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隠された想いと真実
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海へ行った日から数日後。
雅耶は午前中の部活を終えた足で『Cafe & Bar ROCO』へと向かっていた。
今日は午前中からバイトに入ると冬樹から聞いている。午後三時には上がれるというので、その後一緒に宿題をやろうと、昨夜約束を取り付けたのだ。
場所は、そのまま『ROCO』でお茶しながらでも良いし、混んで来て迷惑になるようなら移動すればいいなどと色々と考えていたのだが…。
「えっ?休み…?ですか?」
「ああ。あいつ、朝店には普通に顔出したんだけど何か調子悪そうでさ。昨日も少し様子が変だったから、強引に熱計らせたんだよ。そしたら案の定…微熱があったんだ。だから、店長命令で無理させず帰した」
直純は腕を組みながら言った。
珍しく少し怒っているような感じだった。
「あいつは、無理し過ぎる傾向があるんだよな。責任感が強いのは良いことだけど、無茶は駄目だ、無茶は…」
だが、そう話す直純の表情は、冬樹のことを心底心配していると分かるもので。
雅耶は「そうですね」と相槌を打ちつつも、複雑な心境で聞いていた。
そんな雅耶の胸中を知ってか知らずか、直純は急に表情を切り替えると、雅耶に優しく微笑みかけて言った。
「約束…してたんだろ?冬樹のとこ、行くのか?」
「そう、ですね。様子を見て来ようかな」
雅耶がそう答えるや否や直純はにっこりと頷くと、カウンターの下から何かを取り出した。
「これ、お見舞いのサンドウィッチ。持ってってあげてくれないか?ちゃんと、お前の分も入ってるからさ。一緒に食事して、しっかりあいつに食べさせてやってくれよ」
そう言うと、軽くウインクをした。
店を出て、早速冬樹に連絡を入れてみようと携帯電話を取り出すと、いつの間に届いていたのか冬樹から一通のメールが入っていた。
雅耶がすぐにメールを開いてみると。
『野崎の家にいる』
そう一言だけ書いてあった。
(あいつ…具合が悪いのに、何で野崎の家なんかに行ったんだ…?)
あの家では、ゆっくり横になれる場所さえないだろうに。
雅耶は冬樹の状態が気になって、すぐに携帯をポケットにしまうと、足早に自宅の方へと向かった。
雅耶は午前中の部活を終えた足で『Cafe & Bar ROCO』へと向かっていた。
今日は午前中からバイトに入ると冬樹から聞いている。午後三時には上がれるというので、その後一緒に宿題をやろうと、昨夜約束を取り付けたのだ。
場所は、そのまま『ROCO』でお茶しながらでも良いし、混んで来て迷惑になるようなら移動すればいいなどと色々と考えていたのだが…。
「えっ?休み…?ですか?」
「ああ。あいつ、朝店には普通に顔出したんだけど何か調子悪そうでさ。昨日も少し様子が変だったから、強引に熱計らせたんだよ。そしたら案の定…微熱があったんだ。だから、店長命令で無理させず帰した」
直純は腕を組みながら言った。
珍しく少し怒っているような感じだった。
「あいつは、無理し過ぎる傾向があるんだよな。責任感が強いのは良いことだけど、無茶は駄目だ、無茶は…」
だが、そう話す直純の表情は、冬樹のことを心底心配していると分かるもので。
雅耶は「そうですね」と相槌を打ちつつも、複雑な心境で聞いていた。
そんな雅耶の胸中を知ってか知らずか、直純は急に表情を切り替えると、雅耶に優しく微笑みかけて言った。
「約束…してたんだろ?冬樹のとこ、行くのか?」
「そう、ですね。様子を見て来ようかな」
雅耶がそう答えるや否や直純はにっこりと頷くと、カウンターの下から何かを取り出した。
「これ、お見舞いのサンドウィッチ。持ってってあげてくれないか?ちゃんと、お前の分も入ってるからさ。一緒に食事して、しっかりあいつに食べさせてやってくれよ」
そう言うと、軽くウインクをした。
店を出て、早速冬樹に連絡を入れてみようと携帯電話を取り出すと、いつの間に届いていたのか冬樹から一通のメールが入っていた。
雅耶がすぐにメールを開いてみると。
『野崎の家にいる』
そう一言だけ書いてあった。
(あいつ…具合が悪いのに、何で野崎の家なんかに行ったんだ…?)
あの家では、ゆっくり横になれる場所さえないだろうに。
雅耶は冬樹の状態が気になって、すぐに携帯をポケットにしまうと、足早に自宅の方へと向かった。
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