【完結】ツインクロス

龍野ゆうき

文字の大きさ
上 下
31 / 302
波瀾の再会

2-13

しおりを挟む
「石原くん…だっけ。何でそんなこと聞くの?」
あまりにも唐突すぎて思わず雅耶が聞き返すと、「うん、石原です。ヨロシク!」…と、まだ幼さの残る笑顔を浮かべ、
「野崎くんって、結構な有名人だったからさっ。知り合いだなんてスゴイなーって思って。僕、中学の途中でこの近くに引っ越してきたんだけど、引っ越す前…小学校と中学校、野崎くんと一緒だったんだよー」
クラスは違う時もあったけど…と、付け足して得意げに言った。
「おお!有名人っ?」
「…ってどんな??」
長瀬のリアクションにプラスして雅耶が聞き返すと、
「野崎くんは、小学校の途中…二年の時だったかな?転入してきたんだけど、学校で人をからかったりいじめたりする嫌な奴がいてさ、そいつを転入早々やっつけちゃったんだ」
「おお!ワイルド~!」
長瀬が横で変なリアクションをしていたが、雅耶はそのままスルーして話の続きを待った。
「でも、そいつには二つ上に大きくて強い兄貴がいてさ…。今度はその兄貴が出てきて大変だったんだ。でも、野崎くんはその兄貴もやっつけちゃったんだよっ。その頃の野崎くん、結構小さかったのにひとまわりもふたまわりも違う上級生をやっつけちゃったっていうんで、生徒の間では大騒ぎだったんだ」
「へー。見かけによらずやるのねー。冬樹チャン」

(まぁ…空手やってたし…)
雅耶は、心の中で呟いた。
(でも、あの穏やかだった冬樹が騒ぎになるような喧嘩をするなんて…よっぽどのことがあったんだろうな…)

三人は、何気なく話題の人物に目を向けた。冬樹はゴール前に並び、相手のタイムを計っているようだ。

「野崎くん…普段はそんな喧嘩する感じの子じゃないんだよ。でも、中学に入ったらその兄貴が三年にいたし、その話が上級生の不良達の間で広まっててさ…。入学早々呼び出しとかあったみたいだよ」
「うお…怖っ…」
長瀬は大袈裟に身震いしている。
「最低だな…。でも、その中学校…そんなに不良とか多かったの?」
自分が通っていた中学には『不良』と呼ばれる程の者がいなかった為、あまり現実的に思えず雅耶は聞き返した。
「うん。その中学は県内でもガラの悪い奴が多くてわりと有名な学校だったんだ。だから…という訳でもないんだけど、僕は転校出来てラッキーだったかも」
そう笑って、石原は胸を撫で下ろす仕草をした。その話を「へぇー、穏やかじゃないねェ…」とか、呟きながら聞いていた長瀬が、今度はワザとらしく険しい顔を作って言った。
「でもさ、実際に呼び出されて、その後冬樹チャンはどうなっちゃったワケ?」

長瀬の冬樹に対しての呼び名は、すっかり『冬樹チャン』に定着してしまったらしい。
(何か、面と向かって『ちゃん』とか付けて呼んだら、本気で怒られそうだな…)
…と、雅耶は話題とは無関係な事を考えていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

親友がリア充でモテまくりです。非リアの俺には気持ちが分からない

かがみもち
青春
同じ学年。 同じ年齢。 なのに、俺と親友で、なんでこんなによって来る人が違うんだ?! 俺、高橋敦志(たかはしあつし)は、高校で出会った親友・山内裕太(やまうちゆうた)と学校でもプライベートでも一緒に過ごしている。 のに、彼は、モテまくりで、机に集まるのは、成績優秀の美男美女。 対して、俺は、バカのフツメンかブサメンしか男女共に集まってこない! そして、友情を更に作る可愛い系男子・三石遼太郎(みいしりょうたろう)と、3人で共に、友情とは、青春とは、何なのかを時にぶつかりながら探す、時にほっこり、時に熱い友情青春物語。           ※※※ 驟雨(@Rainshower0705)さんが、表紙、挿絵を描いてくれました。 「ソウルエクスキューター」という漫画をアルファポリスで描いてらっしゃるので是非一度ご覧ください!           ※※※ ノベルアップ+様でも投稿しております。

青天のヘキレキ

ましら佳
青春
⌘ 青天のヘキレキ 高校の保健養護教諭である金沢環《かなざわたまき》。 上司にも同僚にも生徒からも精神的にどつき回される生活。 思わぬ事故に巻き込まれ、修学旅行の引率先の沼に落ちて神将・毘沙門天の手違いで、問題児である生徒と入れ替わってしまう。 可愛い女子とイケメン男子ではなく、オバちゃんと問題児の中身の取り違えで、ギャップの大きい生活に戸惑い、落としどころを探って行く。 お互いの抱えている問題に、否応なく向き合って行くが・・・・。 出会いは化学変化。 いわゆる“入れ替わり”系のお話を一度書いてみたくて考えたものです。 お楽しみいただけますように。 他コンテンツにも掲載中です。

秘密のキス

廣瀬純一
青春
キスで体が入れ替わる高校生の男女の話

榛名の園

ひかり企画
青春
荒れた14歳から17歳位までの、女子少年院経験記など、あたしの自伝小説を書いて見ました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

冬の水葬

束原ミヤコ
青春
夕霧七瀬(ユウギリナナセ)は、一つ年上の幼なじみ、凪蓮水(ナギハスミ)が好き。 凪が高校生になってから疎遠になってしまっていたけれど、ずっと好きだった。 高校一年生になった夕霧は、凪と同じ高校に通えることを楽しみにしていた。 美術部の凪を追いかけて美術部に入り、気安い幼なじみの間柄に戻ることができたと思っていた―― けれど、そのときにはすでに、凪の心には消えない傷ができてしまっていた。 ある女性に捕らわれた凪と、それを追いかける夕霧の、繰り返す冬の話。

しゅうきゅうみっか!-女子サッカー部の高校生監督 片桐修人の苦難-

橋暮 梵人
青春
幼少の頃から日本サッカー界の至宝と言われ、各年代別日本代表のエースとして活躍し続けてきた片桐修人(かたぎり しゅうと)。 順風満帆だった彼の人生は高校一年の時、とある試合で大きく変わってしまう。 悪質なファウルでの大怪我によりピッチ上で輝くことが出来なくなった天才は、サッカー漬けだった日々と決別し人並みの青春を送ることに全力を注ぐようになる。 高校サッカーの強豪校から普通の私立高校に転入した片桐は、サッカーとは無縁の新しい高校生活に思いを馳せる。 しかしそんな片桐の前に、弱小女子サッカー部のキャプテン、鞍月光華(くらつき みつか)が現れる。 「どう、うちのサッカー部の監督、やってみない?」 これは高校生監督、片桐修人と弱小女子サッカー部の奮闘の記録である。

処理中です...