【完結】カワイイ子猫のつくり方

龍野ゆうき

文字の大きさ
上 下
82 / 221
6:思いもよらぬ接点

6-4

しおりを挟む
「やらないぞ」

突然、思わぬ声が聞こえてきて。
皆が驚いてそちらを振り返ると、そこには。

『あ、朝霧』

いつの間に家に入って来ていたのか、朝霧がドアの前に立っていた。

「まあ、坊ちゃま。いつの間に…。お帰りなさいませ。旦那さまも先程帰られたばかりですのよ」
「伊織くん、おかえり。久しぶりだね」

二人の笑顔に迎えられて朝霧は「ただいま」と、いつものように澄ました様子で靴を脱いでいたが、ふと足を止めると。

「…父さんも、おかえりなさい」

そう付け足すように言って小さく頭を下げた。

(…へぇ。お父さんに対しては案外素直だったりするのかな?)

表情はいつもの真顔だが、きちんと頭を下げて挨拶している朝霧に感心しながら実琴がその足元へと近寄って行くと、朝霧は自然な動作でその身を抱え上げてくれる。
そんな様子を面白そうに見ていた父親は、ニヤニヤと口許くちもとに笑みを浮かべた。

「そのコ、伊織くんが拾って来たんだってね。随分可愛がってるみたいじゃない。どういう経緯で飼うことになったんだい?そこら辺の話、詳しく聞きたいなぁ」

興味津々な様子で言った。
朝霧は、そんな父親をチラリと一瞥いちべつすると。

「…別に。父さんが期待するようなことは何もないですよ」

とだけ返すと、いかにも面倒くさそうに横を向いた。

(あ…あれっ?)

どうやら朝霧の無愛想は父親の前でも変わらないらしい。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

無敵のイエスマン

春海
青春
主人公の赤崎智也は、イエスマンを貫いて人間関係を完璧に築き上げ、他生徒の誰からも敵視されることなく高校生活を送っていた。敵がいない、敵無し、つまり無敵のイエスマンだ。赤崎は小学生の頃に、いじめられていた初恋の女の子をかばったことで、代わりに自分がいじめられ、二度とあんな目に遭いたくないと思い、無敵のイエスマンという人格を作り上げた。しかし、赤崎は自分がかばった女の子と再会し、彼女は赤崎の人格を変えようとする。そして、赤崎と彼女の勝負が始まる。赤崎が無敵のイエスマンを続けられるか、彼女が無敵のイエスマンである赤崎を変えられるか。これは、無敵のイエスマンの悲哀と恋と救いの物語。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

榛名の園

ひかり企画
青春
荒れた14歳から17歳位までの、女子少年院経験記など、あたしの自伝小説を書いて見ました。

【完結】ツインクロス

龍野ゆうき
青春
冬樹と夏樹はそっくりな双子の兄妹。入れ替わって遊ぶのも日常茶飯事。だが、ある日…入れ替わったまま両親と兄が事故に遭い行方不明に。夏樹は兄に代わり男として生きていくことになってしまう。家族を失い傷付き、己を責める日々の中、心を閉ざしていた『少年』の周囲が高校入学を機に動き出す。幼馴染みとの再会に友情と恋愛の狭間で揺れ動く心。そして陰ではある陰謀が渦を巻いていて?友情、恋愛、サスペンスありのお話。

隣の優等生は、デブ活に命を捧げたいっ

椎名 富比路
青春
女子高生の尾村いすゞは、実家が大衆食堂をやっている。 クラスの隣の席の優等生細江《ほそえ》 桃亜《ももあ》が、「デブ活がしたい」と言ってきた。 桃亜は学生の身でありながら、アプリ制作会社で就職前提のバイトをしている。 だが、連日の学業と激務によって、常に腹を減らしていた。 料理の腕を磨くため、いすゞは桃亜に協力をする。

「史上まれにみる美少女の日常」

綾羽 ミカ
青春
鹿取莉菜子17歳 まさに絵にかいたような美少女、街を歩けば一日に20人以上ナンパやスカウトに声を掛けられる少女。家は団地暮らしで母子家庭の生活保護一歩手前という貧乏。性格は非常に悪く、ひがみっぽく、ねたみやすく過激だが、そんなことは一切表に出しません。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)

チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。 主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。 ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。 しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。 その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。 「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」 これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。

処理中です...