194 / 302
キミに会いたくて
15-11
しおりを挟む
名前を…呼ばれた気がした。
久しく呼ばれていない、その名を…。
『…なっちゃん…』
誰の声か、分からない…。
でも…何処かで聞いたような、優しい…声色。
すぐ傍に人の気配を感じて…。
目を開けようとするのに瞼は重く、思うように開かない。
身体も全然言うことを利かなかった。
(夢…?なのかな…。オレ、今…眠ってる…?)
半分朦朧としている中で、傍に居る人物が動く気配がした。
でも、相手からは不穏なものを何も感じることはなくて…。
自然とどこか安心しきっている自分がいた。
そんな中、そっと…頭を撫でられるような感触がする。
(………?)
その手は、眠っている者を起こさないように気遣うような、本当に優しいもので。
何故だか、泣きたくなる程の切なさを生んだ。
顔に掛かる前髪を優しくサラサラと撫でていく。
本来なら…。
誰だか分からない人物にそんな行為を許すこと自体、有り得ない筈なのに。
でも、何故だか気持ちが落ち着いていて、動く気になれなかった。
(この感覚も、もしかしたら夢…なのかも知れない…)
だって…この手を、オレは…きっと知ってる。
手の大きさも、声も…自分が知っているものとは違うけれど。
だけど、解ってしまった。
だって…。
『なっちゃん』
その名で、そんな風にオレを呼ぶのは…。
すると、その人物が小さく言葉を発した。
「不思議だね…。会いたいなって思ってここに来たけど、まさか本当に丁度いるなんて…。気が合うっていうのか…。偶然って…本当にあるんだね…」
静かに響く、優しい声。
でも、何故だか切ない、寂しげな声。
「なっちゃんには、辛い思いばかりさせて…本当にごめん。でも…あと、少しだから…」
(あと…少し…?…どういう、意味…?)
「あと…もう少しだけ…辛抱して待ってて欲しい…」
その言葉と同時に、触れていた手が離れていく。
(待って…。もう、行っちゃうの…?何処へ行くの?置いて…いかないで…)
必死に手を伸ばしたい。
その去ってゆく手を繋ぎとめておきたい。
なのに…。
やはり、身体は思うように動かなくて。
必死に何とか己の身体を奮い立たせ、出来たことは。
「ふゆ…ちゃん…」
その名を、一言口にすることだけだった。
久しく呼ばれていない、その名を…。
『…なっちゃん…』
誰の声か、分からない…。
でも…何処かで聞いたような、優しい…声色。
すぐ傍に人の気配を感じて…。
目を開けようとするのに瞼は重く、思うように開かない。
身体も全然言うことを利かなかった。
(夢…?なのかな…。オレ、今…眠ってる…?)
半分朦朧としている中で、傍に居る人物が動く気配がした。
でも、相手からは不穏なものを何も感じることはなくて…。
自然とどこか安心しきっている自分がいた。
そんな中、そっと…頭を撫でられるような感触がする。
(………?)
その手は、眠っている者を起こさないように気遣うような、本当に優しいもので。
何故だか、泣きたくなる程の切なさを生んだ。
顔に掛かる前髪を優しくサラサラと撫でていく。
本来なら…。
誰だか分からない人物にそんな行為を許すこと自体、有り得ない筈なのに。
でも、何故だか気持ちが落ち着いていて、動く気になれなかった。
(この感覚も、もしかしたら夢…なのかも知れない…)
だって…この手を、オレは…きっと知ってる。
手の大きさも、声も…自分が知っているものとは違うけれど。
だけど、解ってしまった。
だって…。
『なっちゃん』
その名で、そんな風にオレを呼ぶのは…。
すると、その人物が小さく言葉を発した。
「不思議だね…。会いたいなって思ってここに来たけど、まさか本当に丁度いるなんて…。気が合うっていうのか…。偶然って…本当にあるんだね…」
静かに響く、優しい声。
でも、何故だか切ない、寂しげな声。
「なっちゃんには、辛い思いばかりさせて…本当にごめん。でも…あと、少しだから…」
(あと…少し…?…どういう、意味…?)
「あと…もう少しだけ…辛抱して待ってて欲しい…」
その言葉と同時に、触れていた手が離れていく。
(待って…。もう、行っちゃうの…?何処へ行くの?置いて…いかないで…)
必死に手を伸ばしたい。
その去ってゆく手を繋ぎとめておきたい。
なのに…。
やはり、身体は思うように動かなくて。
必死に何とか己の身体を奮い立たせ、出来たことは。
「ふゆ…ちゃん…」
その名を、一言口にすることだけだった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
【完結】カワイイ子猫のつくり方
龍野ゆうき
青春
子猫を助けようとして樹から落下。それだけでも災難なのに、あれ?気が付いたら私…猫になってる!?そんな自分(猫)に手を差し伸べてくれたのは天敵のアイツだった。
無愛想毒舌眼鏡男と獣化主人公の間に生まれる恋?ちょっぴりファンタジーなラブコメ。
【完結】眠り姫は夜を彷徨う
龍野ゆうき
青春
夜を支配する多数のグループが存在する治安の悪い街に、ふらりと現れる『掃除屋』の異名を持つ人物。悪行を阻止するその人物の正体は、実は『夢遊病』を患う少女だった?!
今夜も少女は己の知らぬところで夜な夜な街へと繰り出す。悪を殲滅する為に…
「史上まれにみる美少女の日常」
綾羽 ミカ
青春
鹿取莉菜子17歳 まさに絵にかいたような美少女、街を歩けば一日に20人以上ナンパやスカウトに声を掛けられる少女。家は団地暮らしで母子家庭の生活保護一歩手前という貧乏。性格は非常に悪く、ひがみっぽく、ねたみやすく過激だが、そんなことは一切表に出しません。
僕は 彼女の彼氏のはずなんだ
すんのはじめ
青春
昔、つぶれていった父のレストランを復活させるために その娘は
僕等4人の仲好しグループは同じ小学校を出て、中学校も同じで、地域では有名な進学高校を目指していた。中でも、中道美鈴には特別な想いがあったが、中学を卒業する時、彼女の消息が突然消えてしまった。僕は、彼女のことを忘れることが出来なくて、大学3年になって、ようやく探し出せた。それからの彼女は、高校進学を犠牲にしてまでも、昔、つぶされた様な形になった父のレストランを復活させるため、その思いを秘め、色々と奮闘してゆく

ファンファーレ!
ほしのことば
青春
♡完結まで毎日投稿♡
高校2年生の初夏、ユキは余命1年だと申告された。思えば、今まで「なんとなく」で生きてきた人生。延命治療も勧められたが、ユキは治療はせず、残りの人生を全力で生きることを決意した。
友情・恋愛・行事・学業…。
今まで適当にこなしてきただけの毎日を全力で過ごすことで、ユキの「生」に関する気持ちは段々と動いていく。
主人公のユキの心情を軸に、ユキが全力で生きることで起きる周りの心情の変化も描く。
誰もが感じたことのある青春時代の悩みや感動が、きっとあなたの心に寄り添う作品。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる