【完結】ツインクロス

龍野ゆうき

文字の大きさ
上 下
82 / 302
禁断の恋?

6-12

しおりを挟む
自分の思考に驚きながらも、長瀬にも他の男にもこの写真を渡したくはなくて。

「…分かったよ」

俺はポケットから財布を取り出すと、
「ほら…これでいいんだろ?」
そう言って、長瀬のトレーの上に小銭を落とした。
「はーい♪毎度ありー」
長瀬は封筒に三枚の写真を入れると、俺に渡してきた。

その時。
「あっ…まだいたんだ。良かった…」
そう言って、冬樹が俺達のテーブルへとトレーを持ってやって来たので、二人して慌てて何事も無かったかのように平静を装った。

胸ポケットにしまった封筒が妙に重く感じ。
俺の中には、後ろめたさだけが重く圧し掛かっていた。



「冬樹…保健室の用事はもう済んだのか?」

皆に後れを取ってしまったので、少し急ぎながら昼食に手を付け始めると、雅耶が控えめに聞いてきた。
「ああ。別に大した用事じゃないし、すぐに済んだよ」
そう言うと、何処かよそよそしい雰囲気で「そうか…」と返された。
珍しく視線も合わせない。

(雅耶…?)

どうしたんだ…?
雅耶は何だか元気がない様子で、逆に隣にいる長瀬はこっちを見ながら妙にニコニコしている。
(二人とも、違和感アリアリなんだけど…)
「…どうした?二人とも何かあったのか…?」
二人の変な空気に疑問を持って冬樹が聞くと、二人は顔を見合わせて、
「そっ…そんなことないよなっ?」
「別に…なーっ?」
口を合わせてそう言うと、肘でお互いを小突き合いながら笑っている。
「…変な二人…」
(喧嘩でもしたのかな…?)
冬樹は首を傾げると、とりあえず食べる方に集中した。
何だかんだやってても、この二人は凄く仲が良いので問題はないだろうから。

暫くすると、長瀬が「ねーねー冬樹チャン」と、話しかけて来た。
長瀬は何故か自分のことを「ちゃん」付けで呼んでくる。前々から「『ちゃん』はやめろ」と言っているのだが、「いーじゃないのー」…と流されてしまい、今では既に諦めモードだった。ただ長瀬の場合は、他の奴に対しても割とそういうノリなので、まあ善しとする。
「最近、保健の清香先生と仲良いよねー?」
唐突な話題だな…と、思いつつも、隣で何故か慌てて長瀬を再び肘で小突いてる雅耶が目に入って、首を傾げる。
「…え?確かに色々世話にはなってるけど…。別に普通だろ…?」
語尾を雅耶に振ると、雅耶はイマイチ不自然な笑顔で「そ…そうだよな?」と、相槌を打っている。

(なんだ…?やっぱり何か変だな…)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】眠り姫は夜を彷徨う

龍野ゆうき
青春
夜を支配する多数のグループが存在する治安の悪い街に、ふらりと現れる『掃除屋』の異名を持つ人物。悪行を阻止するその人物の正体は、実は『夢遊病』を患う少女だった?! 今夜も少女は己の知らぬところで夜な夜な街へと繰り出す。悪を殲滅する為に…

【完結】Amnesia(アムネシア)~カフェ「時遊館」に現れた美しい青年は記憶を失っていた~

紫紺
ミステリー
郊外の人気カフェ、『時游館』のマスター航留は、ある日美しい青年と出会う。彼は自分が誰かも全て忘れてしまう記憶喪失を患っていた。 行きがかり上、面倒を見ることになったのが……。 ※「Amnesia」は医学用語で、一般的には「記憶喪失」のことを指します。

【R15】アリア・ルージュの妄信

皐月うしこ
ミステリー
その日、白濁の中で少女は死んだ。 異質な匂いに包まれて、全身を粘着質な白い液体に覆われて、乱れた着衣が物語る悲惨な光景を何と表現すればいいのだろう。世界は日常に溢れている。何気ない会話、変わらない秒針、規則正しく進む人波。それでもここに、雲が形を変えるように、ガラスが粉々に砕けるように、一輪の花が小さな種を産んだ。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

ヤマネ姫の幸福論

ふくろう
青春
秋の長野行き中央本線、特急あずさの座席に座る一組の男女。 一見、恋人同士に見えるが、これが最初で最後の二人の旅行になるかもしれない。 彼らは霧ヶ峰高原に、「森の妖精」と呼ばれる小動物の棲み家を訪ね、夢のように楽しい二日間を過ごす。 しかし、運命の時は、刻一刻と迫っていた。 主人公達の恋の行方、霧ヶ峰の生き物のお話に添えて、世界中で愛されてきた好編「幸福論」を交え、お読みいただける方に、少しでも清々しく、優しい気持ちになっていただけますよう、精一杯、書いてます! どうぞ、よろしくお願いいたします!

金色の庭を越えて。

碧野葉菜
青春
大物政治家の娘、才色兼備な岸本あゆら。その輝かしい青春時代は、有名外科医の息子、帝清志郎のショッキングな場面に遭遇したことで砕け散る。 人生の岐路に立たされたあゆらに味方をしたのは、極道の息子、野間口志鬼だった。 親友の無念を晴らすため捜査に乗り出す二人だが、清志郎の背景には恐るべき闇の壁があった——。 軽薄そうに見え一途で逞しい志鬼と、気が強いが品性溢れる優しいあゆら。二人は身分の差を越え強く惹かれ合うが… 親が与える子への影響、思春期の歪み。 汚れた大人に挑む、少年少女の青春サスペンスラブストーリー。

赤い部屋

山根利広
ホラー
YouTubeの動画広告の中に、「決してスキップしてはいけない」広告があるという。 真っ赤な背景に「あなたは好きですか?」と書かれたその広告をスキップすると、死ぬと言われている。 東京都内のある高校でも、「赤い部屋」の噂がひとり歩きしていた。 そんな中、2年生の天根凛花は「赤い部屋」の内容が自分のみた夢の内容そっくりであることに気づく。 が、クラスメイトの黒河内莉子は、噂話を一蹴し、誰かの作り話だと言う。 だが、「呪い」は実在した。 「赤い部屋」の手によって残酷な死に方をする犠牲者が、続々現れる。 凛花と莉子は、死の連鎖に歯止めをかけるため、「解決策」を見出そうとする。 そんな中、凛花のスマートフォンにも「あなたは好きですか?」という広告が表示されてしまう。 「赤い部屋」から逃れる方法はあるのか? 誰がこの「呪い」を生み出したのか? そして彼らはなぜ、呪われたのか? 徐々に明かされる「赤い部屋」の真相。 その先にふたりが見たものは——。

静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。 なんと、彼女は学園のマドンナだった……! こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。 彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。 そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。 そして助けられた少女もまた……。 二人の青春、そして成長物語をご覧ください。 ※中盤から甘々にご注意を。 ※性描写ありは保険です。 他サイトにも掲載しております。

処理中です...