61 / 95
避けては通れぬ道
6-9
しおりを挟む
『二人には何かある』と、タカちゃんは圭ちゃんたちの仲を勘繰っていたけれど、半分以上は私に気を使って言ってくれていたのだと解っていた。今日、私の元気がなかったから。実際は眠くてたまらなかっただけなのだけれど。
でも、本当はそれだけじゃない。
どんなに強がってみても圭ちゃんのいない毎日は、あまりに寂しすぎて。違和感があって、不自然で。それは今まで有り得なかった非日常であり、どうしたって慣れることなんか出来ないと思った。
『そもそも如月さんは本宮くんのこと、どう思ってるの?』
以前、磯山さんに聞かれた言葉。その時は上手く答えられなかったのだけど…。
(迷惑掛けないから…。ただ、傍にいたいっていうのはダメ…かな…?)
朦朧とする頭でぼんやりと考えながらも。
次第に落ちて来るまぶたの重みに耐えきれず、紅葉は静かに瞳を閉じた。
所変わって駅前大通り。
桐生は今夜も掃除屋との接触を図るために、この場所に足を運んでいた。
(…今日は現れるか?)
街灯の明かりで星など見えない夜空を見上げて小さく息を吐いた。
流石に今夜も空振りだと自身の調子を崩してしまいそうだ。
不本意ながらも、しっかり振り回されてしまっている自覚はある。だからこそ、そろそろこの行動にも実を結びたいところだった。
(いい加減、鬼ゴッコは終わりにしたいからな)
そこで桐生は今夜、ある作戦を立てていた。
掃除屋は、煽ることはあるが基本的に自分に向かってくる奴等にしか近付いて行かない。戦う気がない奴が近付けば、逃げる。
その行動パターンを逆手に取ることにしたのだ。
桐生の前には、如何にも悪人面の人相の悪い集団が群れになって歩いている。何をするでもなく歩いているだけなのだが、帰宅途中の通りすがりの人々は恐れ、避けて通る程だった。
その内の一人が桐生を振り返りながら声を掛けてくる。
「若、本当にその…掃除屋って奴は来やがるんスかね?」
「わかんねぇ。でも、こうして溜まってれば出会う確率は断然上がる筈なんだ。ワリィな、門脇…。くだらねぇことに付き合わせちまって」
すると、門脇と呼ばれた男は一瞬だけ驚いたように目を見張ったが、すぐに表情を緩めると笑顔を見せた。
「いや、そんな水臭いこと言いっこナシですよ。オレらで若のお役に立てるってんなら本望ってやつですよ」
皆にも「なっ?」と同意を求めるように声を掛ける。すると、二人の会話を聞いていた他のメンバーたちも皆口々に「そうですよ」と桐生に笑顔を向けた。
実は彼らは皆松竹組の組員だ。門脇は組の若い衆の中でも一番の古株で、皆を纏める役割を担っている。その門脇を筆頭に、数人の若い組員たちの協力を得て、その辺にいるチンピラ同様に掃除屋をおびき出す作戦だ。
最初から話をする気で近付いても毎回逃げられてしまうので、皆には敢えて掃除屋が近付いてきたら絡むように言ってある。松竹組は普通、そんなくだらない絡みや争いは絶対しないし、好まないが掃除屋と向き合う為に演じて貰うことにしたのである。
我ながら良い作戦だと思う。だが、皆に協力を仰いでいる分、今夜どうしても決着をつけたいところだ。
(来いよ、掃除屋。今日こそ、その面拝ませて貰おうじゃねぇか)
でも、本当はそれだけじゃない。
どんなに強がってみても圭ちゃんのいない毎日は、あまりに寂しすぎて。違和感があって、不自然で。それは今まで有り得なかった非日常であり、どうしたって慣れることなんか出来ないと思った。
『そもそも如月さんは本宮くんのこと、どう思ってるの?』
以前、磯山さんに聞かれた言葉。その時は上手く答えられなかったのだけど…。
(迷惑掛けないから…。ただ、傍にいたいっていうのはダメ…かな…?)
朦朧とする頭でぼんやりと考えながらも。
次第に落ちて来るまぶたの重みに耐えきれず、紅葉は静かに瞳を閉じた。
所変わって駅前大通り。
桐生は今夜も掃除屋との接触を図るために、この場所に足を運んでいた。
(…今日は現れるか?)
街灯の明かりで星など見えない夜空を見上げて小さく息を吐いた。
流石に今夜も空振りだと自身の調子を崩してしまいそうだ。
不本意ながらも、しっかり振り回されてしまっている自覚はある。だからこそ、そろそろこの行動にも実を結びたいところだった。
(いい加減、鬼ゴッコは終わりにしたいからな)
そこで桐生は今夜、ある作戦を立てていた。
掃除屋は、煽ることはあるが基本的に自分に向かってくる奴等にしか近付いて行かない。戦う気がない奴が近付けば、逃げる。
その行動パターンを逆手に取ることにしたのだ。
桐生の前には、如何にも悪人面の人相の悪い集団が群れになって歩いている。何をするでもなく歩いているだけなのだが、帰宅途中の通りすがりの人々は恐れ、避けて通る程だった。
その内の一人が桐生を振り返りながら声を掛けてくる。
「若、本当にその…掃除屋って奴は来やがるんスかね?」
「わかんねぇ。でも、こうして溜まってれば出会う確率は断然上がる筈なんだ。ワリィな、門脇…。くだらねぇことに付き合わせちまって」
すると、門脇と呼ばれた男は一瞬だけ驚いたように目を見張ったが、すぐに表情を緩めると笑顔を見せた。
「いや、そんな水臭いこと言いっこナシですよ。オレらで若のお役に立てるってんなら本望ってやつですよ」
皆にも「なっ?」と同意を求めるように声を掛ける。すると、二人の会話を聞いていた他のメンバーたちも皆口々に「そうですよ」と桐生に笑顔を向けた。
実は彼らは皆松竹組の組員だ。門脇は組の若い衆の中でも一番の古株で、皆を纏める役割を担っている。その門脇を筆頭に、数人の若い組員たちの協力を得て、その辺にいるチンピラ同様に掃除屋をおびき出す作戦だ。
最初から話をする気で近付いても毎回逃げられてしまうので、皆には敢えて掃除屋が近付いてきたら絡むように言ってある。松竹組は普通、そんなくだらない絡みや争いは絶対しないし、好まないが掃除屋と向き合う為に演じて貰うことにしたのである。
我ながら良い作戦だと思う。だが、皆に協力を仰いでいる分、今夜どうしても決着をつけたいところだ。
(来いよ、掃除屋。今日こそ、その面拝ませて貰おうじゃねぇか)
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
カワイイ子猫のつくり方
龍野ゆうき
青春
子猫を助けようとして樹から落下。それだけでも災難なのに、あれ?気が付いたら私…猫になってる!?そんな自分(猫)に手を差し伸べてくれたのは天敵のアイツだった。
無愛想毒舌眼鏡男と獣化主人公の間に生まれる恋?ちょっぴりファンタジーなラブコメ。
【完結】ツインクロス
龍野ゆうき
青春
冬樹と夏樹はそっくりな双子の兄妹。入れ替わって遊ぶのも日常茶飯事。だが、ある日…入れ替わったまま両親と兄が事故に遭い行方不明に。夏樹は兄に代わり男として生きていくことになってしまう。家族を失い傷付き、己を責める日々の中、心を閉ざしていた『少年』の周囲が高校入学を機に動き出す。幼馴染みとの再会に友情と恋愛の狭間で揺れ動く心。そして陰ではある陰謀が渦を巻いていて?友情、恋愛、サスペンスありのお話。
切り抜き師の俺、同じクラスに推しのVtuberがいる
星宮 嶺
青春
冴木陽斗はVtuberの星野ソラを推している。
陽斗は星野ソラを広めるために切り抜き師になり応援をしていくがその本人は同じクラスにいた。
まさか同じクラスにいるとは思いもせず星野ソラへの思いを語る陽斗。
陽斗が話をしているのを聞いてしまい、クラスメイトが切り抜きをしてくれていると知り、嬉しさと恥ずかしさの狭間でバレないように活動する大森美優紀(星野ソラ)の物語
僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた
楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。
この作品はハーメルン様でも掲載しています。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~
蒼田
青春
人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。
目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。
しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。
事故から助けることで始まる活発少女との関係。
愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。
愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。
故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。
*本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる