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波瀾の再会
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ふと、先程渡された名刺が気になって、冬樹は歩きながらそれを手に取った。
どうやらお店の名刺らしい。だが、一般のサラリーマンが持っている名刺のような硬いイメージとは違って、随分とお洒落なつくりになっている。
『Cafe & Bar ROCO』
(へぇ…カフェバー…?)
『master 中山直純』
(直純先生がマスターなんだ…?すごいな…)
心の内で感心しながら、ふと何気なく裏をめくると、裏にも店への簡単な地図などが書いてあった。その余白には直筆で小さく何か文字が書いてある。
(そういえば、先生…さっき何か書いて…)
そう思い出したところで、冬樹は思わず足を止める。
『アルバイト大歓迎!』
そこには、そう書かれていたのだ。
冬樹は、手に丸めて持っていた求人雑誌に視線を移す。
(もしかして、オレがアルバイト探してるって気付いたから…?)
『またな』と笑った、先程の笑顔が浮かぶ。
(これって、社交辞令のようなものだよな…)
本気で雇う気は無いにしても、そんな小さな心配りに。
冬樹は、胸の奥が小さく痛むのだった。
数日後。
春の柔らかな日差しの下、冬樹は真新しい制服に身を包み、混雑した通勤電車に揺られていた。
今日は、冬樹が通うことになる高校『私立成蘭高等学校』の入学式。成蘭高校は、冬樹が住んでいる最寄駅から5つ先の駅を下車、徒歩10分程の所にある。通学時間は40分程度だが、電車通学が初めての冬樹は、電車内でのあまりの人の多さに無駄に神経を使い、改札をくぐる頃には若干疲れを見せていた。
だが、学校に近付くにつれ、同じ制服の生徒が周囲に目立つようになり、徐々に緊張感が増してくる。
成蘭高校の制服は、チャコールグレーのブレザーに、左胸ポケットには学校オリジナルのエンブレムワッペン。ワイシャツに濃エンジベースのライン入りネクタイ。そして、グレー系チェックのスラックスといった、いかにも私立らしい近年人気のデザインだ。人気の制服デザインに特に興味はない冬樹だったが、その他ブレザーの下にスクールセーターやベストを着ることも可能で、その自由さに関しては、ある意味有難い仕様だと思っていた。
(それにしても…見事なまでに男ばっかりだな…)
校門の前で立ち止まると、冬樹は周囲を見渡した。
続々と登校してくる冬樹と同じ新入生をはじめ、受付や案内をしている多くの上級生達も全て男子生徒だ。だが、それは当然の事であった。
ここ、成蘭高等学校は男子校なのだから。
どうやらお店の名刺らしい。だが、一般のサラリーマンが持っている名刺のような硬いイメージとは違って、随分とお洒落なつくりになっている。
『Cafe & Bar ROCO』
(へぇ…カフェバー…?)
『master 中山直純』
(直純先生がマスターなんだ…?すごいな…)
心の内で感心しながら、ふと何気なく裏をめくると、裏にも店への簡単な地図などが書いてあった。その余白には直筆で小さく何か文字が書いてある。
(そういえば、先生…さっき何か書いて…)
そう思い出したところで、冬樹は思わず足を止める。
『アルバイト大歓迎!』
そこには、そう書かれていたのだ。
冬樹は、手に丸めて持っていた求人雑誌に視線を移す。
(もしかして、オレがアルバイト探してるって気付いたから…?)
『またな』と笑った、先程の笑顔が浮かぶ。
(これって、社交辞令のようなものだよな…)
本気で雇う気は無いにしても、そんな小さな心配りに。
冬樹は、胸の奥が小さく痛むのだった。
数日後。
春の柔らかな日差しの下、冬樹は真新しい制服に身を包み、混雑した通勤電車に揺られていた。
今日は、冬樹が通うことになる高校『私立成蘭高等学校』の入学式。成蘭高校は、冬樹が住んでいる最寄駅から5つ先の駅を下車、徒歩10分程の所にある。通学時間は40分程度だが、電車通学が初めての冬樹は、電車内でのあまりの人の多さに無駄に神経を使い、改札をくぐる頃には若干疲れを見せていた。
だが、学校に近付くにつれ、同じ制服の生徒が周囲に目立つようになり、徐々に緊張感が増してくる。
成蘭高校の制服は、チャコールグレーのブレザーに、左胸ポケットには学校オリジナルのエンブレムワッペン。ワイシャツに濃エンジベースのライン入りネクタイ。そして、グレー系チェックのスラックスといった、いかにも私立らしい近年人気のデザインだ。人気の制服デザインに特に興味はない冬樹だったが、その他ブレザーの下にスクールセーターやベストを着ることも可能で、その自由さに関しては、ある意味有難い仕様だと思っていた。
(それにしても…見事なまでに男ばっかりだな…)
校門の前で立ち止まると、冬樹は周囲を見渡した。
続々と登校してくる冬樹と同じ新入生をはじめ、受付や案内をしている多くの上級生達も全て男子生徒だ。だが、それは当然の事であった。
ここ、成蘭高等学校は男子校なのだから。
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