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隠された想いと真実
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「おーいっ二人ともーっ!何やってたんだよー。捜してたんだぞーっ」
向こうから長瀬達が声を上げながら歩いて来る。
「昼メシ行こうぜっ、昼メシー!」
そう、遠くから手招きされ。
「おう!今行くっ」
雅耶は大きな声で答えると、冬樹を振り返った。
冬樹もそれに頷いて応えると、二人で皆のいる方へと足を向けた。
皆と合流すると、目ざとい長瀬が冬樹の様子を見て驚いた表情を見せる。
「あれー?何で冬樹チャン、ずぶ濡れなのよ?泳いで来たの?」
「え?でも、野崎泳げないって言ってなかったっけ?」
すかさず入ったツッコミに。
「いや…ホントは、海に入るつもりはなかったんだけど…」
冬樹が少し困ったように笑うのを見て雅耶は、さり気なくすぐに助け舟を出した。
「さっき、向こうで溺れて流されてる子どもがいてさ、二人で助けたんだよ。…なっ?」
笑顔で同意を求める雅耶は、言外に『それ以上のことは言わなくていい』と、言っているようだった。
「あ…あぁ」
冬樹がその言葉に頷くと、友人達は「おおーっ!やるじゃんっ」…と、二人を素直に称賛してくれた。
その後、友人達とたわいない話で盛り上がり、笑って歩いている冬樹を後方から見詰めながら、雅耶は何処か清々しい気持ちでいることに気付く。
今まで、ずっともやが掛かっていたものが、スッキリと晴れ渡ったような…そんな気持ちだった。
そして同時に、心の中にはある言葉が浮かんでいた。
俺がお前の、唯一の味方になってやる。
今なら、この言葉の意味が解る。
(きっと、直純先生は気付いていたんだ。冬樹のことを…)
先生が以前、『ROCO』の開店祝いの時に聞いてきた夏樹のことや、言っていた言葉の意味が今になってやっと理解出来た。
(やっぱり先生は流石だ…。冬樹の…『夏樹』の苦労を知っていたからこそ、冬樹にはあんなに親身になって接していたんだ)
だが…。
逆にそれを知ったら、直純に対しての複雑な対抗心は余計に強くなったような気がする。
先生は俺に、『お前があいつの、唯一の味方になってやれよ』と、言った。
それはある意味…自分に冬樹を託している様にも取れるのだが。
(そんなの、先生に言われるまでもない。俺がきっと、冬樹の笑顔を守り抜いて見せる)
雅耶は心に誓うのだった。
向こうから長瀬達が声を上げながら歩いて来る。
「昼メシ行こうぜっ、昼メシー!」
そう、遠くから手招きされ。
「おう!今行くっ」
雅耶は大きな声で答えると、冬樹を振り返った。
冬樹もそれに頷いて応えると、二人で皆のいる方へと足を向けた。
皆と合流すると、目ざとい長瀬が冬樹の様子を見て驚いた表情を見せる。
「あれー?何で冬樹チャン、ずぶ濡れなのよ?泳いで来たの?」
「え?でも、野崎泳げないって言ってなかったっけ?」
すかさず入ったツッコミに。
「いや…ホントは、海に入るつもりはなかったんだけど…」
冬樹が少し困ったように笑うのを見て雅耶は、さり気なくすぐに助け舟を出した。
「さっき、向こうで溺れて流されてる子どもがいてさ、二人で助けたんだよ。…なっ?」
笑顔で同意を求める雅耶は、言外に『それ以上のことは言わなくていい』と、言っているようだった。
「あ…あぁ」
冬樹がその言葉に頷くと、友人達は「おおーっ!やるじゃんっ」…と、二人を素直に称賛してくれた。
その後、友人達とたわいない話で盛り上がり、笑って歩いている冬樹を後方から見詰めながら、雅耶は何処か清々しい気持ちでいることに気付く。
今まで、ずっともやが掛かっていたものが、スッキリと晴れ渡ったような…そんな気持ちだった。
そして同時に、心の中にはある言葉が浮かんでいた。
俺がお前の、唯一の味方になってやる。
今なら、この言葉の意味が解る。
(きっと、直純先生は気付いていたんだ。冬樹のことを…)
先生が以前、『ROCO』の開店祝いの時に聞いてきた夏樹のことや、言っていた言葉の意味が今になってやっと理解出来た。
(やっぱり先生は流石だ…。冬樹の…『夏樹』の苦労を知っていたからこそ、冬樹にはあんなに親身になって接していたんだ)
だが…。
逆にそれを知ったら、直純に対しての複雑な対抗心は余計に強くなったような気がする。
先生は俺に、『お前があいつの、唯一の味方になってやれよ』と、言った。
それはある意味…自分に冬樹を託している様にも取れるのだが。
(そんなの、先生に言われるまでもない。俺がきっと、冬樹の笑顔を守り抜いて見せる)
雅耶は心に誓うのだった。
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