君だけが知る、僕の「静寂」

苦笑いキング☆彡

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1章 「水は愛のよう 見えても触れられぬ」

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空から降り注ぐ陽の光で目を覚ます。徐々に目が覚醒してきて、現実という重苦しい感覚がじっとりと体にまとわりつく。不快感を覚え、ベットから降りた。
外はセミの鳴き声がけたたましく轟いている。ベットにはツツジの影が落ちている。その情報のすべてが僕に「夏」ということを教えてくる。
夏が嫌いだ。暑いのはもちろんのことだが、「青春の代表」みたいな顔をしているのが非常に腹だたしい。こっちはいじめられて青春なんてないんだぞ。しばき回すぞカスが。
一人で勝手に脳内で盛り上がり、部屋の中心に差し掛かった頃、不意に部屋のドアがコンコン、と叩かれる音がした。その瞬間背筋が伸び、背中から嫌な汗が吹き出す。
間違いない。扉の先にいるのは間違いなく「あの人」だ。

「悠斗、いるんだろう。返事ぐらいしたらどうだ。」
上質なシルク生地のようなきめ細かい、冷たい声が響く。僕は緊張して頭が働かなくなり、ただ口をパクパクさせることしかできなかった。
「…もういい。開けるぞ」
扉の先にいたのは僕の兄、海風木霊みかぜこだまだった。不機嫌そうな顔をして、ぶすっと立っている。僕は更に緊張してしまい、足が震え、尻もちをついてしまった。
「あ、あの…お、おはよ……」
情けない声しか出せない自分の喉を恨みつつ、相手の出方を伺った。目には涙さえ浮かんできた。お兄ちゃんはため息をつきながら頭を掻いた。
「悠斗、俺はお前をビビらせに来たんじゃない。それはわかるな?」
お兄ちゃんが僕に呆れていることだけがわかり、情けなくなり、更に涙が溢れてくる。口からは震えた吐息しか出ない。代わりに、頭を激しく上下にふった。


…本当、嫌になる。この声も、性格も、自分自身も。
僕は昔から「話す」という行為がとにかく苦手だった。理由は至ってありきたりなもので、僕はずっと、たまに自分が意図していないことを話してしまう癖があった。それは心の中で思ってることがほとんどで、大体好きな人のことつぶやいていることが多い。それを人にバカにされたことがあり、その時、自分がいかに「変」かを思い知らされた。それっきり話すことができなくなってしまった。
「…黙ってるだけじゃなにも伝わらないぞ」
お兄ちゃんの声が更に冷たくなり、僕は目を伏せる。目を落とした先にはツツジの影が写っている。僕は自分の腕に爪を立て、必死に涙を止めようとした。

「………わかった。もういい。」
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