80 / 221
6:思いもよらぬ接点
6-2
しおりを挟む
だが、その人物がいったい誰なのか。
その顔を見れば一目瞭然だった。
(朝霧のお父さんだ…)
「へぇー珍しいね、ウチに猫がいるなんて。いったい何年振りだろうね?」
朝霧の父親は嬉しそうに笑うと、固まっている実琴を覗き込むように傍に屈み込んで来た。
人好きのする笑顔で「おいで」と手を伸ばしてくる。
優しい笑顔。
顔は似てても、だいぶ朝霧とは違う印象だ。
その目前の人物の想定外の柔らかい雰囲気に圧倒され、実琴は尚更目を丸くして動けずにいた。
(このお父さんにして、あの息子とは…。意外だ…。意外過ぎるっ!)
「ああ、その子は伊織坊ちゃまが最近拾ってきた子猫ちゃんなんですよ。お名前はミコちゃんっていうんです」
千代が丁寧に紹介してくれる。
「ほぉ?伊織くんが?それは珍しいね。何か心境の変化でもあったかな?」
面白そうにクスクス笑っている。
(あ…でもこの笑顔は少し似てるかも)
子猫限定で見せてくれる朝霧の貴重な笑顔を思い出して、実琴は僅かに胸をドキドキさせた。
手を伸ばしても特に抵抗を見せずにいる子猫の様子に朝霧の父は、そっと慣れた手つきでその身を抱え上げた。
そして大きな手で優しく撫でてくれる。
「うん、良いコだ。よく人に慣れているね」
だが、不意に目線の高さまで持ち上げると、じっ…と観察するように実琴の目を見て言った。
「ん…?このコは…」
その顔を見れば一目瞭然だった。
(朝霧のお父さんだ…)
「へぇー珍しいね、ウチに猫がいるなんて。いったい何年振りだろうね?」
朝霧の父親は嬉しそうに笑うと、固まっている実琴を覗き込むように傍に屈み込んで来た。
人好きのする笑顔で「おいで」と手を伸ばしてくる。
優しい笑顔。
顔は似てても、だいぶ朝霧とは違う印象だ。
その目前の人物の想定外の柔らかい雰囲気に圧倒され、実琴は尚更目を丸くして動けずにいた。
(このお父さんにして、あの息子とは…。意外だ…。意外過ぎるっ!)
「ああ、その子は伊織坊ちゃまが最近拾ってきた子猫ちゃんなんですよ。お名前はミコちゃんっていうんです」
千代が丁寧に紹介してくれる。
「ほぉ?伊織くんが?それは珍しいね。何か心境の変化でもあったかな?」
面白そうにクスクス笑っている。
(あ…でもこの笑顔は少し似てるかも)
子猫限定で見せてくれる朝霧の貴重な笑顔を思い出して、実琴は僅かに胸をドキドキさせた。
手を伸ばしても特に抵抗を見せずにいる子猫の様子に朝霧の父は、そっと慣れた手つきでその身を抱え上げた。
そして大きな手で優しく撫でてくれる。
「うん、良いコだ。よく人に慣れているね」
だが、不意に目線の高さまで持ち上げると、じっ…と観察するように実琴の目を見て言った。
「ん…?このコは…」
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
「南風の頃に」~ノダケンとその仲間達~
kitamitio
青春
合格するはずのなかった札幌の超難関高に入学してしまった野球少年の野田賢治は、野球部員たちの執拗な勧誘を逃れ陸上部に入部する。北海道の海沿いの田舎町で育った彼は仲間たちの優秀さに引け目を感じる生活を送っていたが、長年続けて来た野球との違いに戸惑いながらも陸上競技にのめりこんでいく。「自主自律」を校訓とする私服の学校に敢えて詰襟の学生服を着ていくことで自分自身の存在を主張しようとしていた野田賢治。それでも新しい仲間が広がっていく中で少しずつ変わっていくものがあった。そして、隠していた野田賢治自身の過去について少しずつ知らされていく……。
ヤマネ姫の幸福論
ふくろう
青春
秋の長野行き中央本線、特急あずさの座席に座る一組の男女。
一見、恋人同士に見えるが、これが最初で最後の二人の旅行になるかもしれない。
彼らは霧ヶ峰高原に、「森の妖精」と呼ばれる小動物の棲み家を訪ね、夢のように楽しい二日間を過ごす。
しかし、運命の時は、刻一刻と迫っていた。
主人公達の恋の行方、霧ヶ峰の生き物のお話に添えて、世界中で愛されてきた好編「幸福論」を交え、お読みいただける方に、少しでも清々しく、優しい気持ちになっていただけますよう、精一杯、書いてます!
どうぞ、よろしくお願いいたします!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俯く俺たちに告ぐ
凜
青春
【第13回ドリーム小説大賞優秀賞受賞しました。有難う御座います!】
仕事に悩む翔には、唯一頼りにしている八代先輩がいた。
ある朝聞いたのは八代先輩の訃報。しかし、葬式の帰り、自分の部屋には八代先輩(幽霊)が!
幽霊になっても頼もしい先輩とともに、仕事を次々に突っ走り前を向くまでの青春社会人ストーリー。
甘過ぎるオフィスで塩過ぎる彼と・・・
希花 紀歩
恋愛
24時間二人きりで甘~い💕お仕事!?
『膝の上に座って。』『悪いけど仕事の為だから。』
小さな翻訳会社でアシスタント兼翻訳チェッカーとして働く風永 唯仁子(かざなが ゆにこ)(26)は頼まれると断れない性格。
ある日社長から、急ぎの翻訳案件の為に翻訳者と同じ家に缶詰になり作業を進めるように命令される。気が進まないものの、この案件を無事仕上げることが出来れば憧れていた翻訳コーディネーターになれると言われ、頑張ろうと心を決める。
しかし翻訳者・若泉 透葵(わかいずみ とき)(28)は美青年で優秀な翻訳者であるが何を考えているのかわからない。
彼のベッドが置かれた部屋で二人きりで甘い恋愛シミュレーションゲームの翻訳を進めるが、透葵は翻訳の参考にする為と言って、唯仁子にあれやこれやのスキンシップをしてきて・・・!?
過去の恋愛のトラウマから仕事関係の人と恋愛関係になりたくない唯仁子と、恋愛はくだらないものだと思っている透葵だったが・・・。
*導入部分は説明部分が多く退屈かもしれませんが、この物語に必要な部分なので、こらえて読み進めて頂けると有り難いです。
<表紙イラスト>
男女:わかめサロンパス様
背景:アート宇都宮様
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる