221 / 302
思惑と誤算
17-14
しおりを挟む
「結婚の約束はしてないけど、ファースト・キスは貰ったぜっ」
ニヤリと得意げな笑みを浮かべる力に。
「なッ!?」
「おぉっ!?スゲーっ♪」
驚きの声を上げる雅耶と長瀬よりも、何よりも飛び上がるほど驚いたのは冬樹だ。
「ちょっ!お前っ!!何てこと言うんだッ!!」
「え?うわっ!」
思わず咄嗟に身体が動いていた。
椅子がガタンッと大きな音を立てる。
気が付けば、目の前で力は顔を引きつらせながら両手を上げて降参のポーズをしていて、冬樹は知らず知らずの内に立ち上がり、その力の胸ぐらを両手で掴んで持ち上げていた。
当然のことながら周囲の注目も一身に浴びていて、思わず固まる。
「ふ…冬樹チャン、冬樹チャンっ、落ち着いて落ち着いてっ」
珍しく長瀬が慌てている。
雅耶は無言で目を見張っていた。
「………」
冬樹は、気持ちを落ち着かせるように小さく息を吐くと、力を解放して元の席へと着いた。
「……ごめん」
小さく謝ってくる冬樹に、力は。
「あ…ああ、別に大丈夫…だけど…。ちょっとビックリした」
その気迫に。
(可愛い顔して、怒ると結構な迫力なんだな…)
その意外性も面白いとは思うが。
「その…何でお前がそんなに怒ってるのか、イマイチ分からないんだが…」
いささか控えめに聞いてみると、冬樹はバツの悪そうな顔をして答えた。
「お前が下らないことを言うからだっ。あんな騙し討ちでそんな風に触れ回られたら誰だって…。夏樹だって…浮かばれない…」
何故か語尾が小さくなっていく冬樹に。
「何でお前がアレを知ってるんだ?」
力が疑問を口にした。
その言葉に、冬樹は俯いていた顔を上げると、
「オレ達は二人で一人なんだ。夏樹のことで知らないことなんてない」
そう言い切った。
その表情は凛としていて綺麗だったけれど、何処か寂し気でもあった。
(それだけ、仲が良かった…ということなんだろう…)
力はそう解釈をする。
とりあえず故人のことでもあるし、多少大きく話してしまったことを反省して、力は素直に「…すまなかった」と、冬樹に詫びを入れた。
その言葉に。
冬樹は俯きながら「…別にいい」と小さく答えるだけだった。
そんな冬樹の様子に、それ以上誰もツッコミを入れることなど出来ず、微妙な空気のままその話題はそこで終了した。
ニヤリと得意げな笑みを浮かべる力に。
「なッ!?」
「おぉっ!?スゲーっ♪」
驚きの声を上げる雅耶と長瀬よりも、何よりも飛び上がるほど驚いたのは冬樹だ。
「ちょっ!お前っ!!何てこと言うんだッ!!」
「え?うわっ!」
思わず咄嗟に身体が動いていた。
椅子がガタンッと大きな音を立てる。
気が付けば、目の前で力は顔を引きつらせながら両手を上げて降参のポーズをしていて、冬樹は知らず知らずの内に立ち上がり、その力の胸ぐらを両手で掴んで持ち上げていた。
当然のことながら周囲の注目も一身に浴びていて、思わず固まる。
「ふ…冬樹チャン、冬樹チャンっ、落ち着いて落ち着いてっ」
珍しく長瀬が慌てている。
雅耶は無言で目を見張っていた。
「………」
冬樹は、気持ちを落ち着かせるように小さく息を吐くと、力を解放して元の席へと着いた。
「……ごめん」
小さく謝ってくる冬樹に、力は。
「あ…ああ、別に大丈夫…だけど…。ちょっとビックリした」
その気迫に。
(可愛い顔して、怒ると結構な迫力なんだな…)
その意外性も面白いとは思うが。
「その…何でお前がそんなに怒ってるのか、イマイチ分からないんだが…」
いささか控えめに聞いてみると、冬樹はバツの悪そうな顔をして答えた。
「お前が下らないことを言うからだっ。あんな騙し討ちでそんな風に触れ回られたら誰だって…。夏樹だって…浮かばれない…」
何故か語尾が小さくなっていく冬樹に。
「何でお前がアレを知ってるんだ?」
力が疑問を口にした。
その言葉に、冬樹は俯いていた顔を上げると、
「オレ達は二人で一人なんだ。夏樹のことで知らないことなんてない」
そう言い切った。
その表情は凛としていて綺麗だったけれど、何処か寂し気でもあった。
(それだけ、仲が良かった…ということなんだろう…)
力はそう解釈をする。
とりあえず故人のことでもあるし、多少大きく話してしまったことを反省して、力は素直に「…すまなかった」と、冬樹に詫びを入れた。
その言葉に。
冬樹は俯きながら「…別にいい」と小さく答えるだけだった。
そんな冬樹の様子に、それ以上誰もツッコミを入れることなど出来ず、微妙な空気のままその話題はそこで終了した。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
【完結】眠り姫は夜を彷徨う
龍野ゆうき
青春
夜を支配する多数のグループが存在する治安の悪い街に、ふらりと現れる『掃除屋』の異名を持つ人物。悪行を阻止するその人物の正体は、実は『夢遊病』を患う少女だった?!
今夜も少女は己の知らぬところで夜な夜な街へと繰り出す。悪を殲滅する為に…
学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。
たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】
『み、見えるの?』
「見えるかと言われると……ギリ見えない……」
『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』
◆◆◆
仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。
劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。
ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。
後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。
尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。
また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。
尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……
霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。
3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。
愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー!
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
【R15】アリア・ルージュの妄信
皐月うしこ
ミステリー
その日、白濁の中で少女は死んだ。
異質な匂いに包まれて、全身を粘着質な白い液体に覆われて、乱れた着衣が物語る悲惨な光景を何と表現すればいいのだろう。世界は日常に溢れている。何気ない会話、変わらない秒針、規則正しく進む人波。それでもここに、雲が形を変えるように、ガラスが粉々に砕けるように、一輪の花が小さな種を産んだ。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ヤマネ姫の幸福論
ふくろう
青春
秋の長野行き中央本線、特急あずさの座席に座る一組の男女。
一見、恋人同士に見えるが、これが最初で最後の二人の旅行になるかもしれない。
彼らは霧ヶ峰高原に、「森の妖精」と呼ばれる小動物の棲み家を訪ね、夢のように楽しい二日間を過ごす。
しかし、運命の時は、刻一刻と迫っていた。
主人公達の恋の行方、霧ヶ峰の生き物のお話に添えて、世界中で愛されてきた好編「幸福論」を交え、お読みいただける方に、少しでも清々しく、優しい気持ちになっていただけますよう、精一杯、書いてます!
どうぞ、よろしくお願いいたします!
全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―
入海月子
青春
佐伯優は高校1年生。カメラが趣味。ある日、高校の屋上で出会った超美形の先輩、久住遥斗にモデルになってもらうかわりに、彼の昼食を用意する約束をした。
遥斗はなぜか学校に住みついていて、衣食は女生徒からもらったものでまかなっていた。その報酬とは遥斗に抱いてもらえるというもの。
本当なの?遥斗が気になって仕方ない優は――。
優が薄幸の遥斗を笑顔にしようと頑張る話です。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる