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追う者・追われる者
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彼がいったい何者で紅葉とどんな繋がりがあるのかずっと気になっていた為、紅葉に直接聞いてみたことがある。彼女から返って来た二人の出会いのきっかけは意外なものだったけれど。
その後、自分なりに少しだけ彼について調べてみた。
紅葉が言っていたように彼は学校では結構な有名人だった。特に女子の間では…。その凛々しい見た目から学年問わず女子たちに大層な人気で、特に彼と仲が良いという生徒会長とのツーショットが目の保養にもなって、たまらないのだとか何とか。
生徒会長が正統派の格好良さなら彼は少しワルな感じで、それがまたワイルドで恰好良いのだとかクラスの女子が騒いでいた。
(紅葉もやっぱりそう、なんだろうか…)
やはり、他の女子たちと同じように彼のような男に憧れを持ったりするのだろうか。
自分とは全然違うタイプの彼に、少しだけ嫉妬のようなものを感じてしまっていたことは恥ずかしくて紅葉には口が裂けても言えないけれど。
でも、その彼が何故こんな所に…?
それに、よくよく見てみれば、もう一人の人物は噂の生徒会長ではないか。
(何で生徒会長までっ?!もしかして紅葉の顔を見られたのかっ?こんなことが学校にバレたら紅葉は学校を退学になってしまうんじゃ…?)
一気に不安が募ってくる。
そんなことを考えている内に男たちは全て叩きのめされ、地に倒れ伏し、そこには再び静寂が戻って来た。
足元に転がる者たちの中央で、ただ静かに夜風に吹かれ立ち尽くしている彼女の後ろ姿は、何処か現実から切り離された絵画のようにも見えた。
(ある意味、野蛮で壮絶な図なのに。何でこんなにも綺麗なんだろう…)
それは紅葉だと判ってるからこその贔屓目なのか。それとも…?
すると、自分と同様に今まで固唾を呑んで様子を窺っていた二人が動きを見せた。
建物の陰からゆっくり歩み出ると、紅葉の後ろ姿に大きく声を掛ける。
「お前が巷で噂の掃除屋か。噂に違わず見事な腕の持ち主だなっ」
桐生は立ち尽くしている紅葉にゆっくりと歩み寄ってい行く。立花はそんな桐生の様子をその場に留まり静かに見守っていた。
桐生は警戒の色を見せながらも少しずつ少しずつ紅葉へと近付いて行く。
「まさか掃除屋がお前みたいな女だったとは驚きだが…。お前を待っていたんだ。少し話をしないか?」
そう言って数歩離れた位置まで来ると歩みを止めた。
その時、紅葉の身体が僅かにピクリと揺れた。
それが合図だった。
動きを止めていた紅葉が突然、猛ダッシュで前へと駆け出したのだ。
「あっ!待てっ!!」
こちらに向かって来ることには警戒していたものの、まさかこのタイミングで逃げられると思ってもみなかった桐生は、一瞬反応が遅れたが、すぐに慌てて後を追い掛ける。
駆け出しながら後方に待機していた立花にも手で何か合図を送ると、立花は小さく頷いて先程まで隠れていた角を曲がって別方向へと走り出した。回り込んで追い詰める気なのだろう。
そんな様子を呆然と眺めていた圭は、我に返ると自分もすぐに自転車へと跨った。
(早く紅葉を追い掛けないとっ)
二人が駆けて行った道とは違う道を選び自転車を走らせる。少しぐらい遠回りをしても自転車なら追いつける筈だ。
その後、自分なりに少しだけ彼について調べてみた。
紅葉が言っていたように彼は学校では結構な有名人だった。特に女子の間では…。その凛々しい見た目から学年問わず女子たちに大層な人気で、特に彼と仲が良いという生徒会長とのツーショットが目の保養にもなって、たまらないのだとか何とか。
生徒会長が正統派の格好良さなら彼は少しワルな感じで、それがまたワイルドで恰好良いのだとかクラスの女子が騒いでいた。
(紅葉もやっぱりそう、なんだろうか…)
やはり、他の女子たちと同じように彼のような男に憧れを持ったりするのだろうか。
自分とは全然違うタイプの彼に、少しだけ嫉妬のようなものを感じてしまっていたことは恥ずかしくて紅葉には口が裂けても言えないけれど。
でも、その彼が何故こんな所に…?
それに、よくよく見てみれば、もう一人の人物は噂の生徒会長ではないか。
(何で生徒会長までっ?!もしかして紅葉の顔を見られたのかっ?こんなことが学校にバレたら紅葉は学校を退学になってしまうんじゃ…?)
一気に不安が募ってくる。
そんなことを考えている内に男たちは全て叩きのめされ、地に倒れ伏し、そこには再び静寂が戻って来た。
足元に転がる者たちの中央で、ただ静かに夜風に吹かれ立ち尽くしている彼女の後ろ姿は、何処か現実から切り離された絵画のようにも見えた。
(ある意味、野蛮で壮絶な図なのに。何でこんなにも綺麗なんだろう…)
それは紅葉だと判ってるからこその贔屓目なのか。それとも…?
すると、自分と同様に今まで固唾を呑んで様子を窺っていた二人が動きを見せた。
建物の陰からゆっくり歩み出ると、紅葉の後ろ姿に大きく声を掛ける。
「お前が巷で噂の掃除屋か。噂に違わず見事な腕の持ち主だなっ」
桐生は立ち尽くしている紅葉にゆっくりと歩み寄ってい行く。立花はそんな桐生の様子をその場に留まり静かに見守っていた。
桐生は警戒の色を見せながらも少しずつ少しずつ紅葉へと近付いて行く。
「まさか掃除屋がお前みたいな女だったとは驚きだが…。お前を待っていたんだ。少し話をしないか?」
そう言って数歩離れた位置まで来ると歩みを止めた。
その時、紅葉の身体が僅かにピクリと揺れた。
それが合図だった。
動きを止めていた紅葉が突然、猛ダッシュで前へと駆け出したのだ。
「あっ!待てっ!!」
こちらに向かって来ることには警戒していたものの、まさかこのタイミングで逃げられると思ってもみなかった桐生は、一瞬反応が遅れたが、すぐに慌てて後を追い掛ける。
駆け出しながら後方に待機していた立花にも手で何か合図を送ると、立花は小さく頷いて先程まで隠れていた角を曲がって別方向へと走り出した。回り込んで追い詰める気なのだろう。
そんな様子を呆然と眺めていた圭は、我に返ると自分もすぐに自転車へと跨った。
(早く紅葉を追い掛けないとっ)
二人が駆けて行った道とは違う道を選び自転車を走らせる。少しぐらい遠回りをしても自転車なら追いつける筈だ。
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