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違和感の先にあるもの
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雅耶は自宅に帰ると、テスト勉強をする為机に向かっていた。
だが、ふと思い出して引き出しの奥に仕舞ってあった封筒を取り出した。封筒の中身は、以前長瀬に売りつけられた冬樹の写真4枚だ。
雅耶は写真をそっと取り出すと、順にめくってそれらを眺める。
(この写真を俺以外の何人の生徒達が持ってるんだろうな…)
今日、唯花に絡んだという上級生達も持っていたりするのだろうか?
そう思うと、何だか複雑だった。
4枚の中の、ひとつ。食堂に一緒にいた時の冬樹の写真に手を止める。長瀬が、清香姉との噂の真相を冬樹に直接聞いて、それに対して大笑いされた時の写真だ。
(この写真があるってことは、あの時にも何処かに写真部がいて、ちゃっかりカメラで狙ってたってことだよな…。ある意味、スゴイ部活魂だな…)
笑い過ぎて涙まで浮かべている、無邪気な冬樹の笑顔。
最近冬樹は、本当に笑顔を見せるようになった。
何より、感情を表に出せるようになったと思う。
入学して間もない頃は、いつだって人を寄せ付けないような無表情で、対応も無愛想だった。
(環境が変わったことで、冬樹も少しづつ変わって来れたんだろうけど…)
春休みに駅前で見掛けた時、転んで泣いている小さな子に優しく手を差し伸べて笑顔を向けていたことを考えると、敢えて無表情を装っていたのかも知れないとも思う。
「………」
雅耶は写真の中の冬樹をじっ…と見詰めながら、現在の冬樹の様子を思い浮かべていた。
(やっぱり今の冬樹は、昔の夏樹とかぶる…気がする…)
冬樹だって元気で明るくて優しい奴だった。
基本的なところは、本当に二人ともよく似ているのだ。
だが、冬樹は兄として夏樹を本当に大事にしていたから。どちらかというと、冷静に周囲を観察出来る奴で、夏樹の気持ちも行動も本当に良く理解していて。いつでも夏樹の一歩後ろで笑って見守っている…そんな奴だった。
だが、今は…。
(見守るべき存在の夏樹がいなくなったことで、本来の冬樹が出て来た…っていうことなのかも知れないな…)
多少の違和感を感じながらも。
やっぱり双子の二人は、よく似ている…ということなのだろうと雅耶は考えるに至ったのだった。
だが、ふと思い出して引き出しの奥に仕舞ってあった封筒を取り出した。封筒の中身は、以前長瀬に売りつけられた冬樹の写真4枚だ。
雅耶は写真をそっと取り出すと、順にめくってそれらを眺める。
(この写真を俺以外の何人の生徒達が持ってるんだろうな…)
今日、唯花に絡んだという上級生達も持っていたりするのだろうか?
そう思うと、何だか複雑だった。
4枚の中の、ひとつ。食堂に一緒にいた時の冬樹の写真に手を止める。長瀬が、清香姉との噂の真相を冬樹に直接聞いて、それに対して大笑いされた時の写真だ。
(この写真があるってことは、あの時にも何処かに写真部がいて、ちゃっかりカメラで狙ってたってことだよな…。ある意味、スゴイ部活魂だな…)
笑い過ぎて涙まで浮かべている、無邪気な冬樹の笑顔。
最近冬樹は、本当に笑顔を見せるようになった。
何より、感情を表に出せるようになったと思う。
入学して間もない頃は、いつだって人を寄せ付けないような無表情で、対応も無愛想だった。
(環境が変わったことで、冬樹も少しづつ変わって来れたんだろうけど…)
春休みに駅前で見掛けた時、転んで泣いている小さな子に優しく手を差し伸べて笑顔を向けていたことを考えると、敢えて無表情を装っていたのかも知れないとも思う。
「………」
雅耶は写真の中の冬樹をじっ…と見詰めながら、現在の冬樹の様子を思い浮かべていた。
(やっぱり今の冬樹は、昔の夏樹とかぶる…気がする…)
冬樹だって元気で明るくて優しい奴だった。
基本的なところは、本当に二人ともよく似ているのだ。
だが、冬樹は兄として夏樹を本当に大事にしていたから。どちらかというと、冷静に周囲を観察出来る奴で、夏樹の気持ちも行動も本当に良く理解していて。いつでも夏樹の一歩後ろで笑って見守っている…そんな奴だった。
だが、今は…。
(見守るべき存在の夏樹がいなくなったことで、本来の冬樹が出て来た…っていうことなのかも知れないな…)
多少の違和感を感じながらも。
やっぱり双子の二人は、よく似ている…ということなのだろうと雅耶は考えるに至ったのだった。
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