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終末へと向かう足音
22-7
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だが、夏樹は小さく頷くと、
「うん。いいんだ。これだけは、もう…決めてるから」
そう、はっきりと答えた。
そう答えた表情は、少し穏やかなものに変わっていた。
雅耶は、内心では複雑な想いを抱きながらも、それでも夏樹を応援したい気持ちも本当で。
「そう、か…。お前がそう言うなら、俺はそういうお前を見守っていくよ」
強がりながらも、笑ってそう言った。
その言葉に夏樹は。
「ありがと」
と、微笑むと。
二人は自然と再び歩き出した。
「でも…。そうは言ってもさ、今までは殆ど諦めていたんだ」
「…?……冬樹のことか?」
「うん…」
微笑みながら見上げてくる夏樹を、雅耶は不思議そうに見詰めた。
「でもね、もしかしたら…。ふゆちゃんは、案外近くに居てくれてるのかもって。最近、そう思うことがすごく多いんだ」
「…冬樹が?」
思わぬ言葉に、雅耶は驚きの表情を浮かべる。
「もしかしたら…オレの願望が見せた、ただの幻かも知れないんだけどね」
「幻って…。冬樹を何処かで見掛けたとか?」
驚いている雅耶を前に。
夏樹は、以前野崎の家で眠ってしまった時、冬樹が訪れたことを話そうと思っていた。
「うん。…実は…」
そこまで言い掛けた時、二人は同時に足を止めた。
アパートはすぐ目の前だった。
だが、そのアパートの前に二台の車が停車しているのが見える。
いずれもエンジンは掛かったままで、テールランプが点灯している。
それだけならば、何処にでもある光景なのかも知れない。
だが…。
「………」
夏樹は、警戒心を露にした。
人影は特に見当たらないが、周囲に幾つかの気配を感じる。
何より『危険』を自分の肌が感じ取っていた。
「…怪しいな…。もしかしたら、お前の帰りを待っているのかも知れないな…」
雅耶も何かしらの気配を感じ取っているようだ。
さり気なく盾になって、自分の背の後ろに夏樹を隠すようにする。
(…雅耶…)
そんな優しくて頼もしい背中に、夏樹の胸は温かくなった。
「うん。いいんだ。これだけは、もう…決めてるから」
そう、はっきりと答えた。
そう答えた表情は、少し穏やかなものに変わっていた。
雅耶は、内心では複雑な想いを抱きながらも、それでも夏樹を応援したい気持ちも本当で。
「そう、か…。お前がそう言うなら、俺はそういうお前を見守っていくよ」
強がりながらも、笑ってそう言った。
その言葉に夏樹は。
「ありがと」
と、微笑むと。
二人は自然と再び歩き出した。
「でも…。そうは言ってもさ、今までは殆ど諦めていたんだ」
「…?……冬樹のことか?」
「うん…」
微笑みながら見上げてくる夏樹を、雅耶は不思議そうに見詰めた。
「でもね、もしかしたら…。ふゆちゃんは、案外近くに居てくれてるのかもって。最近、そう思うことがすごく多いんだ」
「…冬樹が?」
思わぬ言葉に、雅耶は驚きの表情を浮かべる。
「もしかしたら…オレの願望が見せた、ただの幻かも知れないんだけどね」
「幻って…。冬樹を何処かで見掛けたとか?」
驚いている雅耶を前に。
夏樹は、以前野崎の家で眠ってしまった時、冬樹が訪れたことを話そうと思っていた。
「うん。…実は…」
そこまで言い掛けた時、二人は同時に足を止めた。
アパートはすぐ目の前だった。
だが、そのアパートの前に二台の車が停車しているのが見える。
いずれもエンジンは掛かったままで、テールランプが点灯している。
それだけならば、何処にでもある光景なのかも知れない。
だが…。
「………」
夏樹は、警戒心を露にした。
人影は特に見当たらないが、周囲に幾つかの気配を感じる。
何より『危険』を自分の肌が感じ取っていた。
「…怪しいな…。もしかしたら、お前の帰りを待っているのかも知れないな…」
雅耶も何かしらの気配を感じ取っているようだ。
さり気なく盾になって、自分の背の後ろに夏樹を隠すようにする。
(…雅耶…)
そんな優しくて頼もしい背中に、夏樹の胸は温かくなった。
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