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忍び寄る影
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靴を脱いで道場に入ると、身内の応援に来ている者や見物人が多く、周囲は人で溢れていた。
(すごい熱気だ…)
コートは二面あって、両方で試合を進めているようだった。
(直純先生と雅耶は何処だろう…)
冬樹は入口に立ち尽くしながら、周囲を見渡していた。
すると…。
「よっ冬樹。来てくれたんだなっ」
直純先生が、人の合間を縫って奥から出てきた。
「先生…」
遠くから冬樹に気付いて、わざわざ迎えに来てくれたようだ。
冬樹が「こんにちは」…と頭を下げると、直純は「お疲れ」と笑顔を見せた。
「こっちだよ、冬樹。ついておいで」
直純が手招きをして歩き出したので、後をついて行く。
人の合間を縫って進みながらも、直純はゆっくり振り返って冬樹を待ってくれる。
少し空いている場所に出ると、笑顔で口を開いた。
「丁度良かったよ。もうすぐ雅耶の試合が始まるんだ。あいつ、次勝てば決勝進出なんだよ」
そうして先生が目で示した先に、やっと雅耶の姿を見つけた。
コートを挟んで向かい側に待機している。
(雅耶…。緊張…してるのかな…)
いつもの柔らかい雅耶のイメージとは全然違う気がした。
(いや、集中…してるんだ…)
遠くから見ていても分かる気迫。
初めて見る、雅耶の一面。
冬樹が、じっと雅耶を眺めている様子を直純は微笑んで見ていた。
「凄い気迫を感じるだろ?あいつ、最近調子いいんだ。次の相手も強いけど、お互い十分優勝狙える実力は持ってるからな。良い試合になるんじゃないかな」
直純が腕を組みながら言った。
(先生も…嬉しそうだな。教え子の成長が嬉しいんだろうな…)
冬樹は直純の様子を横から見上げていたが、「あ、始まるぞ」という直純の声に、視線をコートへと移した。
試合は、始まりの合図と同時に目が離せない、鬼気迫るものがあった。
(…すごい…)
こんなに間近で、本格的な試合を見たことがなかった冬樹は圧倒されっぱなしだった。
(雅耶…)
いつも人懐っこい笑顔を浮かべている雅耶の…真剣な眼差し。
背がある分、手足が長く…その迫力や力強さは半端ない。
見せ掛けだけの自分とは違う、雅耶の『男らしさ』を目の当たりにしてしまった気がして…。
それに衝撃を受けている自分に、冬樹は動揺していた。
(すごい熱気だ…)
コートは二面あって、両方で試合を進めているようだった。
(直純先生と雅耶は何処だろう…)
冬樹は入口に立ち尽くしながら、周囲を見渡していた。
すると…。
「よっ冬樹。来てくれたんだなっ」
直純先生が、人の合間を縫って奥から出てきた。
「先生…」
遠くから冬樹に気付いて、わざわざ迎えに来てくれたようだ。
冬樹が「こんにちは」…と頭を下げると、直純は「お疲れ」と笑顔を見せた。
「こっちだよ、冬樹。ついておいで」
直純が手招きをして歩き出したので、後をついて行く。
人の合間を縫って進みながらも、直純はゆっくり振り返って冬樹を待ってくれる。
少し空いている場所に出ると、笑顔で口を開いた。
「丁度良かったよ。もうすぐ雅耶の試合が始まるんだ。あいつ、次勝てば決勝進出なんだよ」
そうして先生が目で示した先に、やっと雅耶の姿を見つけた。
コートを挟んで向かい側に待機している。
(雅耶…。緊張…してるのかな…)
いつもの柔らかい雅耶のイメージとは全然違う気がした。
(いや、集中…してるんだ…)
遠くから見ていても分かる気迫。
初めて見る、雅耶の一面。
冬樹が、じっと雅耶を眺めている様子を直純は微笑んで見ていた。
「凄い気迫を感じるだろ?あいつ、最近調子いいんだ。次の相手も強いけど、お互い十分優勝狙える実力は持ってるからな。良い試合になるんじゃないかな」
直純が腕を組みながら言った。
(先生も…嬉しそうだな。教え子の成長が嬉しいんだろうな…)
冬樹は直純の様子を横から見上げていたが、「あ、始まるぞ」という直純の声に、視線をコートへと移した。
試合は、始まりの合図と同時に目が離せない、鬼気迫るものがあった。
(…すごい…)
こんなに間近で、本格的な試合を見たことがなかった冬樹は圧倒されっぱなしだった。
(雅耶…)
いつも人懐っこい笑顔を浮かべている雅耶の…真剣な眼差し。
背がある分、手足が長く…その迫力や力強さは半端ない。
見せ掛けだけの自分とは違う、雅耶の『男らしさ』を目の当たりにしてしまった気がして…。
それに衝撃を受けている自分に、冬樹は動揺していた。
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