300 / 302
新たなスタートライン
24-6
しおりを挟む
見慣れたお店の前に立つ。
でも、目の前に背の大きな雅耶がいるので、今ならまだ店内から自分の姿は見えていないかも…と、思わず逃げ出したい衝動に駆られる。
そんな逃げ腰で落ち着かない様子の夏樹に気付きながらも、雅耶は微笑みを浮かべると。
「じゃあ、入るよ?」
そう言って、手を繋いだままお店の扉を開けた。
その時、一瞬…。横に『本日貸切』の文字が目に入った。
「あれっ…?雅耶、ちょっと待っ…」
『もしかしたら、今日は貸切でお店に入れないかも』…そう言おうとしたのだが、強引に手を引かれて店に足を踏み入れてしまった。
すると。
パパパパパーーーーーンッ!!
突然、大量のクラッカーが鳴り響き、リボンや紙ふぶきが自分目がけて飛んできた。
「……っ…」
それらを咄嗟に手で庇いながらも、驚きのまま店内へと目を向けると。
目の前には、待ち構えていたように、直純、仁志、長瀬、そして清香が囲むように立っていた。
(え…?な…に…?)
その不思議なメンツに、夏樹が瞳を見開いて固まっていると。
傍に居た雅耶が説明をするように言った。
「夏樹、お前…こないだ誕生日だったろ?少し遅れちゃったけど…お誕生日!おめでとうっ!!」
そう言って、何処からか大きな花束を出すと「これは、みんなから…」と言って、夏樹へと差し出した。
途端…。
「「夏樹ちゃん!おめでとうーーーっ!!」」
そこで、皆が示し合わせたように声を合わせて言った。
「……っ!!」
その、サプライズ的なお祝いに。
夏樹は、思わず感極まって涙ぐんでしまう。
「お帰り、夏樹…。よく来てくれたなっ」
直純先生が、いつもの優しい微笑みで声を掛けてくれる。
「…直純先生…」
そして直純は、少し後ろに立っていた仁志を肘で小突くと、仁志が「…急かすな…」と、文句を言いながらも前へ出て来た。
そんな仁志を前に、
「…仁志さん…。この間、オレ…仁志さんにちゃんと謝れなくて…。本当に、すみませんでしたっ!」
夏樹は堪らなくなって頭を下げると。
「謝る必要はない…。冬樹くんが本当は女の子だったと聞いて、最初は正直驚いたけど…。何より知ってて黙ってた直純には呆れてしまうが、君は君だ…。今までと変わらず店に来てくれると嬉しい」
そう言って仁志は、深々と頭を下げている夏樹の肩をポン…と優しく叩いた。
「…仁志さん…」
否定されても仕方ないと思っていただけに。
その優しい言葉に、耐えきれず涙が頬を伝った。
でも、目の前に背の大きな雅耶がいるので、今ならまだ店内から自分の姿は見えていないかも…と、思わず逃げ出したい衝動に駆られる。
そんな逃げ腰で落ち着かない様子の夏樹に気付きながらも、雅耶は微笑みを浮かべると。
「じゃあ、入るよ?」
そう言って、手を繋いだままお店の扉を開けた。
その時、一瞬…。横に『本日貸切』の文字が目に入った。
「あれっ…?雅耶、ちょっと待っ…」
『もしかしたら、今日は貸切でお店に入れないかも』…そう言おうとしたのだが、強引に手を引かれて店に足を踏み入れてしまった。
すると。
パパパパパーーーーーンッ!!
突然、大量のクラッカーが鳴り響き、リボンや紙ふぶきが自分目がけて飛んできた。
「……っ…」
それらを咄嗟に手で庇いながらも、驚きのまま店内へと目を向けると。
目の前には、待ち構えていたように、直純、仁志、長瀬、そして清香が囲むように立っていた。
(え…?な…に…?)
その不思議なメンツに、夏樹が瞳を見開いて固まっていると。
傍に居た雅耶が説明をするように言った。
「夏樹、お前…こないだ誕生日だったろ?少し遅れちゃったけど…お誕生日!おめでとうっ!!」
そう言って、何処からか大きな花束を出すと「これは、みんなから…」と言って、夏樹へと差し出した。
途端…。
「「夏樹ちゃん!おめでとうーーーっ!!」」
そこで、皆が示し合わせたように声を合わせて言った。
「……っ!!」
その、サプライズ的なお祝いに。
夏樹は、思わず感極まって涙ぐんでしまう。
「お帰り、夏樹…。よく来てくれたなっ」
直純先生が、いつもの優しい微笑みで声を掛けてくれる。
「…直純先生…」
そして直純は、少し後ろに立っていた仁志を肘で小突くと、仁志が「…急かすな…」と、文句を言いながらも前へ出て来た。
そんな仁志を前に、
「…仁志さん…。この間、オレ…仁志さんにちゃんと謝れなくて…。本当に、すみませんでしたっ!」
夏樹は堪らなくなって頭を下げると。
「謝る必要はない…。冬樹くんが本当は女の子だったと聞いて、最初は正直驚いたけど…。何より知ってて黙ってた直純には呆れてしまうが、君は君だ…。今までと変わらず店に来てくれると嬉しい」
そう言って仁志は、深々と頭を下げている夏樹の肩をポン…と優しく叩いた。
「…仁志さん…」
否定されても仕方ないと思っていただけに。
その優しい言葉に、耐えきれず涙が頬を伝った。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
暴走♡アイドル3~オトヒメサマノユメ~
雪ノ瀬瞬
青春
今回のステージは神奈川です
鬼音姫の哉原樹
彼女がストーリーの主人公となり彼女の過去が明らかになります
親友の白桐優子
優子の謎の失踪から突然の再会
何故彼女は姿を消したのか
私の中学の頃の実話を元にしました
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
漢方薬局「泡影堂」調剤録
珈琲屋
BL
母子家庭苦労人真面目長男(17)× 生活力0放浪癖漢方医(32)の体格差&年の差恋愛(予定)。じりじり片恋。
キヨフミには最近悩みがあった。3歳児と5歳児を抱えての家事と諸々、加えて勉強。父はとうになく、母はいっさい頼りにならず、妹は受験真っ最中だ。この先俺が生き残るには…そうだ、「泡影堂」にいこう。
高校生×漢方医の先生の話をメインに、二人に関わる人々の話を閑話で書いていく予定です。
メイン2章、閑話1章の順で進めていきます。恋愛は非常にゆっくりです。
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
学校一の美人から恋人にならないと迷惑系Vtuberになると脅された。俺を切り捨てた幼馴染を確実に見返せるけど……迷惑系Vtuberて何それ?
ただ巻き芳賀
青春
学校一の美人、姫川菜乃。
栗色でゆるふわな髪に整った目鼻立ち、声質は少し強いのに優し気な雰囲気の女子だ。
その彼女に脅された。
「恋人にならないと、迷惑系Vtuberになるわよ?」
今日は、大好きな幼馴染みから彼氏ができたと知らされて、心底落ち込んでいた。
でもこれで、確実に幼馴染みを見返すことができる!
しかしだ。迷惑系Vtuberってなんだ??
訳が分からない……。それ、俺困るの?
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
青春の幕間
河瀬みどり
青春
高校二年生の富田祐斗は 父親の失業を契機にアルバイトに専念することを決心する。部活を辞めて、恋人とも別れ、と計画を立てていた祐斗だったが、所属するバドミントン部ではレギュラーを決めるための部内戦が控えており、その部内戦で自分を勝たせてくれれば纏まった金額を譲ると先輩に持ち掛けられ、これを承諾して部活動を辞することを後回しにするのだった。
一方、計画に則ってあっさりと振られてしまった栢原実果は自分が「元カノ」になってしまったことに納得がいかない。それと同時に、恋人同士だったにも関わらず、こうあっさりと振られてしまうほど祐斗のことを知らなかった自分にも立腹していた。祐斗の本当の性格と祐斗が負っている深い事情を知るため、実果は祐斗の友人である田島歩に接近するのだが、彼もまた、祐斗の真意を測りかねていて......。
自分が知らない級友たちの内心をそっと垣間見ることができる瞬間の畏怖と興奮を、高校生活が持つきらめきに乗せて。
片翼のエール
乃南羽緒
青春
「おまえのテニスに足りないものがある」
高校総体テニス競技個人決勝。
大神謙吾は、一学年上の好敵手に敗北を喫した。
技術、スタミナ、メンタルどれをとっても申し分ないはずの大神のテニスに、ひとつ足りないものがある、と。
それを教えてくれるだろうと好敵手から名指しされたのは、『七浦』という人物。
そいつはまさかの女子で、あまつさえテニス部所属の経験がないヤツだった──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる