【完結】ツインクロス

龍野ゆうき

文字の大きさ
上 下
21 / 302
波瀾の再会

2-3

しおりを挟む
「このチビ!俺達にタテつく気かァ?」
「ハハハッやめとけ、やめとけッ。坊ちゃんには百万年はえーぜッ」
無言でその場に立っている冬樹を『強敵』では無いと判断したのか、男達は馬鹿にした様子で冬樹に詰め寄った。
「今なら間に合うぜ。さっさとその金、こっちによこしなッ」
凄んで詰め寄られても、冬樹は冷静だった。
三人の男達の後ろで、解放された眼鏡の男がそろりと立ち上がり、今にも逃げようとしてこちらを伺っている。
「………」
冬樹はその一瞬を狙って、詰め寄ってくる男達の僅かな間を通すように素早くその男に財布を放り投げた。
「あっ…」
咄嗟にそれを受け取った眼鏡の男は、その瞬間…また男達の視線が自分へと戻り、青ざめた様子で固まってしまうが、
(行きなよっ)
冬樹が声に出さず、手振りで合図すると慌てて表通りへと駆け出した。
「あっ!!テメーッ西田!!」
あたふたと逃げていく眼鏡の男は、西田という名だったらしい。
男達は大事な金づるを逃して、一気に殺気立った。
「テメェ…ナメた真似しやがって…」
「俺達をバカにしたらどうなるか、思い知らせてやるぜッ」



「おっと!」

突然、路地から飛び出してきた男にぶつかりそうになって、ある人物は足を止めた。飛び出してきた眼鏡の男は、妙に慌てた様子で、頭だけ下げるとそのまま人混みの中へと駆けて行ってしまった。その様子を呆然と見送っていたが、ふと…その路地裏にまだ数人溜まっている事に気が付く。
雰囲気で察するに、何だか揉めている事だけは分かった。
(何だ?喧嘩…か?それともイジメ…?)
傍観しているうちに、いよいよ殴り合いへと発展する。どうやら一人の少年に対し、三人で取り囲んでいるようだ。
(何にしても3対1とは卑怯な…)
それも、一人で応戦している少年は、三人の男達に比べて随分可愛らしい感じの少年で…。
(いや、でもいい動きしてるな…)
ゴツイ男の重そうなパンチを上手く受け流すその動きはなかなかだ。だが…。
(ん…?あれは…)
その少年の顔がよく見えるようになって、思わず固まった。

(…冬樹…?冬樹じゃないのか?)



冬樹は、思いのほか苦戦していた。
ある意味、喧嘩慣れしている冬樹ではあるが、流石に自分よりひとまわりもふたまわりも大きな奴の力は半端ではなく。それが、三人相手とならば尚更だった。持ち前の瞬発力を発揮しようとも、狭い路地で三人に取り囲まれていてはどうしようもない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私の隣は、心が見えない男の子

舟渡あさひ
青春
人の心を五感で感じ取れる少女、人見一透。 隣の席の男子は九十九くん。一透は彼の心が上手く読み取れない。 二人はこの春から、同じクラスの高校生。 一透は九十九くんの心の様子が気になって、彼の観察を始めることにしました。 きっと彼が、私の求める答えを持っている。そう信じて。

何故か超絶美少女に嫌われる日常

やまたけ
青春
K市内一と言われる超絶美少女の高校三年生柊美久。そして同じ高校三年生の武智悠斗は、何故か彼女に絡まれ疎まれる。何をしたのか覚えがないが、とにかく何かと文句を言われる毎日。だが、それでも彼女に歯向かえない事情があるようで……。疋田美里という、主人公がバイト先で知り合った可愛い女子高生。彼女の存在がより一層、この物語を複雑化させていくようで。 しょっぱなヒロインから嫌われるという、ちょっとひねくれた恋愛小説。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。 なんと、彼女は学園のマドンナだった……! こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。 彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。 そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。 そして助けられた少女もまた……。 二人の青春、そして成長物語をご覧ください。 ※中盤から甘々にご注意を。 ※性描写ありは保険です。 他サイトにも掲載しております。

将棋部の眼鏡美少女を抱いた

junk
青春
将棋部の青春恋愛ストーリーです

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

イケメン御曹司とは席替えで隣になっても、これ以上何も起こらないはずだった。

たかなしポン太
青春
【第7回カクヨムコンテスト中間選考通過作品】  本編完結しました! 「どうして連絡をよこさなかった?」 「……いろいろあったのよ」 「いろいろ?」 「そう。いろいろ……」 「……そうか」 ◆◆◆ 俺様でイメケンボッチの社長御曹司、宝生秀一。 家が貧しいけれど頭脳明晰で心優しいヒロイン、月島華恋。 同じ高校のクラスメートであるにもかかわらず、話したことすらなかった二人。 ところが……図書館での偶然の出会いから、二人の運命の歯車が回り始める。 ボッチだった秀一は華恋と時間を過ごしながら、少しずつ自分の世界が広がっていく。 そして華恋も秀一の意外な一面に心を許しながら、少しずつ彼に惹かれていった。 しかし……二人の先には、思いがけない大きな障壁が待ち受けていた。 キャラメルから始まる、素直になれない二人の身分差ラブコメディーです! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

処理中です...