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君のために出来ること

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「ね、本宮くん。私ならあなたにそんな思いは絶対させないよっ」

そう言って彼女は紅葉に向けていた表情を一変させ、花を振りまくような笑顔を圭に向けると、自転車を支えているその腕へと甘えるように絡みついた。…が。

「紅葉は何も悪くないよ。僕が勝手に紅葉を守りたいと思っただけなんだ」

圭は申し訳なさそうに紅葉へそう告げると。今度は隣に当然のように寄り添ってくる少女へと視線を下げた。

「磯山さん、もしあの写真をバラまきたいのなら好きなようにするといいよ。僕はもう、キミの取引には応じない」

そうきっぱりと言い放ち、絡められた己の腕を自然な動作で引き抜いた。

「なに…?そんなこと言っちゃっていいの?あのことが学校に知れたら、この子退学になっちゃうかも知れないよ?」

それでも良いの?と笑顔を浮かべて来る彼女の顔は、何処か引きつっていた。さり気なく外されてしまった絡めた筈の自分の腕の行方に戸惑っているようだった。

圭はそれに気付かない振りをして穏やかに返す。

「そうだね。本当にそんな問題になってしまうような写真があるのなら、どんな処罰を受けても仕方ないのかも知れない。でも、残念ながら紅葉は何も悪いことなんてしていないよ。罪を問われるようなことは元々ないんだ」

会話の合間にチラリ…と紅葉に視線を向けると、紅葉は二人の会話の内容を一生懸命理解しようと耳を傾けているようだった。

「何を言ってるの?今更誤魔化そうったって無駄よ。如月さんが掃除屋だってことは分かってるんだからっ」

「……っ…」

その言葉に紅葉が息を呑むのが分かった。

「普段は大人しそうな振りしてるくせに見かけによらず、やること野蛮よねっ。学校の皆が知ったらどうなるかしら。今から反応が楽しみだわっ。きっと、学校側だって黙っていられないと思うわよ?」

今度は嫌味な様子を隠さず紅葉を煽ってくる香帆に、紅葉は僅かに俯くだけだった。そんな二人の間に割って入るように圭は静かに口を開いた。

「そんなの関係ないよ。紅葉は人に責められるようなことは本当に何もしていないんだから」

「圭ちゃん…」

「それに、もし。磯山さんが写真をバラまくことで紅葉に何かあったとしても…」

圭は一旦そこで言葉を区切ると。

紅葉を真っ直ぐに見つめて言った。


「その時は僕も紅葉と同じ罰を受ける覚悟はあるから」


「けい、ちゃん…」


「ちょっ…正気なのっ?!本宮くんには関係ないじゃないっ!」

目を剥く香帆をよそに、また別の声が聞こえて来た。


「よく言った。それでこそ男だな」


突然のその声に、三人が驚き振り返ると。

そこには桐生と立花が立っていた。

「桐生さん…。なんで…」

紅葉は驚いて先程別れて来たばかりの二人を交互に見つめた。

「ちょっと、ね。組の前をうろついている怪しい人物がいたっていう情報が入ったから周辺を見て回っていたんだよ」

立花が横から爽やかに笑って言った。その言葉に香帆が僅かに反応したことに桐生たちは一瞬だけ目を光らせたが、それに紅葉たちが気付くことはなかった。

「でも、お陰で全部話は聞かせて貰ったぜ。本宮が如月以外の女と付き合ってるみてぇだってさっき立花に聞いた時には正直耳を疑ったが…。そういうカラクリがあったワケか」

桐生が口の端を上げた。
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