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風のウワサ
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クラスメイトたちと挨拶を交わしながら紅葉が自分の席へと着くと、そこへ一人の生徒が傍へと歩み寄って来た。
「もーみじ!おっはよー」
「あっタカちゃん、おはよー」
彼女はクラスで仲の良い友人の一人だ。
「ね、ね、聞いた?あのウワサ!」
「…ウワサ?何の?」
興奮気味な彼女の様子に首を傾げる。紅葉には何のことだか分からなかった。
そんな紅葉に彼女は得意げに話し始めた。
「実は、もう一部では朝から大騒ぎになってるみたいなんだけどねー。なんでも最近、この辺を仕切ってた不良グループが何者かに潰されたんだって」
「潰された…?」
随分と穏やかじゃない話のようだ。
「そいつらのユスリやタカリやなんかが酷くて、この学校でも被害を受けてた生徒が結構いたらしいんだけど。そのグループのメンバー皆が病院送りにされたとかで巷では大騒ぎになってるんだって」
「へぇー」
そう言えば先日の朝会でも、それらしい注意喚起があった気がする。
暴行事件等が多発してるから夜間の出歩きを控えるようにとか言っていたっけ。
(圭ちゃん、いつも塾で帰りが遅いから心配してたんだよね。その心配がなくなったなら良かったなぁ)
そんなことを頭の端で思っていると、タカちゃんが尚も興奮しながら身を乗り出してきた。
「でもこの話は、これで終わりじゃないの!」
「そ…そうなの?」
(今日はまた、随分とテンション高いなぁ…)
彼女は情報通であり、極度の噂好きなのだ。
「そのグループを潰したのが、どんな人物なのかって色んな憶測が飛び交ってるんだって」
「どんな人物って…。それって一人なの?グループとかじゃなくって?」
「それそれっ。普通別のグループとの抗争とか喧嘩とかって思うじゃない?でも、どうやらそうじゃないみたいなんだって。流石に一人ってことはないと思うけどね」
「ふーん…」
そこまで聞いて、ふと何かが頭を過ぎった。
不意に浮かんだ、夜の街。
暗がりに潜む複数の黒い影。
その影の向こうに小さくうずくまり震える塊。
執拗に絡まれ、時には手や足が振り降ろされ――…
(何だろう?こんな場面…。私、知らない…)
「どうしたの?紅葉?」
「え…?」
タカちゃんが急に黙ってしまった自分を不思議そうに覗き込んでいた。
思わず自らの意識に集中してしまっていたみたいだ。
「う、ううんっ何でもないっ。でも、その不良グループがいなくなったんならひと安心だね。これで少しは平和になるかもね」
慌てて感想を口にした。
「それがね、そう簡単な話でもないみたいよ」
タカちゃんが大袈裟に肩をすくめる動作を見せる。
「どういうこと?」
「最近は治安悪いしね。今までは例のグループが顔を効かせていたけど、それがいなくなったらなったで別の奴らが出て来るんじゃないかって心配されてるんだって」
「…キリがないんだね」
「ホントにねー」
そこまで話したところでチャイムが鳴り響き、タカちゃんは自分の席へと戻って行った。
「もーみじ!おっはよー」
「あっタカちゃん、おはよー」
彼女はクラスで仲の良い友人の一人だ。
「ね、ね、聞いた?あのウワサ!」
「…ウワサ?何の?」
興奮気味な彼女の様子に首を傾げる。紅葉には何のことだか分からなかった。
そんな紅葉に彼女は得意げに話し始めた。
「実は、もう一部では朝から大騒ぎになってるみたいなんだけどねー。なんでも最近、この辺を仕切ってた不良グループが何者かに潰されたんだって」
「潰された…?」
随分と穏やかじゃない話のようだ。
「そいつらのユスリやタカリやなんかが酷くて、この学校でも被害を受けてた生徒が結構いたらしいんだけど。そのグループのメンバー皆が病院送りにされたとかで巷では大騒ぎになってるんだって」
「へぇー」
そう言えば先日の朝会でも、それらしい注意喚起があった気がする。
暴行事件等が多発してるから夜間の出歩きを控えるようにとか言っていたっけ。
(圭ちゃん、いつも塾で帰りが遅いから心配してたんだよね。その心配がなくなったなら良かったなぁ)
そんなことを頭の端で思っていると、タカちゃんが尚も興奮しながら身を乗り出してきた。
「でもこの話は、これで終わりじゃないの!」
「そ…そうなの?」
(今日はまた、随分とテンション高いなぁ…)
彼女は情報通であり、極度の噂好きなのだ。
「そのグループを潰したのが、どんな人物なのかって色んな憶測が飛び交ってるんだって」
「どんな人物って…。それって一人なの?グループとかじゃなくって?」
「それそれっ。普通別のグループとの抗争とか喧嘩とかって思うじゃない?でも、どうやらそうじゃないみたいなんだって。流石に一人ってことはないと思うけどね」
「ふーん…」
そこまで聞いて、ふと何かが頭を過ぎった。
不意に浮かんだ、夜の街。
暗がりに潜む複数の黒い影。
その影の向こうに小さくうずくまり震える塊。
執拗に絡まれ、時には手や足が振り降ろされ――…
(何だろう?こんな場面…。私、知らない…)
「どうしたの?紅葉?」
「え…?」
タカちゃんが急に黙ってしまった自分を不思議そうに覗き込んでいた。
思わず自らの意識に集中してしまっていたみたいだ。
「う、ううんっ何でもないっ。でも、その不良グループがいなくなったんならひと安心だね。これで少しは平和になるかもね」
慌てて感想を口にした。
「それがね、そう簡単な話でもないみたいよ」
タカちゃんが大袈裟に肩をすくめる動作を見せる。
「どういうこと?」
「最近は治安悪いしね。今までは例のグループが顔を効かせていたけど、それがいなくなったらなったで別の奴らが出て来るんじゃないかって心配されてるんだって」
「…キリがないんだね」
「ホントにねー」
そこまで話したところでチャイムが鳴り響き、タカちゃんは自分の席へと戻って行った。
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