【完結】ツインクロス

龍野ゆうき

文字の大きさ
上 下
48 / 302
トラブルメイカー?

3-15

しおりを挟む
(どーせね。色々信用されてないんだよな…俺は…)
内心で半ば自棄になっていたが、待っている間に時が経つにつれ、別に今はそれでもいいか…と、思うようになっていた。
(再会出来ただけでも、奇跡みたいな感じだからな…)
家族を失ったことで、冬樹が変わってしまう程傷付いて来たというのなら、自分が少しでも彼の力になれればいいな…と、そう思った。

15分程待つと、冬樹が広場に姿を現した。
大きめのパーカーにジーンズというラフな服装。制服以外の冬樹を見たことが無かったので、何だか新鮮な感じがした。
冬樹はこちらに気付いていないのか、辺りをきょろきょろ見回している。その様子が、いつかの情景と重なる。
(あ…でも、一度駅前で見掛けたんだよな…)
転んだ男の子を抱き起こして、優しく慰めていた冬樹。
その時のことを突然思い出して、雅耶は固まった。
(そうだ…あの時、冬樹は子どもには優しく笑い掛けていたんだよな…)
学校では、笑顔を一度も見たことがないけれど。
その時の冬樹が、本当の…素の冬樹だったら良いなと雅耶は思った。

「冬樹っ」

辺りが薄暗いせいか、こちらに気付いていない様子なので雅耶は立ち上がると軽く手を上げて声を掛けた。すると、それに気付いた冬樹がゆっくりと近付いて来る。

「休んでるとこ呼び出して悪かったな。はい、これ…」
雅耶は冬樹に鞄を差し出した。冬樹は、それを両手で受け取ると、
「…わざわざ良かったのに…」
と、言いつつも小さく「…ありがとう」と付け足した。
相変わらず無表情ではあるが、冬樹の口からそんな言葉が聞けただけでも、鞄を持ってきた甲斐があったと思ってしまったことは、流石に秘密だ。
「昨日は大変だったな…。今日休んだのは、どこか調子悪かったのか?」
「…別に」
途端に目を逸らされる。何だか面白くない。
「お前、無茶しすぎだよ。昨日の昼休みのも一悶着ひともんちゃくあったんだろ?」
そう言うと、驚いたようにこちらを見た。冬樹は無言だったが『どうしてそれを知っているんだ?』…と、瞳が訴えていた。
「今日学校では、お前の噂で持ちきりだったんだ。あの柔道部の溝呂木って先生は、昼休みにお前のことを呼び出した上級生を、お前が返り討ちにしていたその戦いっぷりに惚れたんだって。流石に先生本人がそんな事言って回ってる訳じゃないだろうけど、一部では…ちょっとした噂になってた」
「ふぅん…」
冬樹は興味なさそうに視線を下げた。
「でも今回の柔道部の勧誘は、ちょっとやりすぎだったって学校側からも注意があったみたいだよ。お前、今日休んでたし…」
「………」
冬樹は視線を落としたまま、黙って聞いている。
「でも…何でお前が入学早々上級生なんかに呼び出しを食らうんだ?そいつらと何かあるのか?」
雅耶としては、冬樹を心配して出た言葉だったのだが、冬樹は一瞬ビクリ…と、身体を震わせると、
「…雅耶には関係ない」
そう言って背を向けた。
流石に雅耶もその言い方にはカチン…ときて、反論しようとした。だが、
「お前…」
「関係ないって言ってるんだ!」

突然声を荒げた冬樹に、雅耶は言葉を続ける事が出来なかった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】ぽっちゃり好きの望まない青春

mazecco
青春
◆◆◆第6回ライト文芸大賞 奨励賞受賞作◆◆◆ 人ってさ、テンプレから外れた人を仕分けるのが好きだよね。 イケメンとか、金持ちとか、デブとか、なんとかかんとか。 そんなものに俺はもう振り回されたくないから、友だちなんかいらないって思ってる。 俺じゃなくて俺の顔と財布ばっかり見て喋るヤツらと話してると虚しくなってくるんだもん。 誰もほんとの俺のことなんか見てないんだから。 どうせみんな、俺がぽっちゃり好きの陰キャだって知ったら離れていくに決まってる。 そう思ってたのに…… どうしてみんな俺を放っておいてくれないんだよ! ※ラブコメ風ですがこの小説は友情物語です※

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

【R15】アリア・ルージュの妄信

皐月うしこ
ミステリー
その日、白濁の中で少女は死んだ。 異質な匂いに包まれて、全身を粘着質な白い液体に覆われて、乱れた着衣が物語る悲惨な光景を何と表現すればいいのだろう。世界は日常に溢れている。何気ない会話、変わらない秒針、規則正しく進む人波。それでもここに、雲が形を変えるように、ガラスが粉々に砕けるように、一輪の花が小さな種を産んだ。

静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。 なんと、彼女は学園のマドンナだった……! こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。 彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。 そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。 そして助けられた少女もまた……。 二人の青春、そして成長物語をご覧ください。 ※中盤から甘々にご注意を。 ※性描写ありは保険です。 他サイトにも掲載しております。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

「南風の頃に」~ノダケンとその仲間達~

kitamitio
青春
合格するはずのなかった札幌の超難関高に入学してしまった野球少年の野田賢治は、野球部員たちの執拗な勧誘を逃れ陸上部に入部する。北海道の海沿いの田舎町で育った彼は仲間たちの優秀さに引け目を感じる生活を送っていたが、長年続けて来た野球との違いに戸惑いながらも陸上競技にのめりこんでいく。「自主自律」を校訓とする私服の学校に敢えて詰襟の学生服を着ていくことで自分自身の存在を主張しようとしていた野田賢治。それでも新しい仲間が広がっていく中で少しずつ変わっていくものがあった。そして、隠していた野田賢治自身の過去について少しずつ知らされていく……。

イケメン御曹司とは席替えで隣になっても、これ以上何も起こらないはずだった。

たかなしポン太
青春
【第7回カクヨムコンテスト中間選考通過作品】  本編完結しました! 「どうして連絡をよこさなかった?」 「……いろいろあったのよ」 「いろいろ?」 「そう。いろいろ……」 「……そうか」 ◆◆◆ 俺様でイメケンボッチの社長御曹司、宝生秀一。 家が貧しいけれど頭脳明晰で心優しいヒロイン、月島華恋。 同じ高校のクラスメートであるにもかかわらず、話したことすらなかった二人。 ところが……図書館での偶然の出会いから、二人の運命の歯車が回り始める。 ボッチだった秀一は華恋と時間を過ごしながら、少しずつ自分の世界が広がっていく。 そして華恋も秀一の意外な一面に心を許しながら、少しずつ彼に惹かれていった。 しかし……二人の先には、思いがけない大きな障壁が待ち受けていた。 キャラメルから始まる、素直になれない二人の身分差ラブコメディーです! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

処理中です...