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風のウワサ
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しっかりと家の施錠をして通りへと出ると、いつも通りキィ…と音を立てて隣の家の門から出てくる少年の姿が目に入った。
「圭ちゃんっ」
紅葉は軽く手を上げると、その人物の傍へと歩いて行く。
少年は目の前まで紅葉が来るのを足を止めて待ちながら、
「おはよう、紅葉」
そう挨拶をして笑顔を見せた。
「おはよう」
そうして二人は、それが当たり前のように並んで歩き始める。
彼の名は、本宮圭。紅葉の隣の家に住む同級生だ。
紅葉と圭は、いわゆる幼馴染みというやつで、この家に引っ越して来た幼稚園時代からの付き合いである。
小中学校は勿論のこと、高校も偶然同じ学校に通うことになり、時間が合えば、こうして一緒に登校したりもしている仲だ。
実をいうと、紅葉は圭が家を出る時刻を把握していて、敢えてこの時間に合わせて出ていたりするのだが、そこに特別な含みはなく『折角同じ学校に通っているんだし一緒に行こうよ』的な至って軽いノリでしかなかったりする。
それでも圭も嫌な顔などを見せることはないし、二人にとってこの距離感が普通なので、居心地の良い時間に変わりはないのだ。
「でも、まさかこうして毎日、また圭ちゃんと学校行けるなんて思ってなかったよね」
紅葉が嬉しそうに笑顔を浮かべると。
「そうだね。歩いて行ける距離だし、何だか中学の延長みたいな感じで高校生っていう実感もイマイチ湧かないけどね」
そう微笑みを返してくれる。
「それは確かにそうだね。でも、圭ちゃん、ブレザー姿すごく似合ってるよ。見た目はすっかり高校生しちゃってるかも」
中学の時は学ランだったので、これはこれで新鮮だと思う。
どちらかと言うと圭ちゃんは童顔で大人しいイメージの男の子で、『カッコイイ』というよりは『カワイイ』タイプなのだけど。制服が変わり、ネクタイを締めているだけで何だか大人っぽく見えるから不思議だ。
紅葉が素直に思ったままを口にすると、圭は少しだけ照れた様子を見せて笑った。
「ありがと。紅葉だって似合ってるよ。その制服」
「えへへ」
二人して褒め合い、互いに照れて…。傍[はた]から見れば何ともこそばゆい会話ではあるが、二人は大抵いつもこんな感じで、のほほんとしているのが常なのだ。
「そう言えば、紅葉…」
「ん?」
暫く歩いていて、何かを思い出したように圭が口を開いた。
「最近、良く…眠れてる?」
「うん?寝てるよ?」
首を傾げながら質問の意図を探るように見上げると。
言外に「何でそんなこと聞くの?」と、問われている気がしたのか圭は慌てるように笑顔を見せた。
「ならいいんだ。別に深い意味はないんだ。ただ…」
「…?」
「最近、割と早い時間に紅葉の家の電気が消えてたからさ。早く寝てるのかなって思っただけだよ。昨日も僕が塾から帰る頃には消えてたみたいだし」
「あ、うん。確かに、この頃は早く布団に入っちゃってたかも」
記憶を辿るように人差し指を顎に当てて言った。
「圭ちゃんっ」
紅葉は軽く手を上げると、その人物の傍へと歩いて行く。
少年は目の前まで紅葉が来るのを足を止めて待ちながら、
「おはよう、紅葉」
そう挨拶をして笑顔を見せた。
「おはよう」
そうして二人は、それが当たり前のように並んで歩き始める。
彼の名は、本宮圭。紅葉の隣の家に住む同級生だ。
紅葉と圭は、いわゆる幼馴染みというやつで、この家に引っ越して来た幼稚園時代からの付き合いである。
小中学校は勿論のこと、高校も偶然同じ学校に通うことになり、時間が合えば、こうして一緒に登校したりもしている仲だ。
実をいうと、紅葉は圭が家を出る時刻を把握していて、敢えてこの時間に合わせて出ていたりするのだが、そこに特別な含みはなく『折角同じ学校に通っているんだし一緒に行こうよ』的な至って軽いノリでしかなかったりする。
それでも圭も嫌な顔などを見せることはないし、二人にとってこの距離感が普通なので、居心地の良い時間に変わりはないのだ。
「でも、まさかこうして毎日、また圭ちゃんと学校行けるなんて思ってなかったよね」
紅葉が嬉しそうに笑顔を浮かべると。
「そうだね。歩いて行ける距離だし、何だか中学の延長みたいな感じで高校生っていう実感もイマイチ湧かないけどね」
そう微笑みを返してくれる。
「それは確かにそうだね。でも、圭ちゃん、ブレザー姿すごく似合ってるよ。見た目はすっかり高校生しちゃってるかも」
中学の時は学ランだったので、これはこれで新鮮だと思う。
どちらかと言うと圭ちゃんは童顔で大人しいイメージの男の子で、『カッコイイ』というよりは『カワイイ』タイプなのだけど。制服が変わり、ネクタイを締めているだけで何だか大人っぽく見えるから不思議だ。
紅葉が素直に思ったままを口にすると、圭は少しだけ照れた様子を見せて笑った。
「ありがと。紅葉だって似合ってるよ。その制服」
「えへへ」
二人して褒め合い、互いに照れて…。傍[はた]から見れば何ともこそばゆい会話ではあるが、二人は大抵いつもこんな感じで、のほほんとしているのが常なのだ。
「そう言えば、紅葉…」
「ん?」
暫く歩いていて、何かを思い出したように圭が口を開いた。
「最近、良く…眠れてる?」
「うん?寝てるよ?」
首を傾げながら質問の意図を探るように見上げると。
言外に「何でそんなこと聞くの?」と、問われている気がしたのか圭は慌てるように笑顔を見せた。
「ならいいんだ。別に深い意味はないんだ。ただ…」
「…?」
「最近、割と早い時間に紅葉の家の電気が消えてたからさ。早く寝てるのかなって思っただけだよ。昨日も僕が塾から帰る頃には消えてたみたいだし」
「あ、うん。確かに、この頃は早く布団に入っちゃってたかも」
記憶を辿るように人差し指を顎に当てて言った。
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