254 / 302
譲れない想い
20-6
しおりを挟む
母親が部屋から出て行った後、雅耶はベッドの側まで寄ると、眠っている冬樹をそっと見下ろした。
冬樹は静かな寝息を立てている。
だが、やはり普段よりも若干顔色が悪い気がした。
「………」
(まったく、何でこう…お前の周囲は物騒なことだらけなんだろうな…)
思わず溜息が出てしまう。
学校へ行けば、上級生や変な先生には絡まれ…。
親父さんのデータに関しては、下手すれば命に係わる程の危険な目に何度も遭っているのだから。
(確か…薬を盛られたって言ってたよな…)
雅耶は、未だ目を覚ましそうもない冬樹をじっ…と見詰めた。
先程ベッドへ寝かせた時に少し確認をしたが、怪我などの外傷がないのは不幸中の幸いだったかも知れない。
こっそり薬を仕込まれたのか、無理やり飲まされたのかは定かではないが、何にしても特に争そうようなことなく、苦しい思いをしていなければ良い、と思った。
(でも、そんな怪しい薬…実際、大丈夫なんだろうか?)
副作用とか、身体への負担とか…。市販の薬でさえ色々あるのだから、何らかの症状が出る可能性もなくはないだろう。
それに、さっきの男がどういう状況で冬樹を助けるに至ったかは分からないが、違った危険に巻き込まれる可能性だって今回は十分にあった筈だ。
あの男が何者かは分からないが、もし彼に助けられていなかったら、今頃冬樹の消息は絶たれていたかも知れない。
考えれば考える程、怖い…と思った。
「気を付けろって…言っただろ?」
雅耶は、目を細めて小さく呟くと。
背を屈めて、目元に掛かっている冬樹の髪にそっと手を伸ばすと、それを優しく除けた。
そのサラサラとした髪の感触と、冬樹の僅かな吐息が手を掠めてゆき、雅耶は思いのほかドキリ…とする。
「………」
そこで唐突に、目の前で夏樹が眠っているこの現状を雅耶は改めて意識してしまった。
自分の部屋の、自分のベッドの上で。
今、静かに眠っている、その愛しい存在を。
雅耶は、自分の鼓動が少しずつ早くなっていくのを頭の隅で感じていた。
思わずその吐息に誘われるように、その手を今度は白い頬へとそっと伸ばす。
恐る恐る、指の背で優しく触れると。
その頬は、見た目通り肌理が細かくすべらかで、そして温かかった。
その温かさに夏樹の無事を改めて感じ、雅耶はホッとするのだった。
冬樹は静かな寝息を立てている。
だが、やはり普段よりも若干顔色が悪い気がした。
「………」
(まったく、何でこう…お前の周囲は物騒なことだらけなんだろうな…)
思わず溜息が出てしまう。
学校へ行けば、上級生や変な先生には絡まれ…。
親父さんのデータに関しては、下手すれば命に係わる程の危険な目に何度も遭っているのだから。
(確か…薬を盛られたって言ってたよな…)
雅耶は、未だ目を覚ましそうもない冬樹をじっ…と見詰めた。
先程ベッドへ寝かせた時に少し確認をしたが、怪我などの外傷がないのは不幸中の幸いだったかも知れない。
こっそり薬を仕込まれたのか、無理やり飲まされたのかは定かではないが、何にしても特に争そうようなことなく、苦しい思いをしていなければ良い、と思った。
(でも、そんな怪しい薬…実際、大丈夫なんだろうか?)
副作用とか、身体への負担とか…。市販の薬でさえ色々あるのだから、何らかの症状が出る可能性もなくはないだろう。
それに、さっきの男がどういう状況で冬樹を助けるに至ったかは分からないが、違った危険に巻き込まれる可能性だって今回は十分にあった筈だ。
あの男が何者かは分からないが、もし彼に助けられていなかったら、今頃冬樹の消息は絶たれていたかも知れない。
考えれば考える程、怖い…と思った。
「気を付けろって…言っただろ?」
雅耶は、目を細めて小さく呟くと。
背を屈めて、目元に掛かっている冬樹の髪にそっと手を伸ばすと、それを優しく除けた。
そのサラサラとした髪の感触と、冬樹の僅かな吐息が手を掠めてゆき、雅耶は思いのほかドキリ…とする。
「………」
そこで唐突に、目の前で夏樹が眠っているこの現状を雅耶は改めて意識してしまった。
自分の部屋の、自分のベッドの上で。
今、静かに眠っている、その愛しい存在を。
雅耶は、自分の鼓動が少しずつ早くなっていくのを頭の隅で感じていた。
思わずその吐息に誘われるように、その手を今度は白い頬へとそっと伸ばす。
恐る恐る、指の背で優しく触れると。
その頬は、見た目通り肌理が細かくすべらかで、そして温かかった。
その温かさに夏樹の無事を改めて感じ、雅耶はホッとするのだった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
【完結】カワイイ子猫のつくり方
龍野ゆうき
青春
子猫を助けようとして樹から落下。それだけでも災難なのに、あれ?気が付いたら私…猫になってる!?そんな自分(猫)に手を差し伸べてくれたのは天敵のアイツだった。
無愛想毒舌眼鏡男と獣化主人公の間に生まれる恋?ちょっぴりファンタジーなラブコメ。
『器のちっちゃな、ふとちょ先輩』
小川敦人
青春
大学卒業後、スポーツジムで働き始めた蓮見吾一。彼は個性豊かな同僚たちに囲まれながら、仕事の楽しさと難しさを学んでいく。特に気分屋で繊細な「器の小さい」中田先輩に振り回される日々。ジム内の人間模様や恋愛模様が交錯しながらも、吾一は仲間との絆を深めていく。やがて訪れるイベントのトラブルを通じて、中田先輩の意外な一面が明らかになり、彼の成長を目の当たりにする。笑いあり、切なさありの職場青春ストーリー。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~
蒼田
青春
人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。
目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。
しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。
事故から助けることで始まる活発少女との関係。
愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。
愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。
故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。
*本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる