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キミの幻影
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ひと通りの話はした。
『冬樹』が父親から何かを託されているらしいこと以外は…。
あの部屋の鍵のことについても、本当のところは実際よく分からないし、アイツらが話していた事として、雅耶には大まかに説明をした。
「えっ?それじゃあ、あの大倉って奴以外にもこの家に勝手に出入りしてる奴がいたってことかっ?そいつがそのデータを持ってるかも知れないってこと?」
雅耶は驚きの声を上げた。
冬樹は小さく頷くと、
「そういうことになるんだと思う。大倉がどの程度間を置いてこの家に来たのかは分からないけど、そんなに昔の話ではないんだと思うんだ。焦っているみたいだったし…」
そこまで言って、急に思い出した言葉があった。
(そういえば、暗闇の中で…。あいつは『命掛かってる』とか、言ってなかったか?)
アイツは誰かに命令されて動いていたんだろうか?
(暴力団が絡むような何かが、あの製薬会社にあるのか?)
だが、そこまでして必死に探さなければいけないデータの内容とは、いったい何なのだろうか?
(それが、お父さんの罪…?)
一瞬自分の思考に沈みかけていた冬樹だったが、雅耶の言葉に再び意識を引き戻した。
「…えっ?」
「いや、だからさ…前の時母さんが、『この家に何かの業者が来てる』って言ってたんだよ。作業着の人が入ってったって。そんな風に、しっかりカモフラージュしてんだろうなって」
「…そう、だったんだ…」
暗闇の中だったから、アイツがそんな恰好で家に入り込んでたとは知らなかった。
(でも、あんな…いかにもな強面のアイツが作業着って…。違和感アリアリな気がする…)
想像したら、少し可笑しかった。
「でも、その隠し扉を開けた人物っていうのが、アイツらとは別のグループだったとしても、こっそり人の家に入るような奴等なんだから、やっぱりろくな連中じゃないんだろうな」
そんな雅耶の言葉に。
「そう…だな…」
冬樹は気のない返事をすると、再び意識を己の中に沈ませた。
(でも、ふゆちゃんしか開けられない筈の扉を開けた人物って、いったい誰なんだろう…?)
どうやったら、当人じゃない者がそれを解除出来るものなんだろうか?
(あんな大掛かりな物が、そんなに簡単に破れる筈ない…)
装置の仕組みも調べてみる必要があるのかも知れない。
『冬樹』が父親から何かを託されているらしいこと以外は…。
あの部屋の鍵のことについても、本当のところは実際よく分からないし、アイツらが話していた事として、雅耶には大まかに説明をした。
「えっ?それじゃあ、あの大倉って奴以外にもこの家に勝手に出入りしてる奴がいたってことかっ?そいつがそのデータを持ってるかも知れないってこと?」
雅耶は驚きの声を上げた。
冬樹は小さく頷くと、
「そういうことになるんだと思う。大倉がどの程度間を置いてこの家に来たのかは分からないけど、そんなに昔の話ではないんだと思うんだ。焦っているみたいだったし…」
そこまで言って、急に思い出した言葉があった。
(そういえば、暗闇の中で…。あいつは『命掛かってる』とか、言ってなかったか?)
アイツは誰かに命令されて動いていたんだろうか?
(暴力団が絡むような何かが、あの製薬会社にあるのか?)
だが、そこまでして必死に探さなければいけないデータの内容とは、いったい何なのだろうか?
(それが、お父さんの罪…?)
一瞬自分の思考に沈みかけていた冬樹だったが、雅耶の言葉に再び意識を引き戻した。
「…えっ?」
「いや、だからさ…前の時母さんが、『この家に何かの業者が来てる』って言ってたんだよ。作業着の人が入ってったって。そんな風に、しっかりカモフラージュしてんだろうなって」
「…そう、だったんだ…」
暗闇の中だったから、アイツがそんな恰好で家に入り込んでたとは知らなかった。
(でも、あんな…いかにもな強面のアイツが作業着って…。違和感アリアリな気がする…)
想像したら、少し可笑しかった。
「でも、その隠し扉を開けた人物っていうのが、アイツらとは別のグループだったとしても、こっそり人の家に入るような奴等なんだから、やっぱりろくな連中じゃないんだろうな」
そんな雅耶の言葉に。
「そう…だな…」
冬樹は気のない返事をすると、再び意識を己の中に沈ませた。
(でも、ふゆちゃんしか開けられない筈の扉を開けた人物って、いったい誰なんだろう…?)
どうやったら、当人じゃない者がそれを解除出来るものなんだろうか?
(あんな大掛かりな物が、そんなに簡単に破れる筈ない…)
装置の仕組みも調べてみる必要があるのかも知れない。
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