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冬樹と夏樹
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「あ…長瀬…。いつの間に…」
そこには、ずっと待っていた長瀬が遅刻を悪びれる様子もなく笑顔で立っていた。小さく手を上げて「やぁ」なんて言っている。
「なーに見とれちゃってんの?雅耶ちゃんv『いつの間に』じゃないよっ」
「何だよ?見とれてるって…」
「違うの?あの親切な少年♪」
すっかり冷やかしモードな長瀬の態度に思わず脱力する。
「あのなー…そういう言い方やめろって…。感心して観てたんだろー」
こいつは、いつだってこういう軽いノリでからかってくるのだ。
長瀬は、にゃはは…と笑うと、
「わかった、わかった。でも、本当…イマドキ貴重だよな?」
二人して、先程の少年達の方に視線を流す。転んだ男の子の親が気付いて迎えに来たようで、その『親切な少年』に手を振って別れていくのが見えた。
(良かった。親御さん、ちゃんといたんだ…)
他人事ながらも、何となくホッとする。
「まぁ、それはさておき、良かった良かった」
おちゃらけた様子で、長瀬が続ける。
「何がだよ?」
「えー?泣いてるのが雅耶じゃなくて♪」
流石にその言葉にカチンと来た。
「あのな~ッ!」
「待ち合わせ場所に俺がいないんで、寂しがってんじゃないかなーってさ。泣き声聞こえたからいそいできたんだぞー♪…なんてねっ」
冗談にしたって、酷い言いぐさだ。
「お前さぁ、人を呼び出しといて待たせるのって、ホント失礼だぞ?」
あまりにも反省の気持ちがない長瀬に対して、説教を口にした矢先。
自分達の目の前を、先程の少年が通り過ぎて行ったのだが。
(あ…れ?)
ふと、何かが引っ掛かった。
「ごめん。悪かったと思ってるよォ。お詫びになんかおごるからさーっ」
まんまとオレの誘導に引っ掛かった長瀬に、
「よしッ商談成立なッ」
そう言って、俺はニヤリと笑った。両手を目の前で組んで、お願いのポーズで俺を拝んでいた長瀬は、「はめられた」…と、苦笑を浮かべている。
長瀬とふざけあいながらも、先程の少年に感じた違和感が何なのか気になって、自然とその姿を横目で追ってしまう。
あいつ…さっきの…。
何処かで見たことあるような?
少年は、この周辺にあまり詳しくないのか、時々立ち止まっては辺りを見回している。
でも、どこでだっけ…?
思い出せそうで、思い出せない。
「とりあえず行こうぜ」
これから向かう方向に指をさして歩き出す長瀬に、俺は
「おう」
と頷くと。
(まぁ…気のせいかな…?)
そうして、その場を後にした。
そこには、ずっと待っていた長瀬が遅刻を悪びれる様子もなく笑顔で立っていた。小さく手を上げて「やぁ」なんて言っている。
「なーに見とれちゃってんの?雅耶ちゃんv『いつの間に』じゃないよっ」
「何だよ?見とれてるって…」
「違うの?あの親切な少年♪」
すっかり冷やかしモードな長瀬の態度に思わず脱力する。
「あのなー…そういう言い方やめろって…。感心して観てたんだろー」
こいつは、いつだってこういう軽いノリでからかってくるのだ。
長瀬は、にゃはは…と笑うと、
「わかった、わかった。でも、本当…イマドキ貴重だよな?」
二人して、先程の少年達の方に視線を流す。転んだ男の子の親が気付いて迎えに来たようで、その『親切な少年』に手を振って別れていくのが見えた。
(良かった。親御さん、ちゃんといたんだ…)
他人事ながらも、何となくホッとする。
「まぁ、それはさておき、良かった良かった」
おちゃらけた様子で、長瀬が続ける。
「何がだよ?」
「えー?泣いてるのが雅耶じゃなくて♪」
流石にその言葉にカチンと来た。
「あのな~ッ!」
「待ち合わせ場所に俺がいないんで、寂しがってんじゃないかなーってさ。泣き声聞こえたからいそいできたんだぞー♪…なんてねっ」
冗談にしたって、酷い言いぐさだ。
「お前さぁ、人を呼び出しといて待たせるのって、ホント失礼だぞ?」
あまりにも反省の気持ちがない長瀬に対して、説教を口にした矢先。
自分達の目の前を、先程の少年が通り過ぎて行ったのだが。
(あ…れ?)
ふと、何かが引っ掛かった。
「ごめん。悪かったと思ってるよォ。お詫びになんかおごるからさーっ」
まんまとオレの誘導に引っ掛かった長瀬に、
「よしッ商談成立なッ」
そう言って、俺はニヤリと笑った。両手を目の前で組んで、お願いのポーズで俺を拝んでいた長瀬は、「はめられた」…と、苦笑を浮かべている。
長瀬とふざけあいながらも、先程の少年に感じた違和感が何なのか気になって、自然とその姿を横目で追ってしまう。
あいつ…さっきの…。
何処かで見たことあるような?
少年は、この周辺にあまり詳しくないのか、時々立ち止まっては辺りを見回している。
でも、どこでだっけ…?
思い出せそうで、思い出せない。
「とりあえず行こうぜ」
これから向かう方向に指をさして歩き出す長瀬に、俺は
「おう」
と頷くと。
(まぁ…気のせいかな…?)
そうして、その場を後にした。
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