイラ!?
レイラがスカしたように鼻で嘲笑いながら登場したかと思ったら、早速嫌味を言ってきやがった!
くっそぉぉおおおおおおおおおおおっ!!
悔しい悔しい、わざと皆に聞こえるように大きな声で言ったな!
レイラの小バカにしたような発言を受けて、注目していた連中が必死に笑いを堪えている。
「ぷっ……」
おいそこっ! 笑いが漏れてしまっているぞ!
どいつもこいつもにやにやしやがって、扇子で顔を隠して笑ってるのはバレバレだからな!
っておい、ヘレナちゃんがレイラの前に立って腰に手を当てている。
まさかのドリル対チョココルネという摩訶不思議な構図が誕生してしまった。
「あら、何か私に御用かしら?」
「あなたわたくちにちっとちてらっちゃるのね?」
「は? どど、どうして私があなたに嫉妬するのかしら?」
「みたところ、あなたはパーチョナーをつれてらっちゃらないわ! ちょれに、さきほどからわたくちのパーチョナーをめでおっていらちたのちってるのよ!」
「ななな、何をバカなことを言っておりますの! わわ、私がいつ、ジェノス王子を目で追っていたというのよ!」
ヘレナちゃんがとんでもない爆弾を投下しやがった……。
おいおい、レイラの顔がどんどん赤くなってるぞ! 物凄い怒らせてしまったんじゃないのか!? もうやめてぇ!
「あらあら、ちょんなにあしぇらなくてもよくてよ。おかわいいでしゅわ」
「なな、何なのよこのチビッ子はっ! それに、お相手を連れていないのは、私に相応しい殿方が居ないまでのこと。お子様のあなたにもわかりやすく言えば……私は高嶺の華ということですのよ。オーホッホッホッ!」
「なじゅほど、わたくちもまっちゃくどうようでちてよ。ちかち、このおかたがどうちてもというものでちゅから、おあいてちているだけのこと! わたくちはちゃちょわれただけよ。ちゃちょわれなかったあなたとはちがうの! おーほっほっほっ!」
す、すごい……。
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この子が伯爵家とか公爵家の人間じゃなくて本当に良かった。
もしそうだったら……ヘレナちゃんと同級生になる子が不憫過ぎる!
って……ヘレナちゃんがレイラの機嫌を損ねてくれたお陰で、なぜか俺が凄まじい顔で睨まれているのだが……。勘弁してもらいたい。
「あら、このちょくはワルちゅだわ! わたくちワルちゅはちょくいでちてよ!」
「あっ、ちょっと!」
ヘレナちゃんに手を引っ張られたお陰で、般若像のようなレイラの元からエスケープに成功したが、途中で女性と肩がぶつかってしまった。
「あっ、ごめんなさい!」
ぶつかってしまった女性に声をかけようとしたのだが、ヘレナちゃんが強引に引っ張るものだから、ちゃんと謝罪することができなかった。
ふぅー……まぁ何とか助かった。
っておい! ここはダンスホールのド真ん中じゃないかっ!?
なんてところにエスコートしてくれてんだよヘレナちゃんっ!
注目度増し増しじゃないか……。
クソッ、戻るに戻れない。
「ちゃ、おどりまちてよ!」
ホールには揺ったりと楽団の奏でるワルツが流れる。
皆それぞれがパートナーと素敵に踊る中、俺はというと。
いち、に、さん、いち、に、さん。
背筋を伸ばすように手を高く上げてクルリンパ。もひとつおまけにクルリンパと……。
って、何やってんの俺っ! 失笑じゃねぇかよ!
ああ、穴があったら入りたい第二段だよ。
何で一日に二度もこんな目に遇わなくちゃいけないんだよ。
一曲で勘弁して下さいと頭を下げ、何とか隅っこの椅子で一息つけた。
疲れ果てて見上げた天井には、シャンデリアの眩い光が催眠術をかけるようにぐるぐる回っている。
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