182 / 302
隠された想いと真実
14-12
しおりを挟む
「そういえば、直純先生からお見舞いを預かって来たんだ」
「…お見舞い?」
首を傾げている冬樹の前に、預かって来た包みを差し出した。
「サンドウィッチだって。俺の分まで入れてくれたらしくて…。一緒に食べてしっかり冬樹にも食わせてやってくれってさ。…食欲あるか?」
目の前に広げられた包みの中には、お店でも出している美味しそうなサンドウィッチが沢山詰められていた。
「…こんなに…」
「ホント…愛されてるよなー」
思わず口から出た俺の呟きに、冬樹が目を丸くした。
「なに?…それ?」
「あ…いや。何ていうか…お前、大事にされてるなーって思ってさっ」
うっかり出てしまったぼやきに思わず動揺を隠せず、雅耶は一人あたふたした。
これは、ただのヤキモチだ。
見苦しいこと、この上ない。
だが、そんな雅耶の胸中を冬樹自身が知る由もなく。
冬樹は暫く不思議そうに雅耶を眺めていたが、視線をテーブルの上のサンドウィッチへと戻すと「本当、ありがたいよな…」と、しみじみ呟いた。
「…食べられそうか?」
「ああ。折角だし…頂くよ」
そうして、二人で遅めの昼食を取ることにした。
食事を終えて少しまったりした後、一応予定していた宿題に取り掛かろうとテーブルにノートを広げた。
「…お前、大丈夫か?無理しないで調子悪かったら休めよな」
冬樹はやはり本調子ではないのか、いつもより食も細かった。
本人は元気を装っているつもりなのだろうが、顔色や表情から調子が悪いのは一目瞭然だった。
「平気だよ。大したことじゃないんだ。原因も…分かってる…」
シャープペンシルをノートに走らせながら冬樹が言った。
「…原因?夏バテか何かか?…それとも風邪?」
「………」
冬樹は無言になると手を止めた。
ノート上に視線を置きながらも、何処か思い詰めたような…そんな表情を浮かべている。
「…冬樹?」
雅耶は心配になって、俯き加減の冬樹の顔を横から覗き込む様に声を掛けた。
すると、冬樹が顔を上げずにゆっくりと口を開いた。
「毎年…さ。この時期はいつも調子を崩しやすいんだ…」
「…この時期…?」
「ああ。それももう、八年越しになる…」
その言葉にやっと意味を理解して。
雅耶は、次の言葉が出て来なかった。
「…お見舞い?」
首を傾げている冬樹の前に、預かって来た包みを差し出した。
「サンドウィッチだって。俺の分まで入れてくれたらしくて…。一緒に食べてしっかり冬樹にも食わせてやってくれってさ。…食欲あるか?」
目の前に広げられた包みの中には、お店でも出している美味しそうなサンドウィッチが沢山詰められていた。
「…こんなに…」
「ホント…愛されてるよなー」
思わず口から出た俺の呟きに、冬樹が目を丸くした。
「なに?…それ?」
「あ…いや。何ていうか…お前、大事にされてるなーって思ってさっ」
うっかり出てしまったぼやきに思わず動揺を隠せず、雅耶は一人あたふたした。
これは、ただのヤキモチだ。
見苦しいこと、この上ない。
だが、そんな雅耶の胸中を冬樹自身が知る由もなく。
冬樹は暫く不思議そうに雅耶を眺めていたが、視線をテーブルの上のサンドウィッチへと戻すと「本当、ありがたいよな…」と、しみじみ呟いた。
「…食べられそうか?」
「ああ。折角だし…頂くよ」
そうして、二人で遅めの昼食を取ることにした。
食事を終えて少しまったりした後、一応予定していた宿題に取り掛かろうとテーブルにノートを広げた。
「…お前、大丈夫か?無理しないで調子悪かったら休めよな」
冬樹はやはり本調子ではないのか、いつもより食も細かった。
本人は元気を装っているつもりなのだろうが、顔色や表情から調子が悪いのは一目瞭然だった。
「平気だよ。大したことじゃないんだ。原因も…分かってる…」
シャープペンシルをノートに走らせながら冬樹が言った。
「…原因?夏バテか何かか?…それとも風邪?」
「………」
冬樹は無言になると手を止めた。
ノート上に視線を置きながらも、何処か思い詰めたような…そんな表情を浮かべている。
「…冬樹?」
雅耶は心配になって、俯き加減の冬樹の顔を横から覗き込む様に声を掛けた。
すると、冬樹が顔を上げずにゆっくりと口を開いた。
「毎年…さ。この時期はいつも調子を崩しやすいんだ…」
「…この時期…?」
「ああ。それももう、八年越しになる…」
その言葉にやっと意味を理解して。
雅耶は、次の言葉が出て来なかった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
【完結】カワイイ子猫のつくり方
龍野ゆうき
青春
子猫を助けようとして樹から落下。それだけでも災難なのに、あれ?気が付いたら私…猫になってる!?そんな自分(猫)に手を差し伸べてくれたのは天敵のアイツだった。
無愛想毒舌眼鏡男と獣化主人公の間に生まれる恋?ちょっぴりファンタジーなラブコメ。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺と代われ!!Re青春
相間 暖人
青春
2025年、日本では国家主導で秘密裏に実験が行われる事になった。
昨今の少子化は国として存亡の危機にあると判断した政府は特別なバディ制度を実施する事により高校生の恋愛を活発にしようと計ったのだ。
今回はその一組の話をしよう。
冬の水葬
束原ミヤコ
青春
夕霧七瀬(ユウギリナナセ)は、一つ年上の幼なじみ、凪蓮水(ナギハスミ)が好き。
凪が高校生になってから疎遠になってしまっていたけれど、ずっと好きだった。
高校一年生になった夕霧は、凪と同じ高校に通えることを楽しみにしていた。
美術部の凪を追いかけて美術部に入り、気安い幼なじみの間柄に戻ることができたと思っていた――
けれど、そのときにはすでに、凪の心には消えない傷ができてしまっていた。
ある女性に捕らわれた凪と、それを追いかける夕霧の、繰り返す冬の話。
如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~
八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」
ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。
蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。
これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。
一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる