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譲れない想い
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雅耶が傍まで行くと、男は自然な動作ですんなりと冬樹を渡してきた。
雅耶は慌てて腕を差し出すと、冬樹を横抱きに受け取る。
「神岡の別荘から連れて来たんだ。この子、薬を盛られたみたいで今は眠ってるんだけど…」
「薬?まさか、力が…?」
腕の中の冬樹の顔を覗き込みながら、雅耶は僅かに険しい表情を浮かべた。
もともと色白な冬樹だが、その静かに眠る顔色は、いつもよりも少し蒼白い気がする。
「いや、神岡の息子についていた運転手が何やら企てていたみたいだな。現に、その息子も一緒に薬を盛られて動けなくなってたし、それは間違いない」
その言葉に雅耶は大きく目を見開いていた。
「あなたは…いったい何者なんですか?何故、冬樹を?」
しっかりと冬樹を抱きかかえながら、雅耶は男の顔をまじまじと見詰めた。
男は20代前半位だろうか。背は雅耶と同じ位ある長身で、だがガッチリとした鍛えられた大人の体格をしていた。その、いかつい体格とは裏腹に、その笑顔は悪意の欠片もないような爽やかな笑顔を浮かべている。
でも、どう考えても冬樹との接点はないような気がした。
「うん…。まぁ簡単に言うと、俺はある奴に頼まれてこの子を助ける手伝いをしたってとこかな」
そこまで言うと、男は身を翻して車に戻って行く。
「…ある奴…?って、あのっ…」
雅耶の言葉を待たずに、男は車に乗り込もうとドアに手を掛けると、今一度こちらを振り返った。
「そいつの話しによると、その子のナイトはキミらしいから。その子のこと、ヨロシク頼むね」
男は、そう言って笑うと運転席に乗り込んだ。
(俺がナイト…?誰がそんなこと…。少なくとも、俺と冬樹の事を知ってる奴ってことだよな?)
頭の中で考えが纏まらない中、男の乗った車は早々に走り出してしまった。
運転席の男が軽く片手を上げて前を通り過ぎていく。
だが、冬樹を両腕に抱えている為、雅耶はただそれを見送ることしか出来なかった。
だが…。
(…あれ?もう一人、誰か乗ってる…?)
後部座席の窓には濃いめのフィルムが貼ってあり、先程前を通った時には気付かなかったのだが、もう一人後ろに誰かが乗っていたようだった。
(謎の二人組…か…。少なくとも、俺の名前も家も知ってて、此処で待ってたってことだよな。冬樹に聞けば今日のことは何か分かるかも知れない、が…)
腕の中で眠る冬樹に視線を落とした。
(…まずは、ゆっくり休ませてやらないと…だな)
雅耶は冬樹を大事そうに抱え直すと、ゆっくりと自宅の門をくぐった。
雅耶は慌てて腕を差し出すと、冬樹を横抱きに受け取る。
「神岡の別荘から連れて来たんだ。この子、薬を盛られたみたいで今は眠ってるんだけど…」
「薬?まさか、力が…?」
腕の中の冬樹の顔を覗き込みながら、雅耶は僅かに険しい表情を浮かべた。
もともと色白な冬樹だが、その静かに眠る顔色は、いつもよりも少し蒼白い気がする。
「いや、神岡の息子についていた運転手が何やら企てていたみたいだな。現に、その息子も一緒に薬を盛られて動けなくなってたし、それは間違いない」
その言葉に雅耶は大きく目を見開いていた。
「あなたは…いったい何者なんですか?何故、冬樹を?」
しっかりと冬樹を抱きかかえながら、雅耶は男の顔をまじまじと見詰めた。
男は20代前半位だろうか。背は雅耶と同じ位ある長身で、だがガッチリとした鍛えられた大人の体格をしていた。その、いかつい体格とは裏腹に、その笑顔は悪意の欠片もないような爽やかな笑顔を浮かべている。
でも、どう考えても冬樹との接点はないような気がした。
「うん…。まぁ簡単に言うと、俺はある奴に頼まれてこの子を助ける手伝いをしたってとこかな」
そこまで言うと、男は身を翻して車に戻って行く。
「…ある奴…?って、あのっ…」
雅耶の言葉を待たずに、男は車に乗り込もうとドアに手を掛けると、今一度こちらを振り返った。
「そいつの話しによると、その子のナイトはキミらしいから。その子のこと、ヨロシク頼むね」
男は、そう言って笑うと運転席に乗り込んだ。
(俺がナイト…?誰がそんなこと…。少なくとも、俺と冬樹の事を知ってる奴ってことだよな?)
頭の中で考えが纏まらない中、男の乗った車は早々に走り出してしまった。
運転席の男が軽く片手を上げて前を通り過ぎていく。
だが、冬樹を両腕に抱えている為、雅耶はただそれを見送ることしか出来なかった。
だが…。
(…あれ?もう一人、誰か乗ってる…?)
後部座席の窓には濃いめのフィルムが貼ってあり、先程前を通った時には気付かなかったのだが、もう一人後ろに誰かが乗っていたようだった。
(謎の二人組…か…。少なくとも、俺の名前も家も知ってて、此処で待ってたってことだよな。冬樹に聞けば今日のことは何か分かるかも知れない、が…)
腕の中で眠る冬樹に視線を落とした。
(…まずは、ゆっくり休ませてやらないと…だな)
雅耶は冬樹を大事そうに抱え直すと、ゆっくりと自宅の門をくぐった。
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