【完結】ツインクロス

龍野ゆうき

文字の大きさ
上 下
177 / 302
隠された想いと真実

14-7

しおりを挟む
「俺は別に、お前に対して何か理由があって優しくしている訳じゃない。…って言うか、敢えて優しく接しているつもりもないし。だから資格も何も関係ないんだ」
そう言って、雅耶はまた大人びた微笑みを見せた。
「それに…お前が『幼馴染み』だからとか、『野崎冬樹』だからとか…そんなのにこだわって友達やってる訳じゃない。それは、お前だって同じだろ?」
その言い回しに、冬樹は大きく瞳を見開いた。
雅耶は、そんな冬樹の反応にも特に気にする様子は見せずに言葉を続ける。
「確かに俺は、八年前…お前がいなくなってからもずっと昔を引きずっていて…。お前とまた会えた時、あの頃の自分達に戻れると思っていた。離れていた八年間を取り戻したいと思っていたんだ。でも、実際はそうじゃない。昔のことは昔のこと…。所詮、過去のことでしかないんだよ」

そこで雅耶は一旦言葉を区切ると、まっすぐに冬樹を見詰めて言った。
「今の俺達があるのは、お前が『お前』だったからだ。今のお前だから、俺はこうして隣に居るし、一緒に笑い合っていたいと思うんだよ」


優しい雅耶の瞳。
冬樹は、その言葉に衝撃を受けていた。

『今の俺達があるのは、お前が『お前』だったから…』

今の『オレ』?
冬樹として生きている、夏樹でも…いい、っていうこと…?

「きっと、あいつらだって同じだと思うぞ?」
そう言って後ろを振り返った雅耶の視線の先には長瀬達がいて、こちらに気付いたのか遠くから手を振っている。自分達を探しに来てくれたようだ。
「長瀬だってさ、そんなお前だからこそ…強引な手を使って誘ってまでも、一緒に遊びに来たかったんだと思うぜ?」
そう口にした後、「でも、一番冬樹と来たかったのは俺だけどな」…と、雅耶は悪戯っぽく笑った。
「…雅耶…」

(何で雅耶は…。そんなに簡単に、オレの欲しい言葉をくれるんだろう…)

冬樹は思わずまた涙が出そうになるが、仲間達がこちらに向かっている手前、懸命にこらえると。
「…ありがと…」
と、小さく呟いた。

(もしかしたら…。雅耶はオレが夏樹だと既に気が付いているのかも知れない。さっきのは、そういう言い回しだった…)

それを知った上で、それでも良いんだ…と。
今は、敢えて真実を聞かずに肯定してくれる、雅耶のその優しさが心にしみた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】カワイイ子猫のつくり方

龍野ゆうき
青春
子猫を助けようとして樹から落下。それだけでも災難なのに、あれ?気が付いたら私…猫になってる!?そんな自分(猫)に手を差し伸べてくれたのは天敵のアイツだった。 無愛想毒舌眼鏡男と獣化主人公の間に生まれる恋?ちょっぴりファンタジーなラブコメ。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。 なんと、彼女は学園のマドンナだった……! こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。 彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。 そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。 そして助けられた少女もまた……。 二人の青春、そして成長物語をご覧ください。 ※中盤から甘々にご注意を。 ※性描写ありは保険です。 他サイトにも掲載しております。

可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~

蒼田
青春
 人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。  目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。  しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。  事故から助けることで始まる活発少女との関係。  愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。  愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。  故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。 *本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。

『俺アレルギー』の抗体は、俺のことが好きな人にしか現れない?学園のアイドルから、幼馴染までノーマスク。その意味を俺は知らない

七星点灯
青春
 雨宮優(あまみや ゆう)は、世界でたった一つしかない奇病、『俺アレルギー』の根源となってしまった。  彼の周りにいる人間は、花粉症の様な症状に見舞われ、マスク無しではまともに会話できない。  しかし、マスクをつけずに彼とラクラク会話ができる女の子達がいる。幼馴染、クラスメイトのギャル、先輩などなど……。 彼女達はそう、彼のことが好きすぎて、身体が勝手に『俺アレルギー』の抗体を作ってしまったのだ!

ナースコール

wawabubu
青春
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...