208 / 302
思惑と誤算
17-1
しおりを挟む
ある日の昼休み。
1年A組の5時限目の授業は体育の為、体操服に着替えた生徒達は、昼休みのうちからグランドへ出て来ていた。
「もうすぐ体育祭もあるし、今日はタイムを計ってリレーの選手とか決めるらしいぜ」
向こうでクラスメイト達が話している。
(体育祭…か。正直めんどいな…)
冬樹は、日差しを避けるように日陰でたたずみながら空を眺めていた。
『体育祭』や『運動会』といったイベントは、いままでの冬樹の中ではたいした意味を持たないもので、特に中学時代は一度も参加したことがなかった。小学校の時も、伯父や伯母に観に来て貰うのを嫌い、知らせの手紙を出さずにいたりした。
自分のことで伯父たちの手を煩わせたくなかったから。
だが、逆に運動会の日にも弁当を持ってこない子供として先生を困らせ、後々問題になって伯父夫婦に学校から連絡が行ったりで、結局迷惑を掛けてしまったのを覚えている。だから、ある意味…自業自得ではあるものの、冬樹にとってあまり『体育祭』『運動会』といったものは、良いイメージがないのだった。
(でも、流石に高校でサボる訳にはいかないってね…)
そんなことを考えていた時。
「冬樹っ。こんな所にいたのか…」
冬樹の姿を見つけて、力がやって来た。
「何してるんだ?」
「…別に。涼んでるだけだよ」
冬樹は特に嫌そうな顔はしなかったが、力が隣に来たことも関係ないとでもいうように、そのまま空を見上げている。
「…なるほど、ね」
力は相変わらずな冬樹の様子に、溜息交じりに笑った。
正直、力は行き詰まっていた。
冬樹の警戒心を少しでも解いて上手く自分の手駒にしようと企んでいたのだが、冬樹はなかなか思うように靡かない。
…というよりも『取り付く島もない』といった感じだった。
(こいつ…昔は、もっとフレンドリーな奴だったような気がするのに。まぁ環境の変化が人格も変えちまったのかも知れないが…)
横目で冬樹の様子を伺う。
何より、夏樹を失ったことが一番の打撃なのだろう。
二人は見ていて本当に妬ける位、仲の良い兄妹だった。
(俺だって、夏樹を失ってどんなにショックだったか…。そこら辺はこいつと共有出来る筈なんだがな…)
力は、夏樹を思い出してひとり切なくなった。
1年A組の5時限目の授業は体育の為、体操服に着替えた生徒達は、昼休みのうちからグランドへ出て来ていた。
「もうすぐ体育祭もあるし、今日はタイムを計ってリレーの選手とか決めるらしいぜ」
向こうでクラスメイト達が話している。
(体育祭…か。正直めんどいな…)
冬樹は、日差しを避けるように日陰でたたずみながら空を眺めていた。
『体育祭』や『運動会』といったイベントは、いままでの冬樹の中ではたいした意味を持たないもので、特に中学時代は一度も参加したことがなかった。小学校の時も、伯父や伯母に観に来て貰うのを嫌い、知らせの手紙を出さずにいたりした。
自分のことで伯父たちの手を煩わせたくなかったから。
だが、逆に運動会の日にも弁当を持ってこない子供として先生を困らせ、後々問題になって伯父夫婦に学校から連絡が行ったりで、結局迷惑を掛けてしまったのを覚えている。だから、ある意味…自業自得ではあるものの、冬樹にとってあまり『体育祭』『運動会』といったものは、良いイメージがないのだった。
(でも、流石に高校でサボる訳にはいかないってね…)
そんなことを考えていた時。
「冬樹っ。こんな所にいたのか…」
冬樹の姿を見つけて、力がやって来た。
「何してるんだ?」
「…別に。涼んでるだけだよ」
冬樹は特に嫌そうな顔はしなかったが、力が隣に来たことも関係ないとでもいうように、そのまま空を見上げている。
「…なるほど、ね」
力は相変わらずな冬樹の様子に、溜息交じりに笑った。
正直、力は行き詰まっていた。
冬樹の警戒心を少しでも解いて上手く自分の手駒にしようと企んでいたのだが、冬樹はなかなか思うように靡かない。
…というよりも『取り付く島もない』といった感じだった。
(こいつ…昔は、もっとフレンドリーな奴だったような気がするのに。まぁ環境の変化が人格も変えちまったのかも知れないが…)
横目で冬樹の様子を伺う。
何より、夏樹を失ったことが一番の打撃なのだろう。
二人は見ていて本当に妬ける位、仲の良い兄妹だった。
(俺だって、夏樹を失ってどんなにショックだったか…。そこら辺はこいつと共有出来る筈なんだがな…)
力は、夏樹を思い出してひとり切なくなった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……

三姉妹の姉達は、弟の俺に甘すぎる!
佐々木雄太
青春
四月——
新たに高校生になった有村敦也。
二つ隣町の高校に通う事になったのだが、
そこでは、予想外の出来事が起こった。
本来、いるはずのない同じ歳の三人の姉が、同じ教室にいた。
長女・唯【ゆい】
次女・里菜【りな】
三女・咲弥【さや】
この三人の姉に甘やかされる敦也にとって、
高校デビューするはずだった、初日。
敦也の高校三年間は、地獄の運命へと導かれるのであった。
カクヨム・小説家になろうでも好評連載中!
学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。
たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】
『み、見えるの?』
「見えるかと言われると……ギリ見えない……」
『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』
◆◆◆
仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。
劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。
ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。
後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。
尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。
また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。
尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……
霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。
3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。
愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー!
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】偽りの告白とオレとキミの十日間リフレイン
カムナ リオ
青春
八神斗哉は、友人との悪ふざけで罰ゲームを実行することになる。内容を決めるカードを二枚引くと、そこには『クラスの女子に告白する』、『キスをする』と書かれており、地味で冴えないクラスメイト・如月心乃香に嘘告白を仕掛けることが決まる。
自分より格下だから彼女には何をしても許されると八神は思っていたが、徐々に距離が縮まり……重なる事のなかった二人の運命と不思議が交差する。不器用で残酷な青春タイムリープラブ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる