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2:不思議な同居生活
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すると、次の瞬間。不意にその女性と実琴の目が合った。
途端にその女性は「まぁ!」と声を上げると、目を丸くして近付いて来る。
「まぁ!まぁっ!まぁっっ!!」
手の中の子猫を覗き込んでくる女性に、朝霧は少しだけ嫌そうな表情を浮かべた。
(あー…こんな綺麗なお屋敷だし、やっぱり『捨てて来なさい』って追い出されるパターン…かな?)
実琴は耳を垂れて小さく縮こまった。
ありがちな話だとは思う。
(でも『捨てて来なさい』って怒られてしまう朝霧っていうのも、普段の様子から想像つかなくて面白かったりするけど…)
だが、実際の女性の反応は実琴の予想とは違ったものだった。
「まぁ、なんて可愛いらしい子猫ちゃんなんでしょう!」
その年配女性は、しわしわの瞼の下から覗く瞳をキラキラさせて、嬉しそうに自らの両手を合わせると言った。
「伊織坊ちゃまが動物を拾って来るなんて、もう何年振りのことでしょうかねっ。以前はよく捨て猫や捨て犬なんかを拾ってきていましたのに、最近は全然そんなこともなくなってしまって…。ばあやは寂しささえ感じておりましたのですよ?」
子猫に喜ぶというよりは、子猫を連れ帰って来た朝霧に喜んでいるようなその女性に。
朝霧は小さく溜息をついた。
途端にその女性は「まぁ!」と声を上げると、目を丸くして近付いて来る。
「まぁ!まぁっ!まぁっっ!!」
手の中の子猫を覗き込んでくる女性に、朝霧は少しだけ嫌そうな表情を浮かべた。
(あー…こんな綺麗なお屋敷だし、やっぱり『捨てて来なさい』って追い出されるパターン…かな?)
実琴は耳を垂れて小さく縮こまった。
ありがちな話だとは思う。
(でも『捨てて来なさい』って怒られてしまう朝霧っていうのも、普段の様子から想像つかなくて面白かったりするけど…)
だが、実際の女性の反応は実琴の予想とは違ったものだった。
「まぁ、なんて可愛いらしい子猫ちゃんなんでしょう!」
その年配女性は、しわしわの瞼の下から覗く瞳をキラキラさせて、嬉しそうに自らの両手を合わせると言った。
「伊織坊ちゃまが動物を拾って来るなんて、もう何年振りのことでしょうかねっ。以前はよく捨て猫や捨て犬なんかを拾ってきていましたのに、最近は全然そんなこともなくなってしまって…。ばあやは寂しささえ感じておりましたのですよ?」
子猫に喜ぶというよりは、子猫を連れ帰って来た朝霧に喜んでいるようなその女性に。
朝霧は小さく溜息をついた。
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