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天敵襲来!
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その転入生は、みんなの前で軽く一礼すると自己紹介をした。
「今日からこのクラスにお世話になることになった神岡力です。よろしくお願いします」
そうして一通り教室内を見渡し、窓際の席で瞳を見開いて驚きを隠せないでいる冬樹を見付けると、意味有り気に口元に笑みを浮かべた。
(…あれっ?アイツ…こないだの…)
雅耶は、その転入生が教室に入って来るなり、すぐにあの崖で出会った人物であることに気が付いた。
(何で突然、この学校に…?)
疑問を抱きつつも、力の視線の先に冬樹がいることを確認すると、やはり偶然などではなく、意図的に冬樹のいる学校を選んで来たようなそんな気がした。
(…何だろう。ちょっと嫌な感じだな…。あいつ、大丈夫かな…)
見るからに驚きを隠せずに固まっている冬樹の身を案じて、雅耶は心配になった。
「冬樹っ!今日から一緒だなっ。よろしくなっ」
1時限目を終えた休み時間に、嬉々として冬樹の傍までやって来た力に、クラスメイト達は驚いて声を掛けた。
「何だ?お前、野崎と知り合いなのかっ?」
「どういう知り合いなんだよ?」
皆が興味津々に質問する中、冬樹本人は微妙に顔が引きつっていた。
冬樹の席の傍で力を囲むように数人が集まって盛り上がっている中、当の冬樹はこっそりとその輪の中から抜け出すと、廊下へそそくさと逃げ出した。
それを見ていた雅耶も冬樹を追い掛けて、廊下へと出る。
「冬樹…」
声を掛けると、冬樹は本当に嫌そうな顔で「雅耶…」と、呟いた。
「あいつ…何なんだろ。どういうつもりだ?…何だってこの学校にわざわざ…」
珍しく動揺を隠せないでいる冬樹に、内心で雅耶は苦笑すると、
「理由は分からないけど、この学校に冬樹が通ってることを知ってて転入して来たのは確実かもな…」
と、思ったままを口にした。
その時。
「何だよ、冬樹。こんな所にいたのか。…俺を置いてくなんて冷てェなぁ」
そう言って力が教室から出て来た。
だが、冬樹の隣にいる雅耶を見るなり、「あれ?お前…?」…と、失礼にも指を差して来た。
力もあの崖で出会った時のことを思い出したようだった。
「…同じクラスの久賀雅耶だよ。よろしくな」
雅耶が挨拶をすると、力は一瞬驚いた顔を見せたが、次に不敵な笑みを浮かべると言った。
「なるほどな…、そうか…。お前があの『まさや』だったのか」
「今日からこのクラスにお世話になることになった神岡力です。よろしくお願いします」
そうして一通り教室内を見渡し、窓際の席で瞳を見開いて驚きを隠せないでいる冬樹を見付けると、意味有り気に口元に笑みを浮かべた。
(…あれっ?アイツ…こないだの…)
雅耶は、その転入生が教室に入って来るなり、すぐにあの崖で出会った人物であることに気が付いた。
(何で突然、この学校に…?)
疑問を抱きつつも、力の視線の先に冬樹がいることを確認すると、やはり偶然などではなく、意図的に冬樹のいる学校を選んで来たようなそんな気がした。
(…何だろう。ちょっと嫌な感じだな…。あいつ、大丈夫かな…)
見るからに驚きを隠せずに固まっている冬樹の身を案じて、雅耶は心配になった。
「冬樹っ!今日から一緒だなっ。よろしくなっ」
1時限目を終えた休み時間に、嬉々として冬樹の傍までやって来た力に、クラスメイト達は驚いて声を掛けた。
「何だ?お前、野崎と知り合いなのかっ?」
「どういう知り合いなんだよ?」
皆が興味津々に質問する中、冬樹本人は微妙に顔が引きつっていた。
冬樹の席の傍で力を囲むように数人が集まって盛り上がっている中、当の冬樹はこっそりとその輪の中から抜け出すと、廊下へそそくさと逃げ出した。
それを見ていた雅耶も冬樹を追い掛けて、廊下へと出る。
「冬樹…」
声を掛けると、冬樹は本当に嫌そうな顔で「雅耶…」と、呟いた。
「あいつ…何なんだろ。どういうつもりだ?…何だってこの学校にわざわざ…」
珍しく動揺を隠せないでいる冬樹に、内心で雅耶は苦笑すると、
「理由は分からないけど、この学校に冬樹が通ってることを知ってて転入して来たのは確実かもな…」
と、思ったままを口にした。
その時。
「何だよ、冬樹。こんな所にいたのか。…俺を置いてくなんて冷てェなぁ」
そう言って力が教室から出て来た。
だが、冬樹の隣にいる雅耶を見るなり、「あれ?お前…?」…と、失礼にも指を差して来た。
力もあの崖で出会った時のことを思い出したようだった。
「…同じクラスの久賀雅耶だよ。よろしくな」
雅耶が挨拶をすると、力は一瞬驚いた顔を見せたが、次に不敵な笑みを浮かべると言った。
「なるほどな…、そうか…。お前があの『まさや』だったのか」
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