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終止符ー ピリオド ー
23-6
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その頃。
『シンコウ漢方製薬株式会社』本社では…。
ビルの地下駐車場へと入った車から降ろされた夏樹は、通用口のような所から、ぞろぞろと連れ立って建物内へと入って行った。
見た目からして、いかにもなガラの悪そうな集団。
それに付け加え、夏樹は後ろ手を紐のような物で縛られ、その集団に連行されていたのだが、通用口にいる警備員は特に気に留める様子もなく、素知らぬ顔をしてそれらを通した。
(しっかり警備員も、買収されているのか?…それとも、ビルごと全部神岡の持ち物だったりするんだろうか…?)
周囲の様子に目を配りながらも、夏樹は大人しく従い、男達に連れられて行く。
『雅耶に手出しをさせない』…その約束で神岡に従った。
今この連中から逃れることは可能かも知れない。だが、今逃げても、再び追われるのは目に見えているから。
雅耶をはじめとした周囲の人々に迷惑を掛けない為にも、今は我慢しようと思っていた。
それに、神岡と話がしたかったのだ。
父のことを、神岡の口から直接聞きたかった。
そして、力のことも…。
先程まで、自分の乗せられた車の前を神岡の乗った高級車が走っていたが、地下駐車場へ入る頃には、いつの間にか見当たらなくなっていた。
(きっと、入口が違うんだろうな…。会社の社長が、こんな薄暗い地下通用口からなんて入る訳ないもんな…)
自分の中で勝手に納得しつつも、この後連れて行かれる所に神岡が居なかったらどうしようかな…などと、様々な思いを巡らせていた。
その内に、荷物なども載せられるような大きなエレベーターへと乗せられると、一行は上を目指す。
目標の階数は『34』を示している。
(34階…か。…高いな。後々逃げるようなことになったら、流石に骨が折れそうだ…)
思わず階段の段数を想像して、気が遠くなった。
エレベーターは早々に34階へと到着すると、扉が開くと同時に「進め」…と、再び腕を掴まれて歩かされる。
乗って来たエレベーターは、割と奥まった目立たない場所にあるようであったが、幾つか扉を経て広い廊下へと出ると、周囲は綺麗なオフィスの雰囲気へと変わっていった。
その間にも、周囲の確認は怠らない。
エレベーターからの道順。非常口等、何気なく確認しながら歩いて行く。
既に夜も遅く、普通の社員などは残っていないのだろう。周囲は一部の電気が灯っているだけで、全体的に薄暗かった。
だが…。
前方に思わぬ人物を見つけて、夏樹は思わず足を止めた。
「…勝手に止まるなっ。進めっ」
力づくで腕を引かれるが、驚きの余り大きく瞳を見開いたまま固まってしまう。
そんな夏樹と同様に、驚きの表情でそこに佇んでいた人物。
それは…。
「…ちから…」
『シンコウ漢方製薬株式会社』本社では…。
ビルの地下駐車場へと入った車から降ろされた夏樹は、通用口のような所から、ぞろぞろと連れ立って建物内へと入って行った。
見た目からして、いかにもなガラの悪そうな集団。
それに付け加え、夏樹は後ろ手を紐のような物で縛られ、その集団に連行されていたのだが、通用口にいる警備員は特に気に留める様子もなく、素知らぬ顔をしてそれらを通した。
(しっかり警備員も、買収されているのか?…それとも、ビルごと全部神岡の持ち物だったりするんだろうか…?)
周囲の様子に目を配りながらも、夏樹は大人しく従い、男達に連れられて行く。
『雅耶に手出しをさせない』…その約束で神岡に従った。
今この連中から逃れることは可能かも知れない。だが、今逃げても、再び追われるのは目に見えているから。
雅耶をはじめとした周囲の人々に迷惑を掛けない為にも、今は我慢しようと思っていた。
それに、神岡と話がしたかったのだ。
父のことを、神岡の口から直接聞きたかった。
そして、力のことも…。
先程まで、自分の乗せられた車の前を神岡の乗った高級車が走っていたが、地下駐車場へ入る頃には、いつの間にか見当たらなくなっていた。
(きっと、入口が違うんだろうな…。会社の社長が、こんな薄暗い地下通用口からなんて入る訳ないもんな…)
自分の中で勝手に納得しつつも、この後連れて行かれる所に神岡が居なかったらどうしようかな…などと、様々な思いを巡らせていた。
その内に、荷物なども載せられるような大きなエレベーターへと乗せられると、一行は上を目指す。
目標の階数は『34』を示している。
(34階…か。…高いな。後々逃げるようなことになったら、流石に骨が折れそうだ…)
思わず階段の段数を想像して、気が遠くなった。
エレベーターは早々に34階へと到着すると、扉が開くと同時に「進め」…と、再び腕を掴まれて歩かされる。
乗って来たエレベーターは、割と奥まった目立たない場所にあるようであったが、幾つか扉を経て広い廊下へと出ると、周囲は綺麗なオフィスの雰囲気へと変わっていった。
その間にも、周囲の確認は怠らない。
エレベーターからの道順。非常口等、何気なく確認しながら歩いて行く。
既に夜も遅く、普通の社員などは残っていないのだろう。周囲は一部の電気が灯っているだけで、全体的に薄暗かった。
だが…。
前方に思わぬ人物を見つけて、夏樹は思わず足を止めた。
「…勝手に止まるなっ。進めっ」
力づくで腕を引かれるが、驚きの余り大きく瞳を見開いたまま固まってしまう。
そんな夏樹と同様に、驚きの表情でそこに佇んでいた人物。
それは…。
「…ちから…」
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