20 / 302
波瀾の再会
2-2
しおりを挟む
「やめてくれっ」
気弱そうな眼鏡を掛けた男が、壁際で三人の男達に取り囲まれている。見た限りでは、皆高校生ぐらいだろうか。
「頼むから、暴力はやめてよっ」
眼鏡の男は小さなバッグを胸に抱え、逃げ腰で後ずさるが、二人の男がその後ろに回り込む。
「ハハハッ。なーに言ってんだよ、西田くんー。俺らは別に、お前をいじめようってんじゃないんだぜー?」
正面に立っている主犯格らしい男がワザとらしくおどけて言うと、
「そうそう」
後ろの二人も嫌な笑いを浮かべた。
次の瞬間、主犯格の男は、当たり前のように眼鏡の男の腕の中にあるバッグを力ずくで奪うと、その中から慣れたように財布を抜き取った。
「あっ」
「大人しく金さえ渡してくれればいいんだよッ。…いつも通りなッ」
そう言って、その財布を取ったことを誇示するように、財布を持った右手を上げてみせた。それを見た後ろの二人も満足げに、
「へへへ…そういうこった」
そう言って下品な笑いを浮かべた、その時。
男が持っていた右手から、財布は消えていた。後ろから素早い動作で奪われたのだ。
「なっ!?誰だッ!!」
主犯格の男が慌てて振り返ると。
そこには、涼しい顔をした少年が立っていた。
明らかにイジメの現場。
冬樹は、そういったものが大嫌いだった。
冬樹自身が小学校時代、よくいじめられる対象にされていたから…と、いうのもある。家族を失ったこと…それは、冬樹のせいでも何でもなかったが、子供達の間でのからかわれる要素としては、打って付けだった。
からかいがエスカレートしてくるとイジメになっていく。
そして、そういった類の者達は必ずしも一人ではなく、いつだって数人で連れ立ってやってくるのだ。
(3対1…か。卑怯な連中だ…)
思わず足を止めて眺めてしまっていた冬樹だったが、ひとりの男がお金を巻き上げようと財布を奪った時点で行動に出ていた。
「テメェ…やる気か?」
思わぬ隙に逆に財布を取られて、男は悔しそうに身体を震わせた。何より、その相手が自分より小さく線の細い少年だったのが、余計に男の気持ちを逆なでした。だが、主犯格らしい男は腕に自信は無いのか、ただ冬樹を睨みつけるだけだった。
「何だァてめぇはッ!!」
思わぬ邪魔が入って、残りの二人が前に出てくる。その際に、バッグを奪われた眼鏡の男は一人のゴツイ男に押し退けられ、壁にぶつかると地に倒れ込んだ。
気弱そうな眼鏡を掛けた男が、壁際で三人の男達に取り囲まれている。見た限りでは、皆高校生ぐらいだろうか。
「頼むから、暴力はやめてよっ」
眼鏡の男は小さなバッグを胸に抱え、逃げ腰で後ずさるが、二人の男がその後ろに回り込む。
「ハハハッ。なーに言ってんだよ、西田くんー。俺らは別に、お前をいじめようってんじゃないんだぜー?」
正面に立っている主犯格らしい男がワザとらしくおどけて言うと、
「そうそう」
後ろの二人も嫌な笑いを浮かべた。
次の瞬間、主犯格の男は、当たり前のように眼鏡の男の腕の中にあるバッグを力ずくで奪うと、その中から慣れたように財布を抜き取った。
「あっ」
「大人しく金さえ渡してくれればいいんだよッ。…いつも通りなッ」
そう言って、その財布を取ったことを誇示するように、財布を持った右手を上げてみせた。それを見た後ろの二人も満足げに、
「へへへ…そういうこった」
そう言って下品な笑いを浮かべた、その時。
男が持っていた右手から、財布は消えていた。後ろから素早い動作で奪われたのだ。
「なっ!?誰だッ!!」
主犯格の男が慌てて振り返ると。
そこには、涼しい顔をした少年が立っていた。
明らかにイジメの現場。
冬樹は、そういったものが大嫌いだった。
冬樹自身が小学校時代、よくいじめられる対象にされていたから…と、いうのもある。家族を失ったこと…それは、冬樹のせいでも何でもなかったが、子供達の間でのからかわれる要素としては、打って付けだった。
からかいがエスカレートしてくるとイジメになっていく。
そして、そういった類の者達は必ずしも一人ではなく、いつだって数人で連れ立ってやってくるのだ。
(3対1…か。卑怯な連中だ…)
思わず足を止めて眺めてしまっていた冬樹だったが、ひとりの男がお金を巻き上げようと財布を奪った時点で行動に出ていた。
「テメェ…やる気か?」
思わぬ隙に逆に財布を取られて、男は悔しそうに身体を震わせた。何より、その相手が自分より小さく線の細い少年だったのが、余計に男の気持ちを逆なでした。だが、主犯格らしい男は腕に自信は無いのか、ただ冬樹を睨みつけるだけだった。
「何だァてめぇはッ!!」
思わぬ邪魔が入って、残りの二人が前に出てくる。その際に、バッグを奪われた眼鏡の男は一人のゴツイ男に押し退けられ、壁にぶつかると地に倒れ込んだ。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
【完結】カワイイ子猫のつくり方
龍野ゆうき
青春
子猫を助けようとして樹から落下。それだけでも災難なのに、あれ?気が付いたら私…猫になってる!?そんな自分(猫)に手を差し伸べてくれたのは天敵のアイツだった。
無愛想毒舌眼鏡男と獣化主人公の間に生まれる恋?ちょっぴりファンタジーなラブコメ。
私の隣は、心が見えない男の子
舟渡あさひ
青春
人の心を五感で感じ取れる少女、人見一透。
隣の席の男子は九十九くん。一透は彼の心が上手く読み取れない。
二人はこの春から、同じクラスの高校生。
一透は九十九くんの心の様子が気になって、彼の観察を始めることにしました。
きっと彼が、私の求める答えを持っている。そう信じて。
【R15】アリア・ルージュの妄信
皐月うしこ
ミステリー
その日、白濁の中で少女は死んだ。
異質な匂いに包まれて、全身を粘着質な白い液体に覆われて、乱れた着衣が物語る悲惨な光景を何と表現すればいいのだろう。世界は日常に溢れている。何気ない会話、変わらない秒針、規則正しく進む人波。それでもここに、雲が形を変えるように、ガラスが粉々に砕けるように、一輪の花が小さな種を産んだ。

おれは農家の跡取りだ! 〜一度は捨てた夢だけど、新しい仲間とつかんでみせる〜
藍条森也
青春
藤岡耕一はしがない稲作農家の息子。代々伝えられてきた田んぼを継ぐつもりの耕一だったが、日本農業全体の衰退を理由に親に反対される。農業を継ぐことを諦めた耕一は『勝ち組人生』を送るべく、県下きっての進学校、若竹学園に入学。しかし、そこで校内ナンバー1珍獣の異名をもつSEED部部長・森崎陽芽と出会ったことで人生は一変する。
森崎陽芽は『世界中の貧しい人々に冨と希望を与える』ため、SEEDシステム――食料・エネルギー・イベント同時作を考案していた。農地に太陽電池を設置することで食料とエネルギーを同時に生産し、収入を増加させる。太陽電池のコストの高さを解消するために定期的にイベントを開催、入場料で設置代を賄うことで安価に提供できるようにするというシステムだった。その実証試験のために稲作農家である耕一の協力を求めたのだ。
必要な設備を購入するだけの資金がないことを理由に最初は断った耕一だが、SEEDシステムの発案者である雪森弥生の説得を受け、親に相談。親の答えはまさかの『やってみろ』。
その言葉に実家の危機――このまま何もせずにいれば破産するしかない――を知った耕一は起死回生のゴールを決めるべく、SEEDシステムの実証に邁進することになる。目指すはSEEDシステムを活用した夏祭り。実際に稼いでみせることでSEEDシステムの有用性を実証するのだ!
真性オタク男の金子雄二をイベント担当として新部員に迎えたところ、『男は邪魔だ!』との理由で耕一はメイドさんとして接客係を担当する羽目に。実家の危機を救うべく決死の覚悟で挑む耕一だが、そうたやすく男の娘になれるはずもなく悪戦苦闘。劇団の娘鈴沢鈴果を講師役として迎えることでどうにか様になっていく。
人手不足から夏祭りの準備は難航し、開催も危ぶまれる。そのとき、耕一たちの必死の姿に心を動かされた地元の仲間や同級生たちが駆けつける。みんなの協力の下、夏祭りは無事、開催される。祭りは大盛況のうちに終り、耕一は晴れて田んぼの跡継ぎとして認められる。
――SEEDシステムがおれの人生を救ってくれた。
そのことを実感する耕一。だったら、
――おれと同じように希望を失っている世界中の人たちだって救えるはずだ!
その思いを胸に耕一は『世界を救う』夢を見るのだった。
※『ノベリズム』から移転(旧題·SEED部が世界を救う!(by 森崎陽芽) 馬鹿なことをと思っていたけどやれる気になってきた(by 藤岡耕一))。
毎日更新。7月中に完結。
イルカノスミカ
よん
青春
2014年、神奈川県立小田原東高二年の瀬戸入果は競泳バタフライの選手。
弱小水泳部ながらインターハイ出場を決めるも関東大会で傷めた水泳肩により現在はリハビリ中。
敬老の日の晩に、両親からダブル不倫の末に離婚という衝撃の宣告を受けた入果は行き場を失ってしまう。

静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について
おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である
そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。
なんと、彼女は学園のマドンナだった……!
こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。
彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。
そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。
そして助けられた少女もまた……。
二人の青春、そして成長物語をご覧ください。
※中盤から甘々にご注意を。
※性描写ありは保険です。
他サイトにも掲載しております。
シン・おてんばプロレスの女神たち ~衝撃のO1クライマックス開幕~
ちひろ
青春
おてんばプロレスにゆかりのOGらが大集結。謎の覆面レスラーも加わって、宇宙で一番強い女を決めるべく、天下分け目の一戦が始まった。青春派プロレスノベル『おてんばプロレスの女神たち』の決定版。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる