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5:朝霧家の内事情
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自分の家の場合は、狭い分家族四人揃って食卓を囲えばテーブルの上は然程料理の品数が多くなくとも皿が所狭しと並び、人口密度も必然的に高くなる。
それでも家族皆が顔を合わせ、何気ない会話をしながらの食事は穏やかで何処か温かいもので。そういう時間が自分は好きだった。
そんな自分にとっては日常的である家族との団らん風景が、この家にはなかったのだ。
少なくとも、この二日間は。
(流石に、いつもって訳ではないのかも知れないけど…)
それぞれの家庭の事情があるのは勿論解っている。
それでも、どこか慣れたように平然と一人でテーブルに着いている朝霧を見ていると、何故だか言いようのない切なさが込み上げて来るのだった。
(…朝霧)
実琴は堪らなくなって千代の腕の中からするりと抜け出すと、そのまま朝霧の座る椅子の横にちょこんと座った。
「あらっ?猫ちゃん、急にどうしたの?」
それに答えるように実琴が「みー」と小さく鳴くと、千代は嬉しそうに両手を合わせて言った。
「もしかして…そこでお食事したいの?猫ちゃんは坊っちゃまのことが大好きなのね。でも…そうよね、お食事は誰かと一緒の方が美味しいものね。今ミルクを温めてくるから良い子で待っててね」
千代には自分の言いたいことが伝わったらしい。
ちょっぴり嬉しくなって何気なく視線を上げると、朝霧が物言いたげな表情でこちらを見下ろしていた。
それでも家族皆が顔を合わせ、何気ない会話をしながらの食事は穏やかで何処か温かいもので。そういう時間が自分は好きだった。
そんな自分にとっては日常的である家族との団らん風景が、この家にはなかったのだ。
少なくとも、この二日間は。
(流石に、いつもって訳ではないのかも知れないけど…)
それぞれの家庭の事情があるのは勿論解っている。
それでも、どこか慣れたように平然と一人でテーブルに着いている朝霧を見ていると、何故だか言いようのない切なさが込み上げて来るのだった。
(…朝霧)
実琴は堪らなくなって千代の腕の中からするりと抜け出すと、そのまま朝霧の座る椅子の横にちょこんと座った。
「あらっ?猫ちゃん、急にどうしたの?」
それに答えるように実琴が「みー」と小さく鳴くと、千代は嬉しそうに両手を合わせて言った。
「もしかして…そこでお食事したいの?猫ちゃんは坊っちゃまのことが大好きなのね。でも…そうよね、お食事は誰かと一緒の方が美味しいものね。今ミルクを温めてくるから良い子で待っててね」
千代には自分の言いたいことが伝わったらしい。
ちょっぴり嬉しくなって何気なく視線を上げると、朝霧が物言いたげな表情でこちらを見下ろしていた。
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