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禁断の恋?
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(清香先生は偉大だ…)
彼女という存在のおかげで、自分が少しづつ変わっていっているという自覚はある。
(雅耶とも、変に気負いせずに話せるようにもなったし…)
アルバイトでの『スマイル』練習にも少しずつだが繋がっていっていると思う。
兄のことを忘れることはないけれど…。
それでも、以前より気持ちの面でとても救われているのは確かだった。
冬樹は食事を終えると、一人手を合わせて自分の中で「ごちそうさま」をした。
もうすぐ授業開始5分前の予鈴が鳴る。
(急いで教室に戻らないと…)
そう思っていたのだが、不意に『カシャ』という小さな音がして、冬樹は思わず後ろを振り返った。
「………?」
だが、周囲を見回してみても特に変わった様子はなく、食堂内でももう僅かな生徒が残って食事や談笑をしているだけだった。
(何の音だろ…。気のせいかな…?)
冬樹は不思議に思いながらもゆっくりと席を立つが、そこでとうとう予鈴が鳴り始めたので、慌てて食器の乗ったトレーを片付け、足早に食堂を後にしたのだった。
そんな冬樹の様子を遠目に眺めながら…。
一人、こっそりほくそ笑んでいた生徒がいたことに、誰も気付くことはなかった。
数日後…ある放課後。
「よーし。もう今日はあがっていいぞ」
二年生の先輩の掛け声で、今日の空手部は珍しく早めに終わった。三年生が学年行事で不在で、顧問の教師も今日は部活に出てこられない為、各自で自主練後、早めの解散となったのだった。
雅耶は同じ空手部仲間と着替えを済ませ、わいわいと話しながら昇降口に差し掛かった。
すると、そこで意外な人物と鉢合わせた。
「あれ…?冬樹…?」
「あ…雅耶…」
いくら早めに部活が終わったと言っても、帰宅部の冬樹がこの時間まで学校にいるのは珍しい。
「どうしたんだよ?こんな時間まで…。何かあったのか?」
つくづく、冬樹にはこんな質問ばかりしているな…と、自分でも思いながらも、気になって雅耶は尋ねた。
「ああ…。カウンセリングにちょっと…な…」
「カウンセリング?…って、清香姉のとこ?」
「ああ…うん…」
冬樹は少しバツが悪そうに、視線を外した。
(冬樹…?)
雅耶はそれが何となく引っ掛かってしまい、じっと冬樹を見つめる。
彼女という存在のおかげで、自分が少しづつ変わっていっているという自覚はある。
(雅耶とも、変に気負いせずに話せるようにもなったし…)
アルバイトでの『スマイル』練習にも少しずつだが繋がっていっていると思う。
兄のことを忘れることはないけれど…。
それでも、以前より気持ちの面でとても救われているのは確かだった。
冬樹は食事を終えると、一人手を合わせて自分の中で「ごちそうさま」をした。
もうすぐ授業開始5分前の予鈴が鳴る。
(急いで教室に戻らないと…)
そう思っていたのだが、不意に『カシャ』という小さな音がして、冬樹は思わず後ろを振り返った。
「………?」
だが、周囲を見回してみても特に変わった様子はなく、食堂内でももう僅かな生徒が残って食事や談笑をしているだけだった。
(何の音だろ…。気のせいかな…?)
冬樹は不思議に思いながらもゆっくりと席を立つが、そこでとうとう予鈴が鳴り始めたので、慌てて食器の乗ったトレーを片付け、足早に食堂を後にしたのだった。
そんな冬樹の様子を遠目に眺めながら…。
一人、こっそりほくそ笑んでいた生徒がいたことに、誰も気付くことはなかった。
数日後…ある放課後。
「よーし。もう今日はあがっていいぞ」
二年生の先輩の掛け声で、今日の空手部は珍しく早めに終わった。三年生が学年行事で不在で、顧問の教師も今日は部活に出てこられない為、各自で自主練後、早めの解散となったのだった。
雅耶は同じ空手部仲間と着替えを済ませ、わいわいと話しながら昇降口に差し掛かった。
すると、そこで意外な人物と鉢合わせた。
「あれ…?冬樹…?」
「あ…雅耶…」
いくら早めに部活が終わったと言っても、帰宅部の冬樹がこの時間まで学校にいるのは珍しい。
「どうしたんだよ?こんな時間まで…。何かあったのか?」
つくづく、冬樹にはこんな質問ばかりしているな…と、自分でも思いながらも、気になって雅耶は尋ねた。
「ああ…。カウンセリングにちょっと…な…」
「カウンセリング?…って、清香姉のとこ?」
「ああ…うん…」
冬樹は少しバツが悪そうに、視線を外した。
(冬樹…?)
雅耶はそれが何となく引っ掛かってしまい、じっと冬樹を見つめる。
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