50 / 302
足りないもの
4-1
しおりを挟む
「カンパーイ♪開店おめでとうございまーすっ!!」
落ち着いた色合いのお洒落な店内には多くの人が集まり、賑やかな盛り上がりを見せていた。
『Cafe & Bar ROCO』は、本日開店。店頭には多くのお祝いの花が飾られ、午後6時からは貸し切りで、知り合いばかりが集まってパーティーが開催されていた。この店のマスターである直純の親類、友人、ご近所関係、空手関係など様々な顔ぶれが揃っている。
直純は店内のテーブルを丁寧に挨拶して回り、その所々で乾杯やお酌をしては盛り上がり、話しに花を咲かせ、ようやくゆっくりとカウンター内へと戻って来た。
「よっ雅耶、お待たせ!悪いな…一人にして。今日は来てくれてありがとうな」
周囲がすっかり飲み会と化している中、未成年の雅耶はカウンターの端で控え目に座っていた。
「いえっ。ホントに来ただけでお祝いとか…気が利かずすみませんっ」
椅子に座りながらも頭を下げる雅耶に。
「何言ってんだよ。教え子のお前からお祝いなんて貰えないって。でも、その代わりまた懲りずにいつでも遊びに来てくれよな?たまーになら奢ってやるからさ」
そう言って直純は一つ、ウインクをした。
「でも折角来てくれたんだから、今日は好きなもの飲んで食べていってくれよ。まず、飲み物は何が良い?」
「じゃあ…ブレンドコーヒーのホットで…」
雅耶が控えめに言うと「OK」と笑って、直純自ら動いてコーヒーを入れてくれた。
「学校の方はどうだ?もう慣れたか?空手部入ったんだろ?」
「はい。今日も午前、午後と練習行ってきました。今までの大会で対戦した相手だったり、知ってる奴が結構成蘭に集まってるので、楽しいですよ。稽古はキツいですけどね」
雅耶は笑って言った。
「成蘭は昔から空手部強いんだよね。まぁ空手以外でも運動部はどれも盛んみたいだけど…」
そんな直純の何気ない一言に。
「そう…ですね…」
思わず先日の『柔道部事件』と『冬樹』を思い出してしまい、雅耶は僅かに表情を曇らせた。
「何だよ、雅耶…どうした?何かあったのか?」
ちょっとした様子の変化にさえ気付く、その観察力は凄いと思う。
「…直純先生。実は…冬樹がこっちに帰ってきたんです」
驚くかな?と思っていた雅耶は、直純の反応に逆に驚かされる事になる。
「ああ、知ってるよ」
「えぇっ!?知ってたんですかっ?」
雅耶の反応に、直純は小さく笑うと、
「二週間くらい前かな…。この近くで偶然会ったんだよ」
そう言いながら、雅耶の前にいくつかの料理を並べてくれる。
「偶然に…。…あいつと話、しましたか?」
何故か元気のない雅耶の様子に。
「…?ああ、少しだけ話したけど。お前…そんな顔して、冬樹と何かあったのか?」
そう直純に優しく聞かれ、雅耶は学校でのこと、昨夜の冬樹とのことを話した。
落ち着いた色合いのお洒落な店内には多くの人が集まり、賑やかな盛り上がりを見せていた。
『Cafe & Bar ROCO』は、本日開店。店頭には多くのお祝いの花が飾られ、午後6時からは貸し切りで、知り合いばかりが集まってパーティーが開催されていた。この店のマスターである直純の親類、友人、ご近所関係、空手関係など様々な顔ぶれが揃っている。
直純は店内のテーブルを丁寧に挨拶して回り、その所々で乾杯やお酌をしては盛り上がり、話しに花を咲かせ、ようやくゆっくりとカウンター内へと戻って来た。
「よっ雅耶、お待たせ!悪いな…一人にして。今日は来てくれてありがとうな」
周囲がすっかり飲み会と化している中、未成年の雅耶はカウンターの端で控え目に座っていた。
「いえっ。ホントに来ただけでお祝いとか…気が利かずすみませんっ」
椅子に座りながらも頭を下げる雅耶に。
「何言ってんだよ。教え子のお前からお祝いなんて貰えないって。でも、その代わりまた懲りずにいつでも遊びに来てくれよな?たまーになら奢ってやるからさ」
そう言って直純は一つ、ウインクをした。
「でも折角来てくれたんだから、今日は好きなもの飲んで食べていってくれよ。まず、飲み物は何が良い?」
「じゃあ…ブレンドコーヒーのホットで…」
雅耶が控えめに言うと「OK」と笑って、直純自ら動いてコーヒーを入れてくれた。
「学校の方はどうだ?もう慣れたか?空手部入ったんだろ?」
「はい。今日も午前、午後と練習行ってきました。今までの大会で対戦した相手だったり、知ってる奴が結構成蘭に集まってるので、楽しいですよ。稽古はキツいですけどね」
雅耶は笑って言った。
「成蘭は昔から空手部強いんだよね。まぁ空手以外でも運動部はどれも盛んみたいだけど…」
そんな直純の何気ない一言に。
「そう…ですね…」
思わず先日の『柔道部事件』と『冬樹』を思い出してしまい、雅耶は僅かに表情を曇らせた。
「何だよ、雅耶…どうした?何かあったのか?」
ちょっとした様子の変化にさえ気付く、その観察力は凄いと思う。
「…直純先生。実は…冬樹がこっちに帰ってきたんです」
驚くかな?と思っていた雅耶は、直純の反応に逆に驚かされる事になる。
「ああ、知ってるよ」
「えぇっ!?知ってたんですかっ?」
雅耶の反応に、直純は小さく笑うと、
「二週間くらい前かな…。この近くで偶然会ったんだよ」
そう言いながら、雅耶の前にいくつかの料理を並べてくれる。
「偶然に…。…あいつと話、しましたか?」
何故か元気のない雅耶の様子に。
「…?ああ、少しだけ話したけど。お前…そんな顔して、冬樹と何かあったのか?」
そう直純に優しく聞かれ、雅耶は学校でのこと、昨夜の冬樹とのことを話した。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
【完結】カワイイ子猫のつくり方
龍野ゆうき
青春
子猫を助けようとして樹から落下。それだけでも災難なのに、あれ?気が付いたら私…猫になってる!?そんな自分(猫)に手を差し伸べてくれたのは天敵のアイツだった。
無愛想毒舌眼鏡男と獣化主人公の間に生まれる恋?ちょっぴりファンタジーなラブコメ。
「史上まれにみる美少女の日常」
綾羽 ミカ
青春
鹿取莉菜子17歳 まさに絵にかいたような美少女、街を歩けば一日に20人以上ナンパやスカウトに声を掛けられる少女。家は団地暮らしで母子家庭の生活保護一歩手前という貧乏。性格は非常に悪く、ひがみっぽく、ねたみやすく過激だが、そんなことは一切表に出しません。
僕は 彼女の彼氏のはずなんだ
すんのはじめ
青春
昔、つぶれていった父のレストランを復活させるために その娘は
僕等4人の仲好しグループは同じ小学校を出て、中学校も同じで、地域では有名な進学高校を目指していた。中でも、中道美鈴には特別な想いがあったが、中学を卒業する時、彼女の消息が突然消えてしまった。僕は、彼女のことを忘れることが出来なくて、大学3年になって、ようやく探し出せた。それからの彼女は、高校進学を犠牲にしてまでも、昔、つぶされた様な形になった父のレストランを復活させるため、その思いを秘め、色々と奮闘してゆく

ファンファーレ!
ほしのことば
青春
♡完結まで毎日投稿♡
高校2年生の初夏、ユキは余命1年だと申告された。思えば、今まで「なんとなく」で生きてきた人生。延命治療も勧められたが、ユキは治療はせず、残りの人生を全力で生きることを決意した。
友情・恋愛・行事・学業…。
今まで適当にこなしてきただけの毎日を全力で過ごすことで、ユキの「生」に関する気持ちは段々と動いていく。
主人公のユキの心情を軸に、ユキが全力で生きることで起きる周りの心情の変化も描く。
誰もが感じたことのある青春時代の悩みや感動が、きっとあなたの心に寄り添う作品。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる