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隠された想いと真実
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「俺は別に、お前に対して何か理由があって優しくしている訳じゃない。…って言うか、敢えて優しく接しているつもりもないし。だから資格も何も関係ないんだ」
そう言って、雅耶はまた大人びた微笑みを見せた。
「それに…お前が『幼馴染み』だからとか、『野崎冬樹』だからとか…そんなのにこだわって友達やってる訳じゃない。それは、お前だって同じだろ?」
その言い回しに、冬樹は大きく瞳を見開いた。
雅耶は、そんな冬樹の反応にも特に気にする様子は見せずに言葉を続ける。
「確かに俺は、八年前…お前がいなくなってからもずっと昔を引きずっていて…。お前とまた会えた時、あの頃の自分達に戻れると思っていた。離れていた八年間を取り戻したいと思っていたんだ。でも、実際はそうじゃない。昔のことは昔のこと…。所詮、過去のことでしかないんだよ」
そこで雅耶は一旦言葉を区切ると、まっすぐに冬樹を見詰めて言った。
「今の俺達があるのは、お前が『お前』だったからだ。今のお前だから、俺はこうして隣に居るし、一緒に笑い合っていたいと思うんだよ」
優しい雅耶の瞳。
冬樹は、その言葉に衝撃を受けていた。
『今の俺達があるのは、お前が『お前』だったから…』
今の『オレ』?
冬樹として生きている、夏樹でも…いい、っていうこと…?
「きっと、あいつらだって同じだと思うぞ?」
そう言って後ろを振り返った雅耶の視線の先には長瀬達がいて、こちらに気付いたのか遠くから手を振っている。自分達を探しに来てくれたようだ。
「長瀬だってさ、そんなお前だからこそ…強引な手を使って誘ってまでも、一緒に遊びに来たかったんだと思うぜ?」
そう口にした後、「でも、一番冬樹と来たかったのは俺だけどな」…と、雅耶は悪戯っぽく笑った。
「…雅耶…」
(何で雅耶は…。そんなに簡単に、オレの欲しい言葉をくれるんだろう…)
冬樹は思わずまた涙が出そうになるが、仲間達がこちらに向かっている手前、懸命にこらえると。
「…ありがと…」
と、小さく呟いた。
(もしかしたら…。雅耶はオレが夏樹だと既に気が付いているのかも知れない。さっきのは、そういう言い回しだった…)
それを知った上で、それでも良いんだ…と。
今は、敢えて真実を聞かずに肯定してくれる、雅耶のその優しさが心にしみた。
そう言って、雅耶はまた大人びた微笑みを見せた。
「それに…お前が『幼馴染み』だからとか、『野崎冬樹』だからとか…そんなのにこだわって友達やってる訳じゃない。それは、お前だって同じだろ?」
その言い回しに、冬樹は大きく瞳を見開いた。
雅耶は、そんな冬樹の反応にも特に気にする様子は見せずに言葉を続ける。
「確かに俺は、八年前…お前がいなくなってからもずっと昔を引きずっていて…。お前とまた会えた時、あの頃の自分達に戻れると思っていた。離れていた八年間を取り戻したいと思っていたんだ。でも、実際はそうじゃない。昔のことは昔のこと…。所詮、過去のことでしかないんだよ」
そこで雅耶は一旦言葉を区切ると、まっすぐに冬樹を見詰めて言った。
「今の俺達があるのは、お前が『お前』だったからだ。今のお前だから、俺はこうして隣に居るし、一緒に笑い合っていたいと思うんだよ」
優しい雅耶の瞳。
冬樹は、その言葉に衝撃を受けていた。
『今の俺達があるのは、お前が『お前』だったから…』
今の『オレ』?
冬樹として生きている、夏樹でも…いい、っていうこと…?
「きっと、あいつらだって同じだと思うぞ?」
そう言って後ろを振り返った雅耶の視線の先には長瀬達がいて、こちらに気付いたのか遠くから手を振っている。自分達を探しに来てくれたようだ。
「長瀬だってさ、そんなお前だからこそ…強引な手を使って誘ってまでも、一緒に遊びに来たかったんだと思うぜ?」
そう口にした後、「でも、一番冬樹と来たかったのは俺だけどな」…と、雅耶は悪戯っぽく笑った。
「…雅耶…」
(何で雅耶は…。そんなに簡単に、オレの欲しい言葉をくれるんだろう…)
冬樹は思わずまた涙が出そうになるが、仲間達がこちらに向かっている手前、懸命にこらえると。
「…ありがと…」
と、小さく呟いた。
(もしかしたら…。雅耶はオレが夏樹だと既に気が付いているのかも知れない。さっきのは、そういう言い回しだった…)
それを知った上で、それでも良いんだ…と。
今は、敢えて真実を聞かずに肯定してくれる、雅耶のその優しさが心にしみた。
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