61 / 119
5:朝霧家の内事情
5-1
しおりを挟む
西の空が茜色に染まる頃。
普段通り朝霧が家へと帰り着くと、玄関ドアを開けたと同時に中から突然大きな声が掛かった。
「坊ちゃまーーーーッ!」
もの凄い剣幕で奥から飛び出して来た千代に、流石の朝霧も驚きの表情を見せている。
「千代さん…落ち着いて。いったい何があったんです?」
すると千代の口からは、せきを切ったように次々と言葉が溢れ出てきた。
「ああぁ…大変なんですよ、坊ちゃまっ!お預かりしていたあの猫ちゃんがいなくなってしまったんですよっ!私がお掃除をしようとお部屋へ入りましたところ、猫ちゃんの姿が見つからなくて。よくよく調べましたら僅かにバルコニー側の窓が開いていたんですよっ。きっとそこから外へ出て行ってしまったのですわっ。ああ、あんなに小さな猫ちゃんが一人でお外へなんか出たら、いったいどれ程の危険があるか…。もう、それを考えただけで気が気ではなくてっ…」
あたふたとして泣きそうになっている千代を前に、朝霧は「ああ…」と小さく頷《うなず》いた。
「ごめん、千代さん。大丈夫だよ。そいつなら無事だ」
落ち着き払った朝霧の様子に、千代は怪訝そうにその表情を見上げた。
だが次の瞬間、しわしわの瞼《まぶた》を大きく開くと、その表情は驚きのものへと変わっていく。
朝霧がトントン…と軽く制服の上着のポケットをつつくと、それを合図のように中からひょっこりと子猫が顔を出したのだ。
普段通り朝霧が家へと帰り着くと、玄関ドアを開けたと同時に中から突然大きな声が掛かった。
「坊ちゃまーーーーッ!」
もの凄い剣幕で奥から飛び出して来た千代に、流石の朝霧も驚きの表情を見せている。
「千代さん…落ち着いて。いったい何があったんです?」
すると千代の口からは、せきを切ったように次々と言葉が溢れ出てきた。
「ああぁ…大変なんですよ、坊ちゃまっ!お預かりしていたあの猫ちゃんがいなくなってしまったんですよっ!私がお掃除をしようとお部屋へ入りましたところ、猫ちゃんの姿が見つからなくて。よくよく調べましたら僅かにバルコニー側の窓が開いていたんですよっ。きっとそこから外へ出て行ってしまったのですわっ。ああ、あんなに小さな猫ちゃんが一人でお外へなんか出たら、いったいどれ程の危険があるか…。もう、それを考えただけで気が気ではなくてっ…」
あたふたとして泣きそうになっている千代を前に、朝霧は「ああ…」と小さく頷《うなず》いた。
「ごめん、千代さん。大丈夫だよ。そいつなら無事だ」
落ち着き払った朝霧の様子に、千代は怪訝そうにその表情を見上げた。
だが次の瞬間、しわしわの瞼《まぶた》を大きく開くと、その表情は驚きのものへと変わっていく。
朝霧がトントン…と軽く制服の上着のポケットをつつくと、それを合図のように中からひょっこりと子猫が顔を出したのだ。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
彼氏と親友が思っていた以上に深い仲になっていたようなので縁を切ったら、彼らは別の縁を見つけたようです
珠宮さくら
青春
親の転勤で、引っ越しばかりをしていた佐久間凛。でも、高校の間は転校することはないと約束してくれていたこともあり、凛は友達を作って親友も作り、更には彼氏を作って青春を謳歌していた。
それが、再び転勤することになったと父に言われて現状を見つめるいいきっかけになるとは、凛自身も思ってもいなかった。
幼馴染をわからせたい ~実は両想いだと気が付かない二人は、今日も相手を告らせるために勝負(誘惑)して空回る~
下城米雪
青春
「よわよわ」「泣いちゃう?」「情けない」「ざーこ」と幼馴染に言われ続けた尾崎太一は、いつか彼女を泣かすという一心で己を鍛えていた。しかし中学生になった日、可愛くなった彼女を見て気持ちが変化する。その後の彼は、自分を認めさせて告白するために勝負を続けるのだった。
一方、彼の幼馴染である穂村芽依は、三歳の時に交わした結婚の約束が生きていると思っていた。しかし友人から「尾崎くんに対して酷過ぎない?」と言われ太一に恨まれていると錯覚する。だが勝負に勝ち続ける限りは彼と一緒に遊べることに気が付いた。そして思った。いつか負けてしまう前に、彼をメロメロにして告らせれば良いのだ。
かくして、実は両想いだと気が付かない二人は、互いの魅力をわからせるための勝負を続けているのだった。
芽衣は少しだけ他人よりも性欲が強いせいで空回りをして、太一は「愛してるゲーム」「脱衣チェス」「乳首当てゲーム」などの意味不明な勝負に惨敗して自信を喪失してしまう。
乳首当てゲームの後、泣きながら廊下を歩いていた太一は、アニメが大好きな先輩、白柳楓と出会った。彼女は太一の話を聞いて「両想い」に気が付き、アドバイスをする。また二人は会話の波長が合うことから、気が付けば毎日会話するようになっていた。
その関係を芽依が知った時、幼馴染の関係が大きく変わり始めるのだった。
姉らぶるっ!!
藍染惣右介兵衛
青春
俺には二人の容姿端麗な姉がいる。
自慢そうに聞こえただろうか?
それは少しばかり誤解だ。
この二人の姉、どちらも重大な欠陥があるのだ……
次女の青山花穂は高校二年で生徒会長。
外見上はすべて完璧に見える花穂姉ちゃん……
「花穂姉ちゃん! 下着でウロウロするのやめろよなっ!」
「んじゃ、裸ならいいってことねっ!」
▼物語概要
【恋愛感情欠落、解離性健忘というトラウマを抱えながら、姉やヒロインに囲まれて成長していく話です】
47万字以上の大長編になります。(2020年11月現在)
【※不健全ラブコメの注意事項】
この作品は通常のラブコメより下品下劣この上なく、ドン引き、ドシモ、変態、マニアック、陰謀と陰毛渦巻くご都合主義のオンパレードです。
それをウリにして、ギャグなどをミックスした作品です。一話(1部分)1800~3000字と短く、四コマ漫画感覚で手軽に読めます。
全編47万字前後となります。読みごたえも初期より増し、ガッツリ読みたい方にもお勧めです。
また、執筆・原作・草案者が男性と女性両方なので、主人公が男にもかかわらず、男性目線からややずれている部分があります。
【元々、小説家になろうで連載していたものを大幅改訂して連載します】
【なろう版から一部、ストーリー展開と主要キャラの名前が変更になりました】
【2017年4月、本幕が完結しました】
序幕・本幕であらかたの謎が解け、メインヒロインが確定します。
【2018年1月、真幕を開始しました】
ここから読み始めると盛大なネタバレになります(汗)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる