【完結】ツインクロス

龍野ゆうき

文字の大きさ
上 下
105 / 302
恋は突然に…

8-8

しおりを挟む
最近クラス内では、もっぱら雅耶の彼女の話題で持ちきりだった。

昼休みになり、いつも通り仲間達と集団で食堂へと向かうその時でさえも、皆話題は同じようなことばかりだった。
(流石に私立の女子高ともなると、男達の憧れ…とかなんだろうけど…。でも、ここまで皆目の色変えちゃうもんなんだな。…確かに制服可愛かったけど…)
冬樹は冷静にクラスメイト達を傍観していた。

「ねぇ、合コンやるとしたら冬樹チャンも勿論行くっしょ?」
嬉々として話してくる長瀬に、冬樹はオムライスをつつきながら首を振った。
「いや、オレはそういうのはいいよ」
「へっ?何でっ?」
同じテーブルに座っていた仲間達も不思議そうに、そんな冬樹に注目する。
斜め前の席に座っていた雅耶も、冬樹に視線を移した。
「オレ、基本的に殆どバイト入ってるし。だから時間的に難しいっていうのもあるけど…。もともとそーいうの苦手なんだ」
(何しろオレ自身女だし…。興味も何もないってーの)
これは言えないけれど。

それに…冬樹が何故、敢えて危険度が増す男子校を選んだのかというと、その理由が『女子がいないから』…だった。
同年代の女子を見ているのが辛くて、逃げたのだ。
おしゃれや可愛いものの話。好きな男の子のことや美味しいスイーツの話。そんなことで盛り上がっている、ふわふわキラキラした同年代の女の子達を見ていられなかった。関わりたくなかったのだ。
『もしも、ふゆちゃんがいて。自分が夏樹のままだったなら…?』
そんなことを少しでも考えてしまう自分が許せなかった。
彼女達の中に『夏樹』の影がチラつくのが苦痛だった。
それに、自分が成り得ない可愛い女の子に、恥じらい、色目を使って告白なんかされた日には、たまったものではない。
そんな思いを中学時代に何度か経験した冬樹は、苦痛から逃げるように男子校を選んだ。
後ろめたさと、ほんの少しの憧れを断ち切るように…。

「ヒューヒュー♪冬樹チャン硬派ーっ!…ってか、バイトなんかしてんのっ?そんなに毎日っ?」
長瀬が意外とでも言うように、驚いている。
「ああ、ほぼ毎日かな…。だってオレ、苦学生だから」
冬樹はそう言って鮮やかに笑うと、話は終わったとでも言うように、スプーンにすくったオムライスへと意識を向けた。

((…えっ…?苦学生?))

思わぬ言葉を、あまりにサラッと、あまりに鮮やかに笑いながら冬樹が口にしたので、誰もが気になりながらもその話題に触れることが出来ず、そこはそのままスルーされたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

秘密のキス

廣瀬純一
青春
キスで体が入れ替わる高校生の男女の話

青天のヘキレキ

ましら佳
青春
⌘ 青天のヘキレキ 高校の保健養護教諭である金沢環《かなざわたまき》。 上司にも同僚にも生徒からも精神的にどつき回される生活。 思わぬ事故に巻き込まれ、修学旅行の引率先の沼に落ちて神将・毘沙門天の手違いで、問題児である生徒と入れ替わってしまう。 可愛い女子とイケメン男子ではなく、オバちゃんと問題児の中身の取り違えで、ギャップの大きい生活に戸惑い、落としどころを探って行く。 お互いの抱えている問題に、否応なく向き合って行くが・・・・。 出会いは化学変化。 いわゆる“入れ替わり”系のお話を一度書いてみたくて考えたものです。 お楽しみいただけますように。 他コンテンツにも掲載中です。

榛名の園

ひかり企画
青春
荒れた14歳から17歳位までの、女子少年院経験記など、あたしの自伝小説を書いて見ました。

親友がリア充でモテまくりです。非リアの俺には気持ちが分からない

かがみもち
青春
同じ学年。 同じ年齢。 なのに、俺と親友で、なんでこんなによって来る人が違うんだ?! 俺、高橋敦志(たかはしあつし)は、高校で出会った親友・山内裕太(やまうちゆうた)と学校でもプライベートでも一緒に過ごしている。 のに、彼は、モテまくりで、机に集まるのは、成績優秀の美男美女。 対して、俺は、バカのフツメンかブサメンしか男女共に集まってこない! そして、友情を更に作る可愛い系男子・三石遼太郎(みいしりょうたろう)と、3人で共に、友情とは、青春とは、何なのかを時にぶつかりながら探す、時にほっこり、時に熱い友情青春物語。           ※※※ 驟雨(@Rainshower0705)さんが、表紙、挿絵を描いてくれました。 「ソウルエクスキューター」という漫画をアルファポリスで描いてらっしゃるので是非一度ご覧ください!           ※※※ ノベルアップ+様でも投稿しております。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

Toward a dream 〜とあるお嬢様の挑戦〜

green
青春
一ノ瀬財閥の令嬢、一ノ瀬綾乃は小学校一年生からサッカーを始め、プロサッカー選手になることを夢見ている。 しかし、父である浩平にその夢を反対される。 夢を諦めきれない綾乃は浩平に言う。 「その夢に挑戦するためのお時間をいただけないでしょうか?」 一人のお嬢様の挑戦が始まる。

処理中です...