26 / 302
波瀾の再会
2-8
しおりを挟む
(自分で決めたんだ。今更迷いも何もない…)
冬樹は軽く深呼吸をすると、その敷地へと足を踏み入れた。
新入生は、昇降口前に大きく掲示してある名簿でクラスを確認後、教室へ向かうとのことだった。沢山の生徒が群がっているその場所へ、仕方なく冬樹も足を向けたその時だった。
「あれっ?冬樹…?」
突然、後ろから声が掛かった。
「………?」
思わず足を止めて振り返る。
…が、こんな所で誰かに声を掛けられるとは思っていなかった冬樹は、心底驚いていた。第一、自分を『冬樹』と名前で呼ぶ者など思い浮かばないのだから。
怪訝そうに振り返った冬樹の顔を見て、確信を得たようにその人物は笑顔を見せた。
「やっぱりそうだっ!お前、冬樹だろっ?」
人懐こい笑顔。
この顔には見覚えがあった。
(もしかして…)
「俺だよ!俺っ!!雅耶だよ!!」
「まさ…や…?」
(やっぱりか!!)
衝撃で固まってる冬樹をよそに、雅耶は嬉しそうに話を続けた。
「スゴイ偶然だなっ!まさか同じ学校になるなんてっ。こないだ駅でお前見かけてさー、まさかと思ったんだよっ」
若干興奮気味で、まくし立てるように話す雅耶を前に、冬樹の頭の中では自問自答が繰り返されていた。
(何で雅耶がここに…?いや、同じ制服着てここにいるってことは、この学校の生徒ってことだよな…。でも、こんな偶然って有りなのかっ?そりゃあ…こっちに戻って来た以上は、雅耶にもいつか会いたいとは思ってたけど…まだ、心の準備が出来てないって…。…それにしてもデカいな。180はあるんじゃないか??どうやったら、そんなに背が伸びるんだ…?)
半ばパニック状態である。
だが、表面上は瞳を大きく見開いている程度で動揺している様子はみられなかったりするのだが。
そんな時。
「おっす!雅耶っ!!何やってんの?何組だった?」
雅耶の知り合いらしき人物が、雅耶の後ろから声を掛けてきた。
「あ、長瀬!おはよー」
雅耶がそちらを振り返り、自分に背を向けたと同時に、冬樹は条件反射的にその場から立ち去っていた。後々気まずくなることは分かっていたが、そんなことはどうでも良い。とにかく、気持ちを落ち着けたかった。
「あれっ?冬樹…?行っちゃったのか…」
長瀬と挨拶を交わしているうちにいなくなってしまった冬樹に、雅耶は少々気落ちしながら昇降口の方を眺めた。
(待ちくたびれちゃったのかな…。悪いことしたな…)
その様子を見て、長瀬がニヤリと笑った。
「あれー?雅耶クン。なになにー?入学早々振られちゃったのかにゃ?」
相変わらずのツッコミに、雅耶は大きく溜息をついた。
「あのなー…。馬鹿なこと言ってないで、ほら…俺らもクラス見てこようぜ」
「ほーい…」
そうして名簿が掲示してある群れの中へと歩みを進めた。
冬樹は軽く深呼吸をすると、その敷地へと足を踏み入れた。
新入生は、昇降口前に大きく掲示してある名簿でクラスを確認後、教室へ向かうとのことだった。沢山の生徒が群がっているその場所へ、仕方なく冬樹も足を向けたその時だった。
「あれっ?冬樹…?」
突然、後ろから声が掛かった。
「………?」
思わず足を止めて振り返る。
…が、こんな所で誰かに声を掛けられるとは思っていなかった冬樹は、心底驚いていた。第一、自分を『冬樹』と名前で呼ぶ者など思い浮かばないのだから。
怪訝そうに振り返った冬樹の顔を見て、確信を得たようにその人物は笑顔を見せた。
「やっぱりそうだっ!お前、冬樹だろっ?」
人懐こい笑顔。
この顔には見覚えがあった。
(もしかして…)
「俺だよ!俺っ!!雅耶だよ!!」
「まさ…や…?」
(やっぱりか!!)
衝撃で固まってる冬樹をよそに、雅耶は嬉しそうに話を続けた。
「スゴイ偶然だなっ!まさか同じ学校になるなんてっ。こないだ駅でお前見かけてさー、まさかと思ったんだよっ」
若干興奮気味で、まくし立てるように話す雅耶を前に、冬樹の頭の中では自問自答が繰り返されていた。
(何で雅耶がここに…?いや、同じ制服着てここにいるってことは、この学校の生徒ってことだよな…。でも、こんな偶然って有りなのかっ?そりゃあ…こっちに戻って来た以上は、雅耶にもいつか会いたいとは思ってたけど…まだ、心の準備が出来てないって…。…それにしてもデカいな。180はあるんじゃないか??どうやったら、そんなに背が伸びるんだ…?)
半ばパニック状態である。
だが、表面上は瞳を大きく見開いている程度で動揺している様子はみられなかったりするのだが。
そんな時。
「おっす!雅耶っ!!何やってんの?何組だった?」
雅耶の知り合いらしき人物が、雅耶の後ろから声を掛けてきた。
「あ、長瀬!おはよー」
雅耶がそちらを振り返り、自分に背を向けたと同時に、冬樹は条件反射的にその場から立ち去っていた。後々気まずくなることは分かっていたが、そんなことはどうでも良い。とにかく、気持ちを落ち着けたかった。
「あれっ?冬樹…?行っちゃったのか…」
長瀬と挨拶を交わしているうちにいなくなってしまった冬樹に、雅耶は少々気落ちしながら昇降口の方を眺めた。
(待ちくたびれちゃったのかな…。悪いことしたな…)
その様子を見て、長瀬がニヤリと笑った。
「あれー?雅耶クン。なになにー?入学早々振られちゃったのかにゃ?」
相変わらずのツッコミに、雅耶は大きく溜息をついた。
「あのなー…。馬鹿なこと言ってないで、ほら…俺らもクラス見てこようぜ」
「ほーい…」
そうして名簿が掲示してある群れの中へと歩みを進めた。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
【完結】カワイイ子猫のつくり方
龍野ゆうき
青春
子猫を助けようとして樹から落下。それだけでも災難なのに、あれ?気が付いたら私…猫になってる!?そんな自分(猫)に手を差し伸べてくれたのは天敵のアイツだった。
無愛想毒舌眼鏡男と獣化主人公の間に生まれる恋?ちょっぴりファンタジーなラブコメ。
ヤマネ姫の幸福論
ふくろう
青春
秋の長野行き中央本線、特急あずさの座席に座る一組の男女。
一見、恋人同士に見えるが、これが最初で最後の二人の旅行になるかもしれない。
彼らは霧ヶ峰高原に、「森の妖精」と呼ばれる小動物の棲み家を訪ね、夢のように楽しい二日間を過ごす。
しかし、運命の時は、刻一刻と迫っていた。
主人公達の恋の行方、霧ヶ峰の生き物のお話に添えて、世界中で愛されてきた好編「幸福論」を交え、お読みいただける方に、少しでも清々しく、優しい気持ちになっていただけますよう、精一杯、書いてます!
どうぞ、よろしくお願いいたします!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる