【完結】ツインクロス

龍野ゆうき

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終止符ー ピリオド ー

23-7

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(何で、力が…ここにいるんだ…?)

他に社員などの見当たらない、薄暗い社内に独りいる違和感。
でも、力は未成年とはいえ、この会社の後継者に値するのだろうし、父親がここにいるのなら、一緒にいても特別不思議はないのかも知れない。
だが、昼間…その父親の命令により、萩原に裏切られてしまった力が、こうしてこの場に平然といることは、やはり違和感を感じずにはいられなかった。

(もしかして、おじさんと和解したの…?それとも、最初から繋がってた…?)

夏樹は、言葉には出さず目だけで訴えた。
だが、それが伝わる筈もなく、力はただただ驚きの表情を浮かべているだけだった。



そんな力の前を夏樹は強引に背を押され、奥の部屋へと連れて行かれた。
多分、場所は社長室。父親の待つ部屋だろう。
それを分かっていながらも、力は何も出来ずに呆然と見送った。

内心で、力は焦っていた。

(…どうして、あいつがここにいるんだ…?別荘から助け出されて、安全な場所へ行ったんじゃなかったのかっ?何で、また親父達に捕まってるんだよっ!)

見るからにガラの悪い連中。
あいつらは多分、最近親父が関係を持ってるという、網代組の奴等だろう。
(本物の冬樹は、いったい何をやってるんだっ?)
あの時、データを抜いて行った本物の冬樹が、夏樹を連れ出したのではなかったのか?
(…それとも、あいつが自らの力で逃げていた所を、連中に見つかったのか?)
何にしても、誰に対してか分からない憤りを感じて、力は拳に力を込めた。

力の中では、既に『今迄の冬樹』は夏樹に変換されている。
データを奪って行ったのも、夏樹ではないことを知っている。
夏樹には何の非もないのだ。狙われるわれもない。
だが、父親達はきっと、その秘密を知らないのだろう。

(だが、それを親父達に知らせたら、どうなる…?)

逆に、役に立たない夏樹が危険な目に遭うのではないのか?
それこそ、本物の冬樹を呼び出す為の、人質のように扱われてしまうかも知れない。

(…それでは、駄目だ。危険すぎる…)

こんな大胆な行動に出ているということは、父親は相当切羽詰っている筈だ。今や、どんな行動に出るか分からない。
そうやって父親は…過去既に、親友を手に掛けているのだから…。

(…何とかして、あいつを助ける方法はないのか…?あいつが、危険な目に遭っているっていうのに、それを黙って見ている…。俺が一番、最低だ…)

そう、思いつつも。
やはり実の父親に対して制裁を加えることに、いまいち覚悟を決められないでいる力だった。


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