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風のウワサ
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「これを機に警察もここぞとばかりに今までの事件やなんかの立件に動き出すらしいぜ」
「入院中なら逃げられることもないってか。ま、今まで散々手を焼いてたみたいだしな。これで少しは平和になると良いんだけどな」
「夜道とか、うかうか歩いてらんなかったもんなー」
実際、絡まれたり金品を巻き上げられた被害者の多くは学生で、泣き寝入りしてしまう場合が殆どなので事件にさえならないものが多いという話を聞いたことがある。
そのグループが原因かは不明だが、先日同じ塾に通っている別の高校の男子生徒がやはり帰り道に絡まれ、暴行を受け、かなりの怪我を負っていた。圭にとっても、もはや他人事の話ではなかった。
(ホント、これで少し落ち着くと良いけど…)
横で聞きながら圭は小さく息を吐いた。
自分も気を付けなくてはならないのは勿論なのだが、実はそれ以外に少し気になっていることがあった。
(紅葉…。もしかしたら、あいつ…。また…)
紅葉が例の夢遊病を発症しているかも知れない。
こればっかりは治る治らないではないのだが、ここ最近は外を出歩く程の症状はなく、落ち着いていたというのに。
(まだ確証はない。けど、あの後ろ姿はちょっと…。似すぎていたよな…)
先日、塾が終わって同じ塾の友人たちと話しながら建物の外へと出た時、何気なく向けた視線の先。遠くを歩いている人物の後ろ姿に圭は目を見張った。
(あれは…紅葉…?)
確信は持てなかったが、その後ろ姿はあまりにも似ていて。
友人と別れたその足で慌てて後を追ってみたものの、もうその人物は周辺には見当たらなかった。
その後、一旦塾の駐輪場まで自転車を取りに戻り、家に戻って紅葉の家のドアを確認してみると、とりあえず鍵は閉まっていたのだけど。
鍵が施錠されているということは、多分紅葉は家にいる筈だ。
だが、自転車を取りに戻った分のロスもある。その間に家に戻った可能性も捨てきれないと思った。
(でも、眠っていても帰宅してしっかり鍵を掛けられるということは、外出する時も普段のように鍵を掛けて出たりするのかな?)
そうなると、家のドアを確認するだけでは紅葉の在宅を確かめることにはならないのかも知れない。
(…分からないな。紅葉の夢遊病は特殊だからな…)
本人に聞いても、きっと有力な答えは出てこないだろう。
(でも、夜の女の子の独り歩き自体危ないことだし、やっぱり心配だよ)
それが本人の意識のないところでなら尚更だ。何かあってからでは遅いのだ。
(せめて、おばさんが家にいてくれたらな…)
いつも気付ける訳ではないにしても、少しはストッパーになってくれるのだろうけれど。
それでも夜勤で家を空けている紅葉の母親の苦労は近くで見ていて痛い程に知っているから無責任なことは言えない。
(言えるハズがない…よな)
それはきっと、紅葉も同じ想いの筈だ。
(そういう色んな苦労やストレスとかも少なからず影響してるんだろうな…)
「入院中なら逃げられることもないってか。ま、今まで散々手を焼いてたみたいだしな。これで少しは平和になると良いんだけどな」
「夜道とか、うかうか歩いてらんなかったもんなー」
実際、絡まれたり金品を巻き上げられた被害者の多くは学生で、泣き寝入りしてしまう場合が殆どなので事件にさえならないものが多いという話を聞いたことがある。
そのグループが原因かは不明だが、先日同じ塾に通っている別の高校の男子生徒がやはり帰り道に絡まれ、暴行を受け、かなりの怪我を負っていた。圭にとっても、もはや他人事の話ではなかった。
(ホント、これで少し落ち着くと良いけど…)
横で聞きながら圭は小さく息を吐いた。
自分も気を付けなくてはならないのは勿論なのだが、実はそれ以外に少し気になっていることがあった。
(紅葉…。もしかしたら、あいつ…。また…)
紅葉が例の夢遊病を発症しているかも知れない。
こればっかりは治る治らないではないのだが、ここ最近は外を出歩く程の症状はなく、落ち着いていたというのに。
(まだ確証はない。けど、あの後ろ姿はちょっと…。似すぎていたよな…)
先日、塾が終わって同じ塾の友人たちと話しながら建物の外へと出た時、何気なく向けた視線の先。遠くを歩いている人物の後ろ姿に圭は目を見張った。
(あれは…紅葉…?)
確信は持てなかったが、その後ろ姿はあまりにも似ていて。
友人と別れたその足で慌てて後を追ってみたものの、もうその人物は周辺には見当たらなかった。
その後、一旦塾の駐輪場まで自転車を取りに戻り、家に戻って紅葉の家のドアを確認してみると、とりあえず鍵は閉まっていたのだけど。
鍵が施錠されているということは、多分紅葉は家にいる筈だ。
だが、自転車を取りに戻った分のロスもある。その間に家に戻った可能性も捨てきれないと思った。
(でも、眠っていても帰宅してしっかり鍵を掛けられるということは、外出する時も普段のように鍵を掛けて出たりするのかな?)
そうなると、家のドアを確認するだけでは紅葉の在宅を確かめることにはならないのかも知れない。
(…分からないな。紅葉の夢遊病は特殊だからな…)
本人に聞いても、きっと有力な答えは出てこないだろう。
(でも、夜の女の子の独り歩き自体危ないことだし、やっぱり心配だよ)
それが本人の意識のないところでなら尚更だ。何かあってからでは遅いのだ。
(せめて、おばさんが家にいてくれたらな…)
いつも気付ける訳ではないにしても、少しはストッパーになってくれるのだろうけれど。
それでも夜勤で家を空けている紅葉の母親の苦労は近くで見ていて痛い程に知っているから無責任なことは言えない。
(言えるハズがない…よな)
それはきっと、紅葉も同じ想いの筈だ。
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