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冬樹と夏樹
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「真智子のいとこの冬樹くんだよ。ほら…夏樹ちゃんと双子の…」
双子…と聞いて、初めてその人物が脳裏に浮かんだ。
「ああっ!あのそっくりな双子の…。前に一度だけ遊びに来たよね。『まちこおねぇちゃん』なんて言いながら、二人して私の後をずっとくっついて来たんだよね」
その可愛かった小さな兄妹の様子を思い出す。いとこでありながらも、歳も離れているせいかあまり行き来する機会が無かったのだが、以前…一度だけ家族でこの家に遊びに来たことがあった。でも、二人はあまりにもそっくりで、結局…どちらがどちらなのかまったく区別もつかないまま別れてしまったのだが。
父も、その時の様子を思い出していたのか、少し微笑みを浮かべて話をきいていたのだが、不意に口を引き結ぶと、今度は辛そうな顔になった。
「実はね、真智子…。その冬樹くんのお父さんとお母さん、それから双子の夏樹ちゃんが…」
「?」
「先日、交通事故に遭ってね…。亡くなってしまったんだ」
「え…?う…そ……」
思いもよらなかった言葉に。真智子は、驚きで一杯だった。
「ちいさな冬樹くん、独りぼっちじゃ…かわいそうだろう?」
聞けば、まだ彼は小学二年生だという。そんな小さな身で、家族を失ってしまった彼の気持ちは、到底自分には想像も出来ないものだ。
「だからね、冬樹くんは今日から…うちの子になるんだ。真智子もお姉ちゃんになれるよな?」
父も実の弟を亡くしたのだから、きっとショックに違いなかった。だから、自分も出来る限り協力してあげたい…そう思った。
そして、その日の夜。
冬樹は父に連れられて、うちへやって来た。
「真智子…。冬樹くんだ」
父の背後から、軽く背中を押され、前に出てきた少年は。しっかりと頭を下げると、
「よろしくおねがいします」
そう、挨拶をした。
(…えっ?これが、この前の冬樹くん?)
記憶にあった少年とは随分と印象が違っていることに驚きを隠せなかった。
見掛けは、半ズボンがよく似合っている可愛らしい男の子。体格は、小学二年生の割には少し小さめか、何より線が細い。冬樹と夏樹を見分けられなかった自分が言うのも何だが、女の子にも見える位だ。
けれど、その幼い容姿とは反対に、背筋はしっかりと伸びていて、何より表情に隙がない…真智子には、そう見えたのだ。
以前あった時は、こんなでは無かった。もっと、年相応の無邪気な子供だった筈だ。そして…。
何よりも、もっと泣いているものと思っていた。
突然、大切な家族を全て失い、こんな小さな身で独りぼっちになってしまったのだ。いくら親戚が自分を引き取ってくれると言っても、普通なら…普通の子供なら、その現実をそんなに簡単に割り切れる筈がない。
もしも、自分が冬樹と同じ立場だったなら、きっと耐えられない…そう思っていた。
双子…と聞いて、初めてその人物が脳裏に浮かんだ。
「ああっ!あのそっくりな双子の…。前に一度だけ遊びに来たよね。『まちこおねぇちゃん』なんて言いながら、二人して私の後をずっとくっついて来たんだよね」
その可愛かった小さな兄妹の様子を思い出す。いとこでありながらも、歳も離れているせいかあまり行き来する機会が無かったのだが、以前…一度だけ家族でこの家に遊びに来たことがあった。でも、二人はあまりにもそっくりで、結局…どちらがどちらなのかまったく区別もつかないまま別れてしまったのだが。
父も、その時の様子を思い出していたのか、少し微笑みを浮かべて話をきいていたのだが、不意に口を引き結ぶと、今度は辛そうな顔になった。
「実はね、真智子…。その冬樹くんのお父さんとお母さん、それから双子の夏樹ちゃんが…」
「?」
「先日、交通事故に遭ってね…。亡くなってしまったんだ」
「え…?う…そ……」
思いもよらなかった言葉に。真智子は、驚きで一杯だった。
「ちいさな冬樹くん、独りぼっちじゃ…かわいそうだろう?」
聞けば、まだ彼は小学二年生だという。そんな小さな身で、家族を失ってしまった彼の気持ちは、到底自分には想像も出来ないものだ。
「だからね、冬樹くんは今日から…うちの子になるんだ。真智子もお姉ちゃんになれるよな?」
父も実の弟を亡くしたのだから、きっとショックに違いなかった。だから、自分も出来る限り協力してあげたい…そう思った。
そして、その日の夜。
冬樹は父に連れられて、うちへやって来た。
「真智子…。冬樹くんだ」
父の背後から、軽く背中を押され、前に出てきた少年は。しっかりと頭を下げると、
「よろしくおねがいします」
そう、挨拶をした。
(…えっ?これが、この前の冬樹くん?)
記憶にあった少年とは随分と印象が違っていることに驚きを隠せなかった。
見掛けは、半ズボンがよく似合っている可愛らしい男の子。体格は、小学二年生の割には少し小さめか、何より線が細い。冬樹と夏樹を見分けられなかった自分が言うのも何だが、女の子にも見える位だ。
けれど、その幼い容姿とは反対に、背筋はしっかりと伸びていて、何より表情に隙がない…真智子には、そう見えたのだ。
以前あった時は、こんなでは無かった。もっと、年相応の無邪気な子供だった筈だ。そして…。
何よりも、もっと泣いているものと思っていた。
突然、大切な家族を全て失い、こんな小さな身で独りぼっちになってしまったのだ。いくら親戚が自分を引き取ってくれると言っても、普通なら…普通の子供なら、その現実をそんなに簡単に割り切れる筈がない。
もしも、自分が冬樹と同じ立場だったなら、きっと耐えられない…そう思っていた。
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