102 / 302
恋は突然に…
8-5
しおりを挟む
冬樹はベッドに伏せた状態から仰向けに体勢を変えると、目の前にある白い天井をぼんやりと眺めた。
雅耶の優しさは、正直嬉しい…と思う。
でも…その優しさに甘えていると、何だか『冬樹』でいられなくなってしまうような気がするのは何故なんだろう…。
昔から変わらない、人懐っこい笑顔。
自分を真っ直ぐに見詰めてくる優しい瞳。
隣にいると安心する、空気感。
そして…。
ピンチの時には助けに来てくれる、頼もしい幼馴染。
(…今日のは、たまたま運が良かっただけだけど…)
でも、雅耶があのタイミングで来てくれなかったら、自分はどうなっていたか分からなかった。
あの男は『殺しはしない』…とは言っていたけれど、何の情報も持たないと判った時点で、何をされるか分からない。
それ位、あの男からはどこか危険な『臭い』がした。
だから、今日は本当に雅耶に命を救われたと言っても良いだろう。
(前に…西田さんに絡む上級生達に掴まった時も、突然雅耶が助けに入ってくれたんだよな…)
もう駄目だと思った瞬間、突然目の前に現れた広い背中に驚いた。
あのゴツイ上級生にも力負けしていなかった雅耶。
そして、言葉は丁寧なのに相手を怯ませる程の鋭い気迫で…。
妙に雅耶が大きく見えたのを覚えている。
(あの時も…。倒れたオレを、雅耶が保健室まで抱えて運んでくれたんだっけ…)
そんなことをぼんやりと思い返していた時。
突然…昼間雅耶に横抱きに抱え上げられた時の光景が、冬樹の脳裏をかすめていった。
自分とは違う…Tシャツの袖から伸びる逞しい腕に、軽々と抱え上げられた時の、その雅耶の力強さと。抱き留めるその腕には、自分の身体を気遣うような優しさも感じられて。
その時の雅耶と自分との距離の近さを改めて思い起こしてしまった冬樹は、突然ガバッ…と飛び起きた。
「……っ…!」
咄嗟に左手で口元を押さえる。
妙に心臓がドキドキ…と、音を立てていた。
いつもよりも早いリズムを刻む、その自分の胸にそっと右手を押し当てると。
「な…何だって…いうんだよ…。そんな…今更……だろ…?」
冬樹は、思わず行き着いてしまった自分自身の気持ちの答えに驚きを隠せなかった。
暫く呆然としていたが、不意に部屋の中の暑苦しさを感じて、冬樹はベッドから降りると窓を開けた。
「………」
窓を開け放っても外の空気は蒸し暑く、熱を持った頬を冷やす事は出来なかった。
雅耶の優しさは、正直嬉しい…と思う。
でも…その優しさに甘えていると、何だか『冬樹』でいられなくなってしまうような気がするのは何故なんだろう…。
昔から変わらない、人懐っこい笑顔。
自分を真っ直ぐに見詰めてくる優しい瞳。
隣にいると安心する、空気感。
そして…。
ピンチの時には助けに来てくれる、頼もしい幼馴染。
(…今日のは、たまたま運が良かっただけだけど…)
でも、雅耶があのタイミングで来てくれなかったら、自分はどうなっていたか分からなかった。
あの男は『殺しはしない』…とは言っていたけれど、何の情報も持たないと判った時点で、何をされるか分からない。
それ位、あの男からはどこか危険な『臭い』がした。
だから、今日は本当に雅耶に命を救われたと言っても良いだろう。
(前に…西田さんに絡む上級生達に掴まった時も、突然雅耶が助けに入ってくれたんだよな…)
もう駄目だと思った瞬間、突然目の前に現れた広い背中に驚いた。
あのゴツイ上級生にも力負けしていなかった雅耶。
そして、言葉は丁寧なのに相手を怯ませる程の鋭い気迫で…。
妙に雅耶が大きく見えたのを覚えている。
(あの時も…。倒れたオレを、雅耶が保健室まで抱えて運んでくれたんだっけ…)
そんなことをぼんやりと思い返していた時。
突然…昼間雅耶に横抱きに抱え上げられた時の光景が、冬樹の脳裏をかすめていった。
自分とは違う…Tシャツの袖から伸びる逞しい腕に、軽々と抱え上げられた時の、その雅耶の力強さと。抱き留めるその腕には、自分の身体を気遣うような優しさも感じられて。
その時の雅耶と自分との距離の近さを改めて思い起こしてしまった冬樹は、突然ガバッ…と飛び起きた。
「……っ…!」
咄嗟に左手で口元を押さえる。
妙に心臓がドキドキ…と、音を立てていた。
いつもよりも早いリズムを刻む、その自分の胸にそっと右手を押し当てると。
「な…何だって…いうんだよ…。そんな…今更……だろ…?」
冬樹は、思わず行き着いてしまった自分自身の気持ちの答えに驚きを隠せなかった。
暫く呆然としていたが、不意に部屋の中の暑苦しさを感じて、冬樹はベッドから降りると窓を開けた。
「………」
窓を開け放っても外の空気は蒸し暑く、熱を持った頬を冷やす事は出来なかった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
【完結】カワイイ子猫のつくり方
龍野ゆうき
青春
子猫を助けようとして樹から落下。それだけでも災難なのに、あれ?気が付いたら私…猫になってる!?そんな自分(猫)に手を差し伸べてくれたのは天敵のアイツだった。
無愛想毒舌眼鏡男と獣化主人公の間に生まれる恋?ちょっぴりファンタジーなラブコメ。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

M性に目覚めた若かりしころの思い出
kazu106
青春
わたし自身が生涯の性癖として持ち合わせるM性について、それをはじめて自覚した中学時代の体験になります。歳を重ねた者の、人生の回顧録のひとつとして、読んでいただけましたら幸いです。
一部、フィクションも交えながら、述べさせていただいてます。フィクション/ノンフィクションの境界は、読んでくださった方の想像におまかせいたします。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

義姉妹百合恋愛
沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。
「再婚するから」
そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。
次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。
それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。
※他サイトにも掲載しております
【完結】君への祈りが届くとき
remo
青春
私は秘密を抱えている。
深夜1時43分。震えるスマートフォンの相手は、ふいに姿を消した学校の有名人。
彼の声は私の心臓を鷲掴みにする。
ただ愛しい。あなたがそこにいてくれるだけで。
あなたの思う電話の相手が、私ではないとしても。
彼を想うと、胸の奥がヒリヒリする。
【完結】ホウケンオプティミズム
高城蓉理
青春
【第13回ドリーム小説大賞奨励賞ありがとうございました】
天沢桃佳は不純な動機で知的財産権管理技能士を目指す法学部の2年生。桃佳は日々一人で黙々と勉強をしていたのだが、ある日学内で【ホウケン、部員募集】のビラを手にする。
【ホウケン】を法曹研究会と拡大解釈した桃佳は、ホウケン顧問の大森先生に入部を直談判。しかし大森先生が桃佳を連れて行った部室は、まさかのホウケン違いの【放送研究会】だった!!
全国大会で上位入賞を果たしたら、大森先生と知財法のマンツーマン授業というエサに釣られ、桃佳はことの成り行きで放研へ入部することに。
果たして桃佳は12月の本選に進むことは叶うのか?桃佳の努力の日々が始まる!
【主な登場人物】
天沢 桃佳(19)
知的財産権の大森先生に淡い恋心を寄せている、S大学法学部の2年生。
不純な理由ではあるが、本気で将来は知的財産管理技能士を目指している。
法曹研究会と間違えて、放送研究会の門を叩いてしまった。全国放送コンテストに朗読部門でエントリーすることになる。
大森先生
S大法学部専任講師で放研OBで顧問
専門は知的財産法全般、著作権法、意匠法
桃佳を唆した張本人。
高輪先輩(20)
S大学理工学部の3年生
映像制作の腕はプロ並み。
蒲田 有紗(18)
S大理工学部の1年生
将来の夢はアナウンサーでダンス部と掛け持ちしている。
田町先輩(20)
S大学法学部の3年生
桃佳にノートを借りるフル単と縁のない男。実は高校時代にアナウンスコンテストを総ナメにしていた。
※イラスト いーりす様@studio_iris
※改題し小説家になろうにも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる