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冬樹と夏樹
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賑わう駅前。
そんな風に人に見られていたとは露知らず、冬樹は周囲をゆっくりと見て歩きながら、自分の家へと向かっていた。
(この辺りも、だいぶ変わったな…)
記憶にある限りでは、こんなに駅ビルやショッピングモールなどの施設が充実してはいなかった筈だ。
(もう、八年…だもんな…)
八年という年月は、街の景色は勿論のこと、人の人生を変えるのも容易い程に長い時間だという事を自分は知っている。
八年前。
「せんせーありがとうございましたーっ」
子ども達の元気な声が響き渡る。
住宅街のある一軒家。
その家は、そう古いものでは無いのだが、家の主人の趣向で造られた近辺では珍しい日本家屋だった。立派な門構えのその家の入口には、木で造られた看板が掛けられており『中山空手道場』と書かれている。母屋とは別の離れに小さな道場があり、そこでは子どもから大人まで幅広い年齢層を対象とした空手教室などが開かれており、長く地元に親しまれていた。
「みんな、気を付けて帰れよー」
先生の声と共に、
「はーいっ」
「せんせーさよーならー」
稽古を終えた子ども達が元気にその門をくぐってバラバラと出てくる。道着のままで帰る者もいれば、着替えを済ませて帰る者もいる。元気に走って帰る者、疲れ果てた様子で歩く者、実に様々だ。
そんな中、私服に着替えた二人がゆっくりと後から仲良く話をしながら門を出てきた。
その一人が冬樹だった。一緒にいるのは、幼なじみの『まさや』だ。
冬樹・夏樹と雅耶は、家が隣同士で本当に小さな頃からの友人だった。何より母親達の仲が良く、何かと双方の家を行き来する事も多かったのだ。空手教室も雅耶が始めるというので、一緒に通うことになったようなものだった。
「おわったなー。きょうはけっこうつかれたよなー」
道着が入ったバッグを片手に、大きく伸びをしながら雅耶が言った。
「うん。けっこうハードだったよね」
頭一つ分背の高い雅耶を少し見上げて冬樹は笑う。和気あいあいと、その日やった空手のおさらいなどをしながら、いつも通り家までの道のりを歩いていた。
その時。
雅耶の母親が、家の方から慌てて走ってくる姿が見えた。その様子は、子供心にも普通じゃないと分かるようなものだった。
「冬樹くんっ」
何故か冬樹の名を呼んで、血相を変えて走り寄ってくる母に。
「あれーっ?おかあさん?どーしたの?」
雅耶は、特に気にしてもいないのか、明るい能天気な声を上げた。だが、雅耶の母親は、息を切らしながら驚きの言葉を続けた。
「大変なのよっ。今、連絡があって…。夏樹ちゃんとご両親の乗った…車が…」
冬樹は、我が耳を疑った。
崖から海へ転落!?
「う…そ…」
(おとうさんたちが!?)
冬樹は、走り出していた。
「あッ待って!!冬樹くんっ!!」
雅耶の母の制止の声も耳には入らない。
そんな風に人に見られていたとは露知らず、冬樹は周囲をゆっくりと見て歩きながら、自分の家へと向かっていた。
(この辺りも、だいぶ変わったな…)
記憶にある限りでは、こんなに駅ビルやショッピングモールなどの施設が充実してはいなかった筈だ。
(もう、八年…だもんな…)
八年という年月は、街の景色は勿論のこと、人の人生を変えるのも容易い程に長い時間だという事を自分は知っている。
八年前。
「せんせーありがとうございましたーっ」
子ども達の元気な声が響き渡る。
住宅街のある一軒家。
その家は、そう古いものでは無いのだが、家の主人の趣向で造られた近辺では珍しい日本家屋だった。立派な門構えのその家の入口には、木で造られた看板が掛けられており『中山空手道場』と書かれている。母屋とは別の離れに小さな道場があり、そこでは子どもから大人まで幅広い年齢層を対象とした空手教室などが開かれており、長く地元に親しまれていた。
「みんな、気を付けて帰れよー」
先生の声と共に、
「はーいっ」
「せんせーさよーならー」
稽古を終えた子ども達が元気にその門をくぐってバラバラと出てくる。道着のままで帰る者もいれば、着替えを済ませて帰る者もいる。元気に走って帰る者、疲れ果てた様子で歩く者、実に様々だ。
そんな中、私服に着替えた二人がゆっくりと後から仲良く話をしながら門を出てきた。
その一人が冬樹だった。一緒にいるのは、幼なじみの『まさや』だ。
冬樹・夏樹と雅耶は、家が隣同士で本当に小さな頃からの友人だった。何より母親達の仲が良く、何かと双方の家を行き来する事も多かったのだ。空手教室も雅耶が始めるというので、一緒に通うことになったようなものだった。
「おわったなー。きょうはけっこうつかれたよなー」
道着が入ったバッグを片手に、大きく伸びをしながら雅耶が言った。
「うん。けっこうハードだったよね」
頭一つ分背の高い雅耶を少し見上げて冬樹は笑う。和気あいあいと、その日やった空手のおさらいなどをしながら、いつも通り家までの道のりを歩いていた。
その時。
雅耶の母親が、家の方から慌てて走ってくる姿が見えた。その様子は、子供心にも普通じゃないと分かるようなものだった。
「冬樹くんっ」
何故か冬樹の名を呼んで、血相を変えて走り寄ってくる母に。
「あれーっ?おかあさん?どーしたの?」
雅耶は、特に気にしてもいないのか、明るい能天気な声を上げた。だが、雅耶の母親は、息を切らしながら驚きの言葉を続けた。
「大変なのよっ。今、連絡があって…。夏樹ちゃんとご両親の乗った…車が…」
冬樹は、我が耳を疑った。
崖から海へ転落!?
「う…そ…」
(おとうさんたちが!?)
冬樹は、走り出していた。
「あッ待って!!冬樹くんっ!!」
雅耶の母の制止の声も耳には入らない。
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