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君のために出来ること
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紅葉が意を決して圭に声を掛けようと思っていた矢先。不意に圭が前を向いたまま口を開いた。
「桐生さん、格好良かったね…」
「えっ…?」
思いもよらぬ言葉が耳に届いてきて、紅葉は目を丸くして思わず聞き返してしまった。だが、圭はそのまま言葉を続ける。
「学校で見掛けても落ち着いてて大人っぽい人だなぁとは思っていたけど…。すごく説得力もあるし、頼りになるし、何よりあの歳で既に若頭だなんて凄いよね。…敵わないなぁ」
最後の部分はまるで独り言のような小さな呟きだったけれど、いつも通りの穏やかな笑みを浮かべながら遠くを見つめて話す圭の横顔に、紅葉は戸惑いを隠せずにいた。
「桐生さんの家のことも流石に最初は驚いたけど…。でも、皆良い人達ばかりだったよね。すっかり長居して朝食までご馳走になっちゃって。何だか悪いことしちゃったよね」
そこでやっとこちらに視線を向けて来た圭に、紅葉は頷きながらもその場に足を止めてしまった。
「そう、だね…」
少しでも笑顔を見せたつもりだったのに上手く笑えていない気がする。それを誤魔化すように紅葉は俯くと、圭もその場に立ち止まって言葉を続けた。
「朝、紅葉が家に居ないっておばさんから聞いて探し回ってる時は本当にどうしようかと不安で一杯だったけど…。でも、桐生さんがついててくれて、こうして紅葉が無事で…本当に良かったと思うよ」
そう続ける圭の笑顔はどこか疲れているような、寂し気なような、何とも言えない表情をしていて。
紅葉は居たたまれなくなって頭を下げた。
「ごめんなさいっ!圭ちゃんには…いつもいつも迷惑かけてばかりでっ。私…っ…」
本当は「ごめんなさい」じゃなくて「ありがとう」と伝えたかったのに。圭ちゃんを前に私の口から出て来た言葉は謝罪の言葉ばかりだった。だって、あんな圭ちゃんの顔を見てしまったら本当に申し訳なくて。負担を掛けてしまっている自覚が自分には嫌という程あるから。でも…。
『自己満足なんだよ』
桐生さんの言葉が頭に浮かぶ。
(もう、同じ間違いはしたくない。素直な気持ちを伝えるって決めたから…)
その時、圭が小さく笑ったのが聞こえて、紅葉は驚いて思わず顔を上げた。そこには先程までとは違う、優しく微笑む圭がいた。
「違うよ、紅葉。『迷惑』じゃなくて『心配』だよ」
「えっ…?」
「紅葉は迷惑なんかかけてない。いつだって大いに心配は掛けさせてくれるけどね」
そう言って少しだけ悪戯っぽく笑う圭ちゃんは、小さな頃から変わらない、いつもの穏やかな彼そのものだった。
いつだってそうだ。今まで殆ど二人で喧嘩なんてしたことはないけれど、何か私が言い難いことや上手く言葉が出てこない時に、圭ちゃんは必ず助け舟を出してくれた。それもさり気なく。優しい笑顔で…。
「本当に心配したんだよ。おばさんにも事情は説明して伝えてあるけど、ちゃんと帰ったら謝らないとね」
「うん…」
紅葉は小さく頷いた。
「じゃあ、帰ろう?紅葉…」
そう言って、再び歩き出すのを待っていてくれる圭に紅葉は「あのね…」と口を開いた。
「心配かけて本当にごめんなさい。でもね、圭ちゃんが来てくれて、私…嬉しかった」
「紅葉…」
「桐生さん、格好良かったね…」
「えっ…?」
思いもよらぬ言葉が耳に届いてきて、紅葉は目を丸くして思わず聞き返してしまった。だが、圭はそのまま言葉を続ける。
「学校で見掛けても落ち着いてて大人っぽい人だなぁとは思っていたけど…。すごく説得力もあるし、頼りになるし、何よりあの歳で既に若頭だなんて凄いよね。…敵わないなぁ」
最後の部分はまるで独り言のような小さな呟きだったけれど、いつも通りの穏やかな笑みを浮かべながら遠くを見つめて話す圭の横顔に、紅葉は戸惑いを隠せずにいた。
「桐生さんの家のことも流石に最初は驚いたけど…。でも、皆良い人達ばかりだったよね。すっかり長居して朝食までご馳走になっちゃって。何だか悪いことしちゃったよね」
そこでやっとこちらに視線を向けて来た圭に、紅葉は頷きながらもその場に足を止めてしまった。
「そう、だね…」
少しでも笑顔を見せたつもりだったのに上手く笑えていない気がする。それを誤魔化すように紅葉は俯くと、圭もその場に立ち止まって言葉を続けた。
「朝、紅葉が家に居ないっておばさんから聞いて探し回ってる時は本当にどうしようかと不安で一杯だったけど…。でも、桐生さんがついててくれて、こうして紅葉が無事で…本当に良かったと思うよ」
そう続ける圭の笑顔はどこか疲れているような、寂し気なような、何とも言えない表情をしていて。
紅葉は居たたまれなくなって頭を下げた。
「ごめんなさいっ!圭ちゃんには…いつもいつも迷惑かけてばかりでっ。私…っ…」
本当は「ごめんなさい」じゃなくて「ありがとう」と伝えたかったのに。圭ちゃんを前に私の口から出て来た言葉は謝罪の言葉ばかりだった。だって、あんな圭ちゃんの顔を見てしまったら本当に申し訳なくて。負担を掛けてしまっている自覚が自分には嫌という程あるから。でも…。
『自己満足なんだよ』
桐生さんの言葉が頭に浮かぶ。
(もう、同じ間違いはしたくない。素直な気持ちを伝えるって決めたから…)
その時、圭が小さく笑ったのが聞こえて、紅葉は驚いて思わず顔を上げた。そこには先程までとは違う、優しく微笑む圭がいた。
「違うよ、紅葉。『迷惑』じゃなくて『心配』だよ」
「えっ…?」
「紅葉は迷惑なんかかけてない。いつだって大いに心配は掛けさせてくれるけどね」
そう言って少しだけ悪戯っぽく笑う圭ちゃんは、小さな頃から変わらない、いつもの穏やかな彼そのものだった。
いつだってそうだ。今まで殆ど二人で喧嘩なんてしたことはないけれど、何か私が言い難いことや上手く言葉が出てこない時に、圭ちゃんは必ず助け舟を出してくれた。それもさり気なく。優しい笑顔で…。
「本当に心配したんだよ。おばさんにも事情は説明して伝えてあるけど、ちゃんと帰ったら謝らないとね」
「うん…」
紅葉は小さく頷いた。
「じゃあ、帰ろう?紅葉…」
そう言って、再び歩き出すのを待っていてくれる圭に紅葉は「あのね…」と口を開いた。
「心配かけて本当にごめんなさい。でもね、圭ちゃんが来てくれて、私…嬉しかった」
「紅葉…」
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