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避けては通れぬ道

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「やっぱ絶対!何かあるよっ!」

突然、ダンッ…と音を立てて目前の机に両手をついたタカちゃんのその剣幕に、紅葉は思わず目を丸くした。

「な…なに?タカちゃん、どうしたの?」


お昼休み。

食事も終わってぼーっとしながら、本日何度目かの襲い来る眠気と密かに闘っていた。すると、何処かに行っていたらしいタカちゃんが教室に戻るなり勢いよくこちらに向かって来たのだ。

何のこと?と首をかしげていると「本宮くんのことだよっ」とタカちゃんは興奮気味に声を上げた。


タカちゃんの話を要約するとこうだ。

圭ちゃんと磯山さんが付き合っているということに納得出来ないのだという。それは、私の立場を気遣ってとか、もともと彼女を良く思っていない等の感情論ではなく、二人の様子を見ていて不自然な点があるらしいのだ。

磯山さんが圭ちゃんを好きだというのは以前から分かりやすかった位なのだが、圭ちゃんの態度が好き合っているそれではないというのがタカちゃんの見解だった。

「だって、好きな子と一緒にいる顔じゃないよ。あれは!」

タカちゃんは尚も興奮気味に語る。

『付き合っている』と周囲に言いふらしている磯山さんとは対照的に、圭ちゃんは終始困ったように沈黙を保っているらしい。朝も帰りも一緒に登下校していても、ニコニコ顔の磯山さんに反して圭ちゃんはいつも何処かうわの空なんだとか。

「普通、付き合いだしてすぐだったら、もっと幸せ色がにじみ出る筈でしょっ?本宮くんがクールでシャイだとしたってあれはない。第一、本宮くんそーいうキャラじゃないじゃない?」

「うーん、確かに…」

圭ちゃんは表情豊かで笑顔が可愛いタイプだ。

「とにかく、いつもの本宮くんらしくないんだって!」

そう力説するタカちゃんに、紅葉は「そうなんだ…」と相槌を打つことしか出来なかった。

「あの二人には絶対付き合ってる以前に何かあると私は見てるんだけど。そうじゃないとしても、本宮くんは何か悩み事でも抱えてるんじゃないかな?」

「悩み…」


最近、圭ちゃんとはまともに顔を合わせてはいない。朝、家の前で待っていてくれた日以降、圭ちゃんは何も言ってこなくなった。

(多分、避けられて…いるんだろうな…)


『もう、放っておいてくれて良いから』


そう言って、拒絶したのは自分だ。

あの前日の夜、圭ちゃんは出歩いている私をちゃんと引っ張って自転車に乗せて家まで連れ帰ってくれたのに。

それについては文句も言わず、翌朝には身体の心配までしてくれていたというのに。

(私、バチ当たりだ。これ以上、嫌われたくないって言いながら余計に圭ちゃんに嫌われるようなことして。まるで恩を仇で返すような真似…。ホント最悪だ…)

桐生さんの言う通りだ。

一人でいじけて圭ちゃんの優しさを突っぱねておきながら、自分が嫌いだとか言ってそこに浸っていた。

今更、後悔しても遅いけれど、そんなことしてる暇があったら、もっとプラスに…感謝の気持ちを素直に現わすことの方が大切だったと今なら思う。

『ごめんね』よりも、『ありがとう』と伝えるべきだった。


(圭ちゃん…)


今、何に悩んでいるの?

私にも何か、圭ちゃんの力になってあげられることはないのかな?

何より今、圭ちゃんに会いたい。


会って…話がしたい。

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