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避けては通れぬ道
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『二人には何かある』と、タカちゃんは圭ちゃんたちの仲を勘繰っていたけれど、半分以上は私に気を使って言ってくれていたのだと解っていた。今日、私の元気がなかったから。実際は眠くてたまらなかっただけなのだけれど。
でも、本当はそれだけじゃない。
どんなに強がってみても圭ちゃんのいない毎日は、あまりに寂しすぎて。違和感があって、不自然で。それは今まで有り得なかった非日常であり、どうしたって慣れることなんか出来ないと思った。
『そもそも如月さんは本宮くんのこと、どう思ってるの?』
以前、磯山さんに聞かれた言葉。その時は上手く答えられなかったのだけど…。
(迷惑掛けないから…。ただ、傍にいたいっていうのはダメ…かな…?)
朦朧とする頭でぼんやりと考えながらも。
次第に落ちて来るまぶたの重みに耐えきれず、紅葉は静かに瞳を閉じた。
所変わって駅前大通り。
桐生は今夜も掃除屋との接触を図るために、この場所に足を運んでいた。
(…今日は現れるか?)
街灯の明かりで星など見えない夜空を見上げて小さく息を吐いた。
流石に今夜も空振りだと自身の調子を崩してしまいそうだ。
不本意ながらも、しっかり振り回されてしまっている自覚はある。だからこそ、そろそろこの行動にも実を結びたいところだった。
(いい加減、鬼ゴッコは終わりにしたいからな)
そこで桐生は今夜、ある作戦を立てていた。
掃除屋は、煽ることはあるが基本的に自分に向かってくる奴等にしか近付いて行かない。戦う気がない奴が近付けば、逃げる。
その行動パターンを逆手に取ることにしたのだ。
桐生の前には、如何にも悪人面の人相の悪い集団が群れになって歩いている。何をするでもなく歩いているだけなのだが、帰宅途中の通りすがりの人々は恐れ、避けて通る程だった。
その内の一人が桐生を振り返りながら声を掛けてくる。
「若、本当にその…掃除屋って奴は来やがるんスかね?」
「わかんねぇ。でも、こうして溜まってれば出会う確率は断然上がる筈なんだ。ワリィな、門脇…。くだらねぇことに付き合わせちまって」
すると、門脇と呼ばれた男は一瞬だけ驚いたように目を見張ったが、すぐに表情を緩めると笑顔を見せた。
「いや、そんな水臭いこと言いっこナシですよ。オレらで若のお役に立てるってんなら本望ってやつですよ」
皆にも「なっ?」と同意を求めるように声を掛ける。すると、二人の会話を聞いていた他のメンバーたちも皆口々に「そうですよ」と桐生に笑顔を向けた。
実は彼らは皆松竹組の組員だ。門脇は組の若い衆の中でも一番の古株で、皆を纏める役割を担っている。その門脇を筆頭に、数人の若い組員たちの協力を得て、その辺にいるチンピラ同様に掃除屋をおびき出す作戦だ。
最初から話をする気で近付いても毎回逃げられてしまうので、皆には敢えて掃除屋が近付いてきたら絡むように言ってある。松竹組は普通、そんなくだらない絡みや争いは絶対しないし、好まないが掃除屋と向き合う為に演じて貰うことにしたのである。
我ながら良い作戦だと思う。だが、皆に協力を仰いでいる分、今夜どうしても決着をつけたいところだ。
(来いよ、掃除屋。今日こそ、その面拝ませて貰おうじゃねぇか)
でも、本当はそれだけじゃない。
どんなに強がってみても圭ちゃんのいない毎日は、あまりに寂しすぎて。違和感があって、不自然で。それは今まで有り得なかった非日常であり、どうしたって慣れることなんか出来ないと思った。
『そもそも如月さんは本宮くんのこと、どう思ってるの?』
以前、磯山さんに聞かれた言葉。その時は上手く答えられなかったのだけど…。
(迷惑掛けないから…。ただ、傍にいたいっていうのはダメ…かな…?)
朦朧とする頭でぼんやりと考えながらも。
次第に落ちて来るまぶたの重みに耐えきれず、紅葉は静かに瞳を閉じた。
所変わって駅前大通り。
桐生は今夜も掃除屋との接触を図るために、この場所に足を運んでいた。
(…今日は現れるか?)
街灯の明かりで星など見えない夜空を見上げて小さく息を吐いた。
流石に今夜も空振りだと自身の調子を崩してしまいそうだ。
不本意ながらも、しっかり振り回されてしまっている自覚はある。だからこそ、そろそろこの行動にも実を結びたいところだった。
(いい加減、鬼ゴッコは終わりにしたいからな)
そこで桐生は今夜、ある作戦を立てていた。
掃除屋は、煽ることはあるが基本的に自分に向かってくる奴等にしか近付いて行かない。戦う気がない奴が近付けば、逃げる。
その行動パターンを逆手に取ることにしたのだ。
桐生の前には、如何にも悪人面の人相の悪い集団が群れになって歩いている。何をするでもなく歩いているだけなのだが、帰宅途中の通りすがりの人々は恐れ、避けて通る程だった。
その内の一人が桐生を振り返りながら声を掛けてくる。
「若、本当にその…掃除屋って奴は来やがるんスかね?」
「わかんねぇ。でも、こうして溜まってれば出会う確率は断然上がる筈なんだ。ワリィな、門脇…。くだらねぇことに付き合わせちまって」
すると、門脇と呼ばれた男は一瞬だけ驚いたように目を見張ったが、すぐに表情を緩めると笑顔を見せた。
「いや、そんな水臭いこと言いっこナシですよ。オレらで若のお役に立てるってんなら本望ってやつですよ」
皆にも「なっ?」と同意を求めるように声を掛ける。すると、二人の会話を聞いていた他のメンバーたちも皆口々に「そうですよ」と桐生に笑顔を向けた。
実は彼らは皆松竹組の組員だ。門脇は組の若い衆の中でも一番の古株で、皆を纏める役割を担っている。その門脇を筆頭に、数人の若い組員たちの協力を得て、その辺にいるチンピラ同様に掃除屋をおびき出す作戦だ。
最初から話をする気で近付いても毎回逃げられてしまうので、皆には敢えて掃除屋が近付いてきたら絡むように言ってある。松竹組は普通、そんなくだらない絡みや争いは絶対しないし、好まないが掃除屋と向き合う為に演じて貰うことにしたのである。
我ながら良い作戦だと思う。だが、皆に協力を仰いでいる分、今夜どうしても決着をつけたいところだ。
(来いよ、掃除屋。今日こそ、その面拝ませて貰おうじゃねぇか)
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