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1:樹の上の子猫

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(でも、いったいどこに…?)

周囲を見渡しながら、よく耳を澄ます。

すると…。


(いた…)


樹の上。

太めの枝の上に、小さな子猫がうずくまるようにして丸まっていた。

本当に小さくて「みゃあみゃあ」と鳴くその鳴き声からも、まだ生まれてから然程経っていないのが判る。

「どうしたの?…もしかして、降りられないの?」

実琴はすぐ真下まで行って見上げると、声を掛けた。

小さく震えているその姿を見る限り、とても自分の力で降りて来られるとは思えない。

背伸びをして手を伸ばしてみるが、全然届かない距離。

「っていうか、どうやってそんな所に登ったのよ?」

親猫にくわえられて登ったのか。それとも、カラスか何かに連れて来られてしまったのだろうか。

周囲を見渡してはみるが、協力してくれそうな人影はどこにも見当たらない。

「うーん…。これは、木登りするしか方法はないか…」

実琴は誰に言うでもなく呟くと、その樹の下に自分の鞄を置いた。

(でも、大丈夫。お任せあれ!木登りなら任せといて♪)

子どもの頃よく、登ったんだよね。

こんな所で、昔のお転婆スキルを発揮できるとは思ってもみなかったけれど。

(ちょっと制服が汚れちゃいそうなのが気にならなくはないけど…。この際、仕方ないよね)


実琴は慣れた様子で、その樹に登り始めた。

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