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エピローグという名の日常
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そうして紅葉と圭の関係は、ただの幼馴染みから両想いの関係へと変化を遂げたのだった。
でも、実際のところ二人の間で目に見えて何が変わったということはなく、互いの気持ちを知ったことで意識の違いはあるものの特に変わらぬ毎日を送っている。
何より、こうして一緒にいられること。
自分が圭ちゃんの隣にいても良いんだと本人の了承を得られていることが何よりも嬉しい。
前は途中でどちらかの友人に会えば、その場で別れて登校するようにしていたが、それも圭ちゃんからの意外な意見によって止めることにしたのだ。
「紅葉がそうしたいって言うから反対するまでもなくそれに従ってたけど。僕は、出来るなら紅葉と一緒に登校したいな」
真っ直ぐにそんなことを言われてしまったら、もうこくこく頷くことしか出来なかった。
もともと、モテる圭の負担になりたくないと思って紅葉が言い出したことだ。一緒にいることで、自分と変な噂を立てられてしまうのも申し訳なかったし、何より香帆のように圭のことを好きな女子に色々言われたことが原因でもあった。
実際それがなかったら自分からそんな風に距離を取ることなんてなかっただろう。それくらい自分にだって圭ちゃんと一緒の登校時間は貴重なものだったのだ。
それを簡単に伝えると、
「そんなの関係ないよ。僕と紅葉のことで他人にとやかく言われる覚えはないし。言いたい奴には言わせておけばいいんじゃないかな」
そんな男前な言葉が返って来た。
「でも、もしも紅葉に何か言って来たり、危害を加えてくるようなことがあったら今度はちゃんと僕に教えてね?絶対だよ」
そんな約束まで取り付けられて。
最近、圭ちゃんは変わった。
優しくて、ふんわりした雰囲気は今までと変わらないのだけど、ふしぶしにどこか意志の強さを感じるというか。そう、男らしくなった気がする。
「どんな優男だって好きな女の為なら皆強くなれるってもんだろ。逆にそういう大事な場面で本気になれない奴がいたとしたら、そりゃあもう男失格だな」…というのは桐生さんの談。
そういうものなんだ?と、感心する一方で、もし圭ちゃんが変わった経緯に自分が僅かにでも係わっていたとしたら良いなぁと思った。
「…でね、昨日は桐生さんに絡まれてさ、参ったよ。最近は紅葉が居ない日が多いからつまらないって。何だか残念そうに話してたよ」
一緒に歩きながら圭ちゃんが困ったように笑った。
圭ちゃんは、すっかり桐生さんに気に入られて会えばちょこちょこ色々ちょっかいを出されているらしい。…というのは立花さんから聞いた話なのだけれど。
「暴れん坊なんかいない方が平和で良いに決まってるのに…」
「まあね。でも、それくらい紅葉の暴れようは見事だったんだって。あんな気持ちの良い大立ち回りはなかなか見れたもんじゃないって絶賛してたよ」
「う…嬉しくない…」
それも『暴れよう』って…。まぁ確かに暴れていたんだろうけど。
桐生さんは前に宣言した通り、夜の街を正常化する為に多忙な日々を送っている。
松竹組が夜の街を仕切るようになってからは、以前よりも随分とガラの悪い連中の数も減ったと聞く。何より『掃除屋』の噂が少し落ち着いたことで、それを倒そうとして集まってくる輩が減ったのも理由の一つらしい。
でも、実際のところ二人の間で目に見えて何が変わったということはなく、互いの気持ちを知ったことで意識の違いはあるものの特に変わらぬ毎日を送っている。
何より、こうして一緒にいられること。
自分が圭ちゃんの隣にいても良いんだと本人の了承を得られていることが何よりも嬉しい。
前は途中でどちらかの友人に会えば、その場で別れて登校するようにしていたが、それも圭ちゃんからの意外な意見によって止めることにしたのだ。
「紅葉がそうしたいって言うから反対するまでもなくそれに従ってたけど。僕は、出来るなら紅葉と一緒に登校したいな」
真っ直ぐにそんなことを言われてしまったら、もうこくこく頷くことしか出来なかった。
もともと、モテる圭の負担になりたくないと思って紅葉が言い出したことだ。一緒にいることで、自分と変な噂を立てられてしまうのも申し訳なかったし、何より香帆のように圭のことを好きな女子に色々言われたことが原因でもあった。
実際それがなかったら自分からそんな風に距離を取ることなんてなかっただろう。それくらい自分にだって圭ちゃんと一緒の登校時間は貴重なものだったのだ。
それを簡単に伝えると、
「そんなの関係ないよ。僕と紅葉のことで他人にとやかく言われる覚えはないし。言いたい奴には言わせておけばいいんじゃないかな」
そんな男前な言葉が返って来た。
「でも、もしも紅葉に何か言って来たり、危害を加えてくるようなことがあったら今度はちゃんと僕に教えてね?絶対だよ」
そんな約束まで取り付けられて。
最近、圭ちゃんは変わった。
優しくて、ふんわりした雰囲気は今までと変わらないのだけど、ふしぶしにどこか意志の強さを感じるというか。そう、男らしくなった気がする。
「どんな優男だって好きな女の為なら皆強くなれるってもんだろ。逆にそういう大事な場面で本気になれない奴がいたとしたら、そりゃあもう男失格だな」…というのは桐生さんの談。
そういうものなんだ?と、感心する一方で、もし圭ちゃんが変わった経緯に自分が僅かにでも係わっていたとしたら良いなぁと思った。
「…でね、昨日は桐生さんに絡まれてさ、参ったよ。最近は紅葉が居ない日が多いからつまらないって。何だか残念そうに話してたよ」
一緒に歩きながら圭ちゃんが困ったように笑った。
圭ちゃんは、すっかり桐生さんに気に入られて会えばちょこちょこ色々ちょっかいを出されているらしい。…というのは立花さんから聞いた話なのだけれど。
「暴れん坊なんかいない方が平和で良いに決まってるのに…」
「まあね。でも、それくらい紅葉の暴れようは見事だったんだって。あんな気持ちの良い大立ち回りはなかなか見れたもんじゃないって絶賛してたよ」
「う…嬉しくない…」
それも『暴れよう』って…。まぁ確かに暴れていたんだろうけど。
桐生さんは前に宣言した通り、夜の街を正常化する為に多忙な日々を送っている。
松竹組が夜の街を仕切るようになってからは、以前よりも随分とガラの悪い連中の数も減ったと聞く。何より『掃除屋』の噂が少し落ち着いたことで、それを倒そうとして集まってくる輩が減ったのも理由の一つらしい。
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