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奇跡の少女
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真面目な顔で淡々と話す立花に。
「なるほど。アイツが夢遊病持ちだってーのは解った。だが、それが今回の掃除屋としての行動にも影響しているって話になると、アイツはあんなに暴れながらも実は寝てたってことになっちまうんだぞ?流石にそれはねぇだろ。シャレになんねぇってーの」
思わず苦笑を浮かべた。
だが、桐生の言葉に立花は表情を変えない。
「…立花?」
その無言の訴えに、桐生は笑みを消すと眉根を寄せた。立花の真っ直ぐ見据える瞳を見れば判る。これは肯定を意味しているのだろう。
「おい…。マジで言ってんのかよ?」
冗談にしては、随分と引き伸ばしすぎではないか。
すると、立花はそこでやっと笑顔を見せた。だが、出て来た言葉は「確かにシャレになんないっスよね」という結局は肯定を意味するものだった。
「俺も実際、最初に聞いたときは信じられませんでした。京介さん程ではありませんが、俺だって掃除屋の強さは目の前で見てますし…。何より眠っている状態で、あんな素早い動きが出来るなんて普通じゃ考えられないですよ」
確かにそうだ。普通じゃない。
「マジだってのか…」
あんなに無駄のない動きで立ち回っているのに、それが本人の意識していないところでの行動だというのか?
「…どんだけ寝相悪いんだよ」
桐生は呆然と呟いた。
そこで不意に、また以前左腕の包帯のことについて話した朝のことが浮かんできた。
『実は私もよく分からないんです。朝起きて気づいたら痣になってて。私、寝相悪いから寝てる間にどこかにぶつけちゃったんだと思うんですけど…』
そう困ったように笑っていた如月。
(あれは…全部嘘じゃなかったってことか)
自分に向けられたものも正体を隠す為の偽りの笑顔などではなかったのだと分かり、桐生は内心でホッとしていた。
それは彼女の全てに関して言えることだ。
自らの意思で掃除屋をやっていたのだとしたら、毎晩のように追って来る自分にも当然気付いていて、その上で逃げ回り、正体を隠し、学校では知らん顔して普通に接していたことになるからだ。
そんなこと、考えたくもない。
どんな事情や理由があるにしても、平気で人を欺けるような奴であって欲しくなかった。それが、勝手にアイツに対して持っていた自分のイメージや願望だったとしても。
「ん?でも…待てよ?それって、そもそも如月本人は何も覚えてないってことか?」
夜の街を彷徨っていることは勿論、掃除屋として悪い奴らを排除して回っているのが自分であることも…?
「そう…ですね。そういうことなんだと思います。出歩く癖があること自体は長年のことなので自身で把握しているとは思いますが。ただ、掃除屋としての行動については、あまりに特殊なので…。そこに彼女のどういう潜在意識が働いているのかは謎ですよね」
「潜在意識、ねェ。アイツ、そういうタイプに全然見えねぇもんな。実際にこの目で見たって未だに信じられねぇ位だし」
「ホントですよ。いったい何者なんだっていう位、めちゃくちゃ強いし。…っていうか、京介さん。俺、そもそも前に見た掃除屋の素顔と、その…眼鏡の如月さん自体が上手く繋がらないんですけど…」
今まで真面目な顔で淡々と報告をしていた立花が、途端に情けない顔を見せる。
「なるほど。アイツが夢遊病持ちだってーのは解った。だが、それが今回の掃除屋としての行動にも影響しているって話になると、アイツはあんなに暴れながらも実は寝てたってことになっちまうんだぞ?流石にそれはねぇだろ。シャレになんねぇってーの」
思わず苦笑を浮かべた。
だが、桐生の言葉に立花は表情を変えない。
「…立花?」
その無言の訴えに、桐生は笑みを消すと眉根を寄せた。立花の真っ直ぐ見据える瞳を見れば判る。これは肯定を意味しているのだろう。
「おい…。マジで言ってんのかよ?」
冗談にしては、随分と引き伸ばしすぎではないか。
すると、立花はそこでやっと笑顔を見せた。だが、出て来た言葉は「確かにシャレになんないっスよね」という結局は肯定を意味するものだった。
「俺も実際、最初に聞いたときは信じられませんでした。京介さん程ではありませんが、俺だって掃除屋の強さは目の前で見てますし…。何より眠っている状態で、あんな素早い動きが出来るなんて普通じゃ考えられないですよ」
確かにそうだ。普通じゃない。
「マジだってのか…」
あんなに無駄のない動きで立ち回っているのに、それが本人の意識していないところでの行動だというのか?
「…どんだけ寝相悪いんだよ」
桐生は呆然と呟いた。
そこで不意に、また以前左腕の包帯のことについて話した朝のことが浮かんできた。
『実は私もよく分からないんです。朝起きて気づいたら痣になってて。私、寝相悪いから寝てる間にどこかにぶつけちゃったんだと思うんですけど…』
そう困ったように笑っていた如月。
(あれは…全部嘘じゃなかったってことか)
自分に向けられたものも正体を隠す為の偽りの笑顔などではなかったのだと分かり、桐生は内心でホッとしていた。
それは彼女の全てに関して言えることだ。
自らの意思で掃除屋をやっていたのだとしたら、毎晩のように追って来る自分にも当然気付いていて、その上で逃げ回り、正体を隠し、学校では知らん顔して普通に接していたことになるからだ。
そんなこと、考えたくもない。
どんな事情や理由があるにしても、平気で人を欺けるような奴であって欲しくなかった。それが、勝手にアイツに対して持っていた自分のイメージや願望だったとしても。
「ん?でも…待てよ?それって、そもそも如月本人は何も覚えてないってことか?」
夜の街を彷徨っていることは勿論、掃除屋として悪い奴らを排除して回っているのが自分であることも…?
「そう…ですね。そういうことなんだと思います。出歩く癖があること自体は長年のことなので自身で把握しているとは思いますが。ただ、掃除屋としての行動については、あまりに特殊なので…。そこに彼女のどういう潜在意識が働いているのかは謎ですよね」
「潜在意識、ねェ。アイツ、そういうタイプに全然見えねぇもんな。実際にこの目で見たって未だに信じられねぇ位だし」
「ホントですよ。いったい何者なんだっていう位、めちゃくちゃ強いし。…っていうか、京介さん。俺、そもそも前に見た掃除屋の素顔と、その…眼鏡の如月さん自体が上手く繋がらないんですけど…」
今まで真面目な顔で淡々と報告をしていた立花が、途端に情けない顔を見せる。
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