バベル 頂上を目指す者たち

大きな戦争があった。

それはそれは大きな戦争で、地上は巨大な火によって洗い流されてしまい、人間が住む環境ではなくなった。

恐怖に怯える人類は地下へと逃げた。

地下では巨大なシェルターが建造されていて、ある程度の自給自足が可能だった。人類はどうにかそこで文明を繋ぐことに成功した。

それは今からたった500年前の話。

たくさんの技術は後退してしまったが、人類はたくましく生きていた。

逃げ延びた最初の人々が息絶え、地上の大きな戦争が学校で習う歴史の一つとして埋もれていった頃、それは出現した。

巨大な塔だった。地下における「天井」より高くその塔は存在している。

『バベル』と呼ばれ、後に地下社会において必要不可欠な存在となる塔は突然現れた。

──あれは神さまがつくったものだ。

皮肉にも、その塔は神が自ら壊した塔と同じ名前をつけられた。

──頂上にはきっと神さまがいらっしゃる

バベルの内部には人間の理解を超えた、超常の効果を持つモノが存在していた。それは総じて『果実』と呼ばれる。

欠損まで元通りにする秘薬

食べてもなくならない植物

エネルギーを無限に蓄える鉱石

超常の効果を巻き起こす武具や巻物

人々は果実を求め、バベルへと足を踏み入れた。その者たちは『盗掘者』呼ばれた。

──きっとそこで我々を見守っていてくださるに違いない

しかし、バベルの内部には『悪魔』と呼ばれる怪物たちが跋扈していたのだ。多くの盗掘者は悪魔によりその身は引き裂かれた。

──神さまに会えたら何でも願い事が叶うらしい

バベル発見から100年。政府が政策により『盗掘者制度』を発表した時、人類はまだ30階層までしか到達していなかった。
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